「すべての答えは現場にあり。現場から会社を創る」株式会社アイスタイル  コーポレート本部 人事部長  土泉智一

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 就職活動をしている時から漠然とですが、「人に関わる仕事をしたい」と考えていました。学生時代はとにかく誰かと出かけたり、飲みに行ったり、スポーツをしたり、人と何かをしていることに充実感を感じ、ともすれば人の役に立ちたいと考えている学生でしたから、直接的に「モノをつくる、モノを売る」など「モノ」に関わるというということは全く想像できず、当時世界No1の人材会社であった外資系総合人材サービス会社に入社をすることに致しました。


新卒当時は、派遣サービスが急拡大している時期でしたから、派遣サービスをメインとする北関東・信越地区の新支店に同期の中で唯一、拠点網拡大のための前線隊として配属されました。とにかく、営業の仕方もままならぬまま、日々企業という企業にテレアポと飛び込み営業を繰り返し、受注獲得を目指すという毎日でした。仕事の基礎から、人材ビジネスの考え方に至るまで、顧客と派遣スタッフから叱咤激励されながら教わる新卒時代を過ごしたといえます。


4年目からは、北関東エリアに営業店を2店舗新設するに至った営業成果も認められ、本社に拠点を置く営業部に配属されました。地方とは違い、ビジネスの中心地での営業活動ですから、顧客のニーズも非常に広範で、難易度が高いものに変わりました。当時は、派遣サービス以外の「人」に関わるビジネスで経験の幅を広げたいと思っていたので、率先して訪問する企業の広範な人事課題を聞き、派遣サービス以上に広がりがある特殊案件などを獲得していました。


派遣営業や紹介営業は外部からのスタッフィング支援のみですので、いくら特殊案件を抱えるようになっても、人や会社組織そのものを育てるところには踏み込んで行けない、と転職も視野に考え始めたのもこの頃です。人事コンサルティング会社もしくは事業会社の人事を探していたのですが、やはりコンサルはしっくりこなかったですね。組織を成功に導く仕事ですが、どうしても組織の中の個人に対してこだわりをもてる仕事に思えませんでした。


年齢も30歳を過ぎていましたから、転職して、まず採用チームへ配属され、次に研修チームに配属され、など一つ一つ経験していくのでは遅いと思っていました。そんな折、経営と社員との距離感が近く、担当する人事業務の範囲も広く、当時85名程度の勢いある成長ベンチャーであったアイスタイルに出会いました。入社初日から人事評価査定会議で1日缶詰でしたし、2日目は新卒採用説明会で200名の学生の前で司会をしたりしました。それで3日目にやっと本社に出社ですw


その後、入社して半年後にアイメディアドライブが設立されたことに伴い、出向して人事業務立ち上げを任されました。そこはアイスタイルを含む3社のジョイントベンチャーとしてスタートしましたので、後にプロパー人事制度を設計したのですが、親会社2社からの出向者分と合わせ、3社の人事制度を同時に運用する貴重な経験もできました。制度設計時は、コンサルタントをいっさい使わずゼロから3ヶ月足らずで構築する事は大変でしたし、設立2ヶ月目には中途採用のプロパー採用を行い、その後自ら給与計算を、4ヶ月目には新卒採用を行うなど、自ら望んで飛び込んだ環境とはいえ、短期間で一連の人事業務を実践させてもらえたことは、今の私のベースになっていると思っています。


 

9992人事は企画力と変化に対応できる調整力
 当社は、2012年3月にマザーズ上場、同年11月に東証一部に市場変更しました。今後は当然会社としても、人事としても、マーケットから求められるものが変わってきます。


早速経営陣は一貫して「変える」をスローガンに、12年7月から先導に立ち、管掌領域を広げてグローバル戦略やグループ経営にも乗り出しています。東アジア・東南アジア進出や新規事業領域であるサロン事業進出、グループ基盤戦略となるプラットフォーム事業展開など、スピーディーに動き始めているプロジェクトも百件近くに上ります。


人事部もグループ人事のあり方、グローバル対応など、新たな事業戦略に伴う対応が出始め、積極的に対応領域を広げ始めています。会社を変えるパワーは並大抵の事ではないですが、今後の持続的な事業成長を支えるためにも、人事部も会社の変化にスピーディーに応えられる組織を目指さなければならないと実感しています。


「経営と現場を繋げて会社を変えていく」役割とでも言うんですかね。人事施策は結果が出るには長丁場になることが多い。だけど、経営も現場も待ってくれないわけです。だから双方との対話を繰り返しながら、こうしたら会社として変化することができるという仮説を打ち出し、速やかにストーリーを組み立てられる企画力と、施策を実施した後も、双方のニーズにマッチしなければ、スクラップ&ビルドしていくスピーディーな調整力とが必要になると思っています。


 

9991すべての答えは現場にあり。現場から会社を創る
 ある研修の企画を経営陣に提案したときのこと、「人事の考え方では良いかもしれないけど、人事はどれだけ現場を理解してるの?」まさに目からウロコでした。人事業務に没頭する毎日の中で、我々は本当に自社のことをどれだけ把握できていたのだろうか、研修を実施するということにばかり目が向いていて、本当に現場が必要としている研修になるだろうかという視点が欠けていました。


人事だけで議論していると人事としてひとりよがりなあるべき論を掲げるだけの施策に陥ってしまい、会社として本当に必要な施策にはならないと改めて気づかされました。


社内の人を交えて話すと、例えば新卒教育の場面で「合宿研修は現場の社員が参加することによって社内のつながりを醸成できることに意味がある」など、人事だけでは理想論になりがちな現実的な視点を広げてくれるヒントがでてきたりします。だからこそ部下には積極的に現場に足を運べと毎週、現場の事業部長クラスとのミーティングや社員とのインフォーマルな交流などをするように言っています。


採用や育成、人材活用のニーズは刻一刻と変わっていきますので、とにかく顔を突き合わせて現場と話をしてみないと、我々人事としては「生きた情報」に触れ、本質的な打ち手を打つことはできないと思っています。生きた情報をスピーディーに施策に生かしていく-これが社員と共に会社を創っていくことにつながると思っています。

 


 

土泉智一プロフィール
生年月日1973年12月28日
好きな食べ物坦々麺
好きな本創業者の伝記
好きな場所京都・鎌倉など
好きなドラマ不毛地帯

 

 

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