「ランサーズのエンジニアは、なぜ激モテるのか?」
ランサーズ株式会社
CTO 田邊 賢司

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Q: まず、田邊さんのご経歴についてお聞かせください。

 私はいろいろな仕事を渡り歩いていました。やがて20代も半ばに差しかかり、「このままではマズい」という思いが強くなってきた頃、世間はITバブルを迎えていました。そこで、どうせならこれから花形になる職業にチャレンジしてみようと思い、エンジニアをめざすことを決めました。しかし、未経験で働くのはなかなか難しそうなので、独学で国家資格を取得することにしたんです。するとその年の試験に運良く合格し、試しに受けてみたSI企業からも内定が出て、エンジニアとして働くことになりました。
 その会社は未経験のエンジニアに技術とビジネスマナーを叩き込み、紹介予定派遣で売り込むというビジネスモデルだったので、とにかく研修が厳しかったですね。初日に「お前らは負け組だ」と言われ、挨拶ができないと即日クビにされる……俗に言うブラック企業です(笑)しかし、徹底的に指導された分、特に社会人の基礎に関しては得るものが大きかったです。例えばビジネスの基本である「報・連・相」も、単に言葉だけを教えるのではなく、実際のテクニックについても細かく教えてくれました。新人エンジニアは「報告・連絡・相談」や挨拶ができなくて怒られることが多いですが、その会社のエンジニアは社会人の基礎がきちんと身についているので、現場でも高い評価を得ていたようです。


 転機が訪れたのは、そのSI企業に入社して1年ほど経った頃です。部長が退職することになり、自分が後任に就くことになりました。しかし、社会人1年目で部長を務めるのはさすがに無理ですから、部長3人体制で業務を手がけることになったんです。経営会議に出させていただいたり、面接をしたり、人事評価の制度を作ったりと、早くからマネジメントに触れることができたのは非常に貴重な経験だったと思います。その後転籍し、金融系の社内システム開発に携わりながら合計6年ほど経験を積みました。


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Q: その後、ランサーズ入社までにどのような道のりを歩まれたのですか?

 株式会社オウケイウェイヴ、株式会社インタースペース、株式会社トライフォートを経て現在に至ります。1社1社で成長する機会をいただいたので、それぞれに思い入れがありますね。
 オウケイウェイヴでは社内のFAQやヘルプデスクのシステムを担当し、新規事業として「OKetter」と「OKGuide」という2つのWebサービスをリリースしました。レスポンスの早さやユーザーと直接やり取りできる楽しさは、それまでの業務系のシステム開発では経験できない刺激でしたね。インタースペースではソーシャルゲームを手がけることになり、まず開発部を作るところから始めました。企業買収のデューデリに関わるという貴重な経験をしながらメジャータイトル2本をリリースし、一段落して今後のキャリアについて考えていたときに小俣(小俣 泰明/株式会社トライフォート代表取締役Co-Founder/CTO)に声をかけられたんです。そしてトライフォートの創業を手伝うことになり、マンションの1室でソーシャルゲームの自宅開発をするところからスタートしました。仕事が常に入ってくる状態だったので、当時は採用や組織のマネジメントに力を入れていましたね。

 

Q: ランサーズに入社されたきっかけを教えてください。

 「ビジョナリー・カンパニー」で働いてみたいという思いが背景にありました。ビジョンを社長自らが体現しようとしていて、1つの方向に向かって皆で進むような会社ですね。なおかつ、WebサービスをやっているIT企業を探していたときに、ランサーズを紹介していただいたんです。社会貢献を考えたサービス内容やビジョンにも共感しましたし、決定打になったのは「人」でした。社長の秋好(秋好 陽介、ランサーズ株式会社代表取締役)をはじめエンジニア以外の方々にもお会いして、このメンバーと一緒に働いてみたい、同じビジョンに立って歩んでみたいと感じ、ランサーズに入社することを決めたんです。

 

Q: 実際にランサーズで働いてみて、ビジョンは大きな役割を果たしていると感じますか?

 はい。ビジョンをとても大事にしていて、それが評価にも連動しています。ビジョンを体現するための行動指針として「SPIRIT 7」というものがあり、それが評価の中でかなり大きな割合を占めているんです。会社としてのメンター制度もありますが、実は開発部独自のメンター制度も存在します。週に1回メンターになっている人を集めて定例ミーティングを行い、コミュニケーションや育成、さらに「SPIRIT 7」の観点などに基づいた話をして、「SPIRIT7」の浸透やモチベーションアップ、育成に関する情報共有に役立てています。
そういった取り組みをすることで、ビジョンに向かって大きく歩を進めるような施策を打つ時の推進力アップにもなっていたりします。

 

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Q: 社内コミュニケーションや情報共有に力を入れていらっしゃるんですね。

 そうですね。社内コミュニケーションにおいては、当社では「HRT」という概念を大事にしています。Humility(謙虚)、Respect(尊敬)、Trust(信頼)の頭文字ですね。例えばソースコードのレビューをするときに、「Aは間違ってますね。一般的なBという方法を使うべきですよ。」と言われるのと「Aはxxxxというところがいいですね!一方、Bという方法だとxxxxが良いことを発見したのですが、どうでしょうか?検討してもらえると嬉しいです。」と言われるのでは、受け取る側の印象が違いますよね。また、情報共有はエンジニアにとって非常に大切なものだと考えています。かつて業務系の仕事をしていた頃、うまくいくプロジェクトとそうではないプロジェクトの違いは、情報共有がきちんとできているかどうかでした。Webサービス系では時間をかけてドキュメントを作り込めない分、効率良く情報共有するためのツールやサービスを導入する必要があります。コミュニケーションが充実すると情報共有も活性化しますから、当社ではChatOpsを意識して、「ChatWork」を基点にしたシステムを作っています。例えば「ChatWork」と「GitHub」を連携して、リポジトリに対してコミットをされたときや、レビュー依頼が「GitHub」上から飛んだときにチャットで通知したり、障害が起こった場合などにAWS(Amazon Web Services)上から「ChatWork」にAPIを通じて通知が飛ぶなどの工夫をしています。もちろんメールでも情報共有することはできますが、エンジニアは集中して仕事に取り組むことが多いですから、自分から情報を取りに行くよりも、情報を取りに行かなくても自動で通知されるシステムを作った方が効率的です。ツールを作って社内の生産効率を上げるのもエンジニアの大事な仕事だと思いますし、皆も積極的に取り組んでくれているので、今後も力を入れていきたいところです。
 また、情報共有のためには権限移譲も大切です。全部できるからといって自分1人でやってしまうと、いつまで経っても仕事が減らなかったり、自分がボトルネックになったり、下の人のスキルが上がらないという弊害が出てきます。下の人のスキルが未熟で任せられないというケースもあるかもしれませんが、きちんとマネジメントをすればリスクは軽減できると思います。ボトムアップの組織が理想なので、そこは意識するようにしていますね。

 

Q: マネジメントについて博学な印象を受けるのですが、本などは読まれているのですか?

 最近読んだのは『Team Geek – Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか』ですね。エンジニアのマネジメント系のハウが詰まった本はなかなかないので、興味深く読ませていただきました。エンジニアに特化しなくても、マネジメント全体を勉強することは大切だと思うので、良書があれば積極的に読むようにしています。

 

