「総額28億円、アスクルとの事業シナジーとは」 スターフェスティバル株式会社 取締役CFO 小池良平

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Q.ご経歴を教えていただけますか。

最初に入ったのはあずさ監査法人です。上場を目指すベンチャー企業の支援などを担当していました。岸田(スターフェスティバル株式会社・代表取締役社長)と会ったのもその頃で、何度か会って話をしているうちに、スターフェスティバルにジョインすることになりました。

 

Q.スターフェスティバルに決めた理由は?

もともと食にはとても関心があったんです。包丁を握れる会計士、と言ったら言い過ぎかも知れませんが、期間限定で屋台をやってみたこともあり、「食」に対する関心やこだわりがとても強かったんです。
弊社の「ごちクル」というお弁当ケータリングのデリバリーサービスをはじめて知った時に、外食産業の仕組みを変えていきたいという社会的な意義と、大きな可能性を感じました。ベンチャーなので、多くの課題や問題点もあるのですが、これらを解決するためにも積極的に支援したいと思い、外から見える範囲で色々とアドバイスしていたら、いつの間にかジョインしていた、という感じでしょうか(笑)

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Q.飲食店さんへの営業はどのようにされているのですか?

現在、店舗営業と法人営業で全国に40~50名のスタッフがいます。僕らの強みは「ネット+リアル」の特にリアルの部分です。ネット以外の場所でもお弁当を売り歩くことと、飲食店を開拓すること、この2つが強みだと思っているので、ここに人員も多く割いています。

飲食店は、お昼と夜の時間帯は業務効率が良く回っているのですが、それ以外の時間帯は未稼働の状態が多いんです。だから僕らは、家賃などの固定費を払い続けているこの未稼動の時間にお弁当を作ることで、新たな収益源の獲得を提案させて頂いています。今までお弁当を作ったことのない飲食店さんに対しても、お弁当販売のメリットなどを丁寧に説明し、その結果参入して頂いたケースも多くあります。これまで外食しかやっていなかった飲食店さんに、中食サービスという機能を新しく提供できたところに僕らの付加価値があると思っています。

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Q.アスクルとの業務資本提携が発表されましたね。

 弊社とアスクルとは、極めて近いビジネスモデルで事業をおこなっている会社同士である、というところから今回の業務・資本提携はスタートしています。アスクルは文房具、僕らが売ってい るのはお弁当なので、提供している商品やサービスの内容は全く違うのですが、ビジネスの構造はとても似ているんです。受注を頂いて、お客様先に配達して、決済をする、という構造です。

 また、「ごちクル」はB to Cのサービスだと思われることが多いのですが、実際は法人のお客様の利用が9割以上を占めています。そして、発注される方の多くは、秘書や総務など購買業務に携わる方々です。つまり、アスクルを利用されている方々と、「ごちクル」を利用して下さっている方々がほとんど同じです。お客様が同じであるということは、受注に関してだけでなく、物流の面でも見込めるシナジーは大きいと考えました。

 今回の提携は、資金調達ありきの話ではありませんでした。商材は異なるのですが、提携して事業を行う相乗効果は極めて高いであろう、というお話が発展して、今回の業務資本提携に至りました。また、あくまでも「業務を主体とする提携」であることにこだわり、「資本・業務提携」ではなく、あえて「業務・資本提携」という言い方をしています。

 

Q.今回のアスクルとの業務・資本提携によって、総額28億円という大規模な資金調達をされたわけですが、この規模はどういった基準で算出されたのでしょうか?

 現在の弊社の企業価値をベースにして出したのですが、今回は二段階の方式を使いました。「第三者割当増資」と「新株予約権付社債」という二つの方法なのですが、この二つを一緒にやるケースはそれほど多くないと思います。

 今回アスクルとは、互いの事業を拡大していこうという、非常に良いお話ができています。しかしながら、世間一般で見た場合、実際に提携が動き出してみると、上手くいかなかったというケースもままありますよね。

 そういったリスクを考慮して、提携したシナジーが実際に見えた時点で株式買い取りの権利を行使していいですよ、という条件をつけて、「新株予約権付社債」を発行しているというわけです。そして提携が上手く行ったら、「約束の株数はお渡しします」という二段構えになっているわけです。

 

Q.監査法人にいらっしゃった時に「新株予約券付社債」という方法を手掛けたことがあったんですか?

 いえ、今回が初めてです。そもそもベンチャー企業がこの方法を使うことはあまりないと思います。今回は自分でいろいろと研究をしながら、弊社とアスクルの双方にメリットがある落としどころを探っていきました。いざ動き出して上手くいかなかった場合、アスクルも弊社の株の相当数を保有していると、処分に困るような事態になるかもしれない。そういったことを想定しながら、先方の担当者の方といろいろなディスカッションを重ねて、今回のスキームを作っていったという感じですね。

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Q.アスクルさんも今回の事業提携に相当なコミットをするということが前提になっているわけですね。

 そうですね。今回の「新株予約権」の行使条件はお互いあえて厳しく設定しています。アスクル経由で「ごちクル」の商品の取扱高が、2015年の5月20日までに累計で3億円以上ないとアスクルは弊社の株式を取得できないことになっているんです。弊社の取締役会で決議すれば行使可能になるという条件も入ってはいるんですけど。

 

Q.今回の「二段構え」での提携は、CFOとしての小池さんの役割が大変重要だったと思うのですが、どのような点に一番苦労されましたか?

 新しい株式を発行すれば、自社の持ち株比率が下がるわけですよね。加えて、株主が増えるということは、新しい人が入ってくるという意味でもある。そこのバランスを調整するのはとても難しいですね。岸田は社長でもあり筆頭株主でもあるのですが、岸田からの要求はもちろん高いですし、アスクルも上場会社なので譲れない部分が当然あると思います。特に上場会社は利害関係者が非常に多いので、今回はそういった部分の調整が非常に大変でしたね。

 

Q.将来的にはIPOも想定していらっしゃるとは思うんですが、自社の持ち株比率を希薄化させないための手段について、資本政策の中で考えていらっしゃることはありますか?

 今回の提携で難しかったのは、「新株予約権」を行使した場合、アスクルの持ち株比率が20%超になることなんですね。20%を超えるとどうなるかと言うと、「持分法適用会社」と呼ばれるんですが、弊社がアスクルの関連会社になる可能性があるんです。

 上場している会社の最近の出資実績を見ると、20%以上出資しているケースはほとんどