本質を見抜き、組織に徹する – akippa株式会社 取締役副社長 松井建吾氏

skippa

■略歴
大阪府出身。大学中退後いくつかの職を経た後に起業を志す。2010年、高校の先輩・金谷氏が代表を務めるギャラクシーエージェンシーに中途入社。営業として2年勤務した後、取締役に就任。駐車場と利用者のマッチングサービス「akippa」立ち上げにおける中心人物の一人。

子ども時代から社会との関わり方を考えていた

■まず松井さんのキャリアについてお伺いしたいと思います。これまでを振り返ってみて、印象に残っている出来事や、後の人生に影響を与えた経験などありましたらお聞かせください。

松井氏:めちゃくちゃ遡るとじつは私には2歳からの記憶があります。幼い頃のことを結構覚えていて、私が4歳の時に母が再婚しているのですが、周囲は子どもの私は理解していないだろうと思っていたようです。「父親が実父でないことは初めから知っていた」と確か10歳ぐらいの時に伝えると皆に驚かれました。今は良い関係となっていますが、18歳ぐらいまで継父との折り合いはよくなかったですね。価値観が合わないというか、生き方が違うと子供心に思っていました。私の養育にかかる費用を計算し、いつか全額返して縁を切ろうとさえ思ったぐらいです(笑)。

人の気持ちを考えたり適切な距離感の保ち方を意識し出したのはこのような経験からきているのかもしれません。あ、これポジティブな話です(笑)。

■学校生活はどうでしたか?

松井氏:これも当たり前をダイレクトに受け入れないというか一回自分で経験して判断するようになれたっていう話なんですけど、幼いなりに学校教育というものには不信感を持っていました。学年を重ねていくにつれ、「なぜ教師や他人の言葉をすべて受け入れなければいけないのか」という疑問を抱くようになってました。ていうか「小学校6年長すぎ!」てとにかく思ってました(笑)。決定的だったのが小学4年生の時の担任との対立ですね。クラスで些細なトラブルが起こった時、その先生は私の主張をまったく受け入れず、一方的に叱りつけました。当時は本当にがっかりでした。また全体的に偏差値を意識して優劣が決まっている点にも違和感を感じてました。そもそも偏差値ってなんだ?誰が作ったのかなって(笑)。
子供時代を総括すると、今の当たり前に満足せず「もっとこうなれば良いのに」という感覚の基盤が出来上がったので今の自分に直結しているかもしれないです。

■代表の金谷さんと学生の頃からお知り合いということですが?

松井氏:自分にとって唯一心のしれた先輩が、CEOの金谷です。彼とは高校の時に知り合いました。サッカー部の先輩・後輩の関係で、彼はキャプテンでエースストライカー、私はボランチです。彼の最大の魅力は、すべての人をフラットな視点で見ることができるところとリーダーシップです。キャプテン金谷を中心に「常に上を目指し、どんな相手でも勝利する」という意識をメンバー全員で共有し、本気で戦っていたと思います。物事に取り組むスタンスの価値観が似ていると思っていて一緒にいて楽しい存在です。

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やりたいことも夢もなく、ただ仕事をしていた。
やがて起業という目標を得た時、再び金谷と出会った。

■学生時代の金谷さんとの関係性は現在にも通じるように見えますね?

松井氏:ポジション的にはそうかもしれないですね(笑)
一方彼と私で共通するのは大衆性を理解しようとしているという部分です。サービスを創り上げていく上で消費者感覚が必要な場面があるのですが重要だと思っているポイントが比較的似ています。きっとお互いに泥臭い生き方をしてきたからこそ、色々な人と出会い経験を積んできたのでそういう感覚を持っているかもしれません。

■akippaへ転職されるまでのキャリアについてお聞かせください。

松井氏:高校卒業後、一応は大学に進学したのですが、思うところあって中退し、その後いくつかの仕事を経験しました。営業職を軸に活動していたのですが理想的な働き方を実現できる企業を見つけられずフラストレーションが溜まるばかりの日々でしたね。ないから自分でやるしかないなと考えていたそんな時、金谷が地元大阪で起業したことを知り、すぐに会いに行きました。じつは自分も起業したいと思い始めていたので、勉強も兼ねて見学に行ってみようと思いました。

久しぶりに再会して「思ったよりはちゃんとしてるな」というのが率直な感想でした。抜群のリーダーシップを持つ金谷ですが、意外に天然なところもある人でしたから(笑) 二人でいろいろ話をするうちにやりたいことができるかも、という気持ちが強くなり、最終的に一緒に働くことにしました。

■転職されてからはどんなことをされたのでしょうか?

松井氏:私がakippaの前身・ギャラクシーエージェンシーに入社したのが2010年4月。当時は携帯電話の販売代理店・自社求人サイトの運営・イベント業などがおもな事業で、私は営業を担当しました。執行役員となるまでの2年間、一人のプレイヤーとしてとにかく売ることに徹しました。社員2名・アルバイト2名の小さな所帯でしたので、自分が先頭に立って売るしかなかったとも言えますが。初任給は15万円。収入は激減しましたが、その頃から充実感は日々増しています。

■当時のモチベーションはどうでしたか?

松井氏:「何もできないなりに上を目指す」そんな感じでした。可能性が低くても全国で優勝するという夢を本気で追いかけた高校時代が重なってきて、私の根底にあるものはこれなんだなと思いました。

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何のために仕事をしているのか?
企業存続の危機を乗り越え第二創業期へ

■その後、会社は大きな転換期を迎えられるわけですが、どのような背景があったのでしょうか?

松井氏:幹部となり、まずは自分の代わりとなる優秀な営業プレイヤーが必要でした。そこで自分の人脈から営業を任せられそうな人材を2人スカウトしました。やはり営業会社の肝は人です。スカウトした人材は自分の期待通りの活躍をしてくれました。やがて足下の業績は安定していったのですが、同時に様々な問題点が浮かび上がってきました。まず第一に提供するサービスに対する顧客満足度が低いということ。次に外に向けてのアピールポイントがないということ。採用を担当していて、わが社には応募者の心に刺さるような「語るべきビジョン」がないことに気付いたのです。業績は安定していても中長期の戦略がなく、企業と人がwin-winの関係になっていないと。「私たちは何のために仕事をしているのか?」という自らの存在理由を考える機会ができました。

「この会社の目指すものは何か?」「そもそも何のために仕事しているのか?」を金谷に質問しました。「そう言われてみればないよね」とういう事で1,2週間考えて決まったのが、「世の中のインフラになる事業をやりたい。なくてはならぬものを創ろう」そう語ってくれました。それがakippaの原点です。当時家が偶然停電になり電気は使えないし携帯電話も充電できない。そんな状況の中ハッと思いついたビジョンです(笑)

■駐車場サービスの事業が立ち上がった経緯についてお聞かせください。

松井氏:理念に沿った独自サービスを立ち上げていくために、まず社員全員で「不便に感じているもの」を思いつくだけ挙げていきました。たくさんのアイデアの中に「駐車場の空き情報が知れたら便利」というのもがあり、一同「確かに!」ということになりました。いくつかの候補と併せて徹底的にリサーチを行い、何度も議論を重ね「駐車場のサービスはイケる」という結論に達しました。そうしてできたサービスが「akippa」です。

■立ち上げに際して、松井さんはどんな役割を担われたのですか?

松井氏:まずプロダクト開発チームを立ち上げました。他にCS部門も立ち上げましたし、マーケティングもやりましたね。基本的には立ち上げの部分を私がやって、ある程度カタチになったところで誰かに任せていく事を行いました。人と人とを上手く繋ぎ合わせいかに効率良くドライブさせるかを意識しました。

■新しい事業へのシフトを不安に思うメンバーもいたと思いますが、メンバーのモチベーションをどう維持されたのでしょうか?

松井氏:そのあたりは金谷がマネジメントしていました。モチベーションの部分では2014年12月に開催されたIVSのlaunch padで優勝したことが大きく影響したと思います。外部から評価されているという自信が得られ、何の実績もない企業が初めて世に認められたという、それまでに味わったことのない高揚感が沸き上がり、あらためて事業の方向性が間違っていなかったと確信しました。

■現在、松井さんは「組織と人」を中心に見られているということですが、具体的にはどのようなことをされているか教えてください。

松井氏:ざっくり言うと何においても「人」ベースで考える事を行ってます。サービスをスケールしようとすると目先の数値に追われたり事業ドリブンで意志決定される傾向があるので様々な会議でakippa組織としてどうなのか?メンバー目線ではどうなのか?という組織・人観点で最適かどうかを意識しています。
具体的には「akippa」がリリースされてからは採用にフルコミットしました。組織を固めていくのに必要な人材をどう確保するかがテーマでしたが、特別なことはしていません。関心を持ってくれている方に対して「ビジョン」と「何をしてもらいたいのか」を正面から語りました。結果優秀なメンバーが集まり日々試行錯誤しながらですが強いチームを作っているところです。

組織とは人の集合体です。人間関係の拗れやトラブルは、組織にとって余計なこと。問題があればあらゆる業務よりも最優先かつ最速で私が対応します。収拾がつくまで当事者と何時間も話すこともあるのですが、強い組織を作る上で重要なことはこれでもかというほど、やりきるようにしてます。

採用施策としては、新卒の定期採用を廃止し学歴不問の通年採用を決定しました。社内で活躍する人材を見た時に、年齢・学歴・経験などには意味がないことがわかったからです。当社にはSNSなどを通じていろんなアイデアが寄せられるのですが、ある中学生がとても面白いアイデアを送ってくれましてね。彼女をインターンに呼べないかと本気で考えているぐらいです(笑) 今後は人事制度の再設計をやります。正当かつ十分な対価が払われるよう人事評価制度を導入しましたが、まだ運用開始の段階。企業と人のwin-winの関係を構築するためには、まだまだやるべきことがたくさんあります。制度や風土を作るためにはその時々の状況に見合ったものが必要だと考えているので継続的に取り組んでいます。

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本質を見抜き、組織に徹した役割を演じる
それが副社長としての私

■松井さんが金谷さんに思い切った提言をされたこともakippa誕生の原点につながっていますよね。CEOに対して正面からビジョンを問うという思い切ったことができたのも、松井さんがCOOとして経営の一翼を担われていたからだと思います。松井さんが考える理想のCOO像のようなものはありますか?

松井氏:COOというものに限った理想像はありません。ポジション関係なく自責で判断し自らアクションを起こすことが重要です。浮ついた情報に惑わされることなくしっかり目利きすること。私には過去の自分に対する後悔はありません。今の自分が理想でい続けれるように生きています。そもそもCOOの定義は企業ごとに結構異なりますよね?(笑)
強いて言うなら、立ち振舞いでしょうか。決して個人的な考えを誇張することなく組織の最大化をベースに考え切ります。それが、私が心がけていることです。これまでお会いした経営者の方々の言葉を借りると、COOとは会社のエアコンであり、舵取り役であり、高度な雑用係だそうです。これに関してなんとなく分かります(笑)

■これからCOOを目指す方たちにアドバイスをいただけますでしょうか?

松井氏:COOを目指す人っていらっしゃるんですか?(笑) 私自身COOを目指したことはなくて、起業のための勉強としてここ来ました(笑)もし僕の経験が誰かの為になるなら直接お会いして対面でお話しさせていただきます(笑)

■最後に松井さんの今後のビジョンについてお聞かせください

松井氏:そうですね、会社としてまずマイルストーンを置いているのは時価総額1兆円企業になることです。あのgoogleは僅か約10年で世界を制しましたよね。それを破ることは難しいかもしれませんが、やるからには何事でもトップを目指すべきだと思っています。もっと目先の話しでいうと「駐車場=akippa」というマインドシェアの獲得は絶対ですね。個人的には、まず駐車料金を何とかしたい。やはり日本の駐車料金は高いですよ。これを下げたいと思っています。さらに言えば駐車場をもっとイケてるものにしたいですね。駐車場ってちょっと地味な印象持ってませんか?(笑)単純ににクルマを停めるだけのスペースではなく、駐車場自体が目的地となり人が集まるような特別な場所になってもいいと思ってます。一例ですがアメリカのスタジアムなんか行くと野球の試合前から駐車場でBBQしてて楽しそうです。野球観戦よりBBQに醍醐味感じてる人も多いと思うんですよ。

現在、続々と競合が参入してきて業界が盛り上がってきました。ここ数年で駐車場は間違いなく変わりますよ。というか大きく変えます(笑)ライフスタイルを少しでも充実させることができたら本望ですし、akippaいけてるなー!って思ってもらえたら嬉しいです。

COOキャリア
~最高執行責任者(Chief Executive Officer) への道のり~

本質を見抜き、組織に徹する
akippa株式会社 取締役副社長 松井建吾