Q: では、今後の展望についてお聞かせください。

 Webサービス業界では、今後は機械学習やデータマイニングがホットトピックになると考えています。最近はツールやミドルウェアレベルでもいろいろなものが出てきていますよね。例えば機械学習をして自動でレコメンデーションするような技術がこれからは必要になってくると思うので、当社でもCloudSearchを入れて、検索機能を利用したレコメンド機能を作るなどのチャレンジをしています。「SPIRIT 7」に「チャレンジドリブン」という項目があるように、当社は新しい技術に取り組みやすい環境なので、今後も積極的にチャレンジしていきたいですね。
 あとはクラウドソーシングビジネスの活性化です。クラウドソーシング協会の活動に地方自治体や政府も関心を示していて、「一緒にやりましょう」と声をかけてくれるところもたくさんあります。今後は国内はもちろん海外進出も視野に入れて、機能の拡充を受け入れられるシステム基盤やインフラを築いていきたいです。海外進出の際にネックになるのは言語ですが、翻訳者を雇ったり、翻訳システムを提供するなど、実現方法はたくさんあるので越えられない壁ではないと思います。

 

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Q:エンジニアについての展望はいかがですか?

 「ランサーズのエンジニアってこうだよね」というイメージを作りたいです。私は、エンジニアに対してはいろいろなキャリアパスを許容するのが大事だと考えています。もちろんエンジニアにとって技術は重要なスキルですが、あくまでもビジネス的に言うと、技術はサービスを実現するための手段です。スピーディーでクオリティの高いサービスを実現するためには、技術に特化したスペシャリストも、フルスタック系のジェネラリストも内包できるような組織が必要だと思います。今後は個々のキャリアパスに対して、評価がきちんと連動するような制度を作っていきたいですね。

 

Q. 先ほどのお話から、エンジニアにも高いコミュニケーション能力が求められているんですよね。

 チームでプロジェクトを成功させるためにも、良いサービスを考えていくうえでも、エンジニアのコミュニケーション能力は非常に大切です。元気よく挨拶をしたり、相手の目をしっかり見て話したり、当然のことなのですが、日々のコミュニケーションを積極的に取ることをとても大事にしています。エンジニアはPCに向かって一人で黙々と仕事をすることも多いので。
 もともとはエンジニアだけで始まった会社ですが、今は営業や人事、広報の社員もどんどん増えています。彼らから、基本的なPCの操作について聞かれても、相手の理解度を把握した上で、丁寧に教えています。コミュニケーションの大切さを教育されているので、わからないで困っている人に歩み寄っていく姿勢が身についているんでしょうね。「ランサーズのエンジニアはモテる」というのが非エンジニアや女性社員からの評価です。
実際、弊社の人事担当は、これまで多くのIT企業を見てきているのですが、その中でもランサーズのエンジニアは既婚率がとても高いと話していました。これは余談ですが。

 

Q: 最後に、エンジニアとしてキャリアアップをめざす方へのメッセージをお願いいたします。

 最初に勤めたSI企業で教わったことなのですが、現場のキーマンを見つけてください。その人に教わったり、話をしたりすることが、自分のスキルアップに繋がります。キーマンといい関係を築くことで仕事が円滑になり、もしかしたら通常より早くキャリアアップできるかもしれません。
 SI企業時代は金融系のシステム開発が多く、人数も大規模だったこともあり、大体の現場に優秀なコンサルタントやエンジニアがいました。私自身、その人に教えてもらいながら知識を得たことでスキルアップできたという経験があります。また、オウケイウェイヴで初めてRailsを使うようになったときも、Railsに詳しい人に教えていただきながら成長することができましたし、自分が手がけることになった新規事業も手厚くフォローしてくれました。
 また、コミュニケーションも非常に大切です。やはりSI企業時代の話ですが、挨拶を全然しない現場でも毎日挨拶をするように心がけていたところ、「毎朝挨拶する人だよね」と評判がつき、仕事を貰いやすくなったということもありました。
 エンジニアだからといって、技術だけをやっていればいいわけではありません。技術のスペシャリストをめざす人はその限りではありませんが、技術以外のスキルもぜひ磨いてみてください。
 モテたいエンジニアの方は、是非、弊社に挑戦しに来て下さい!

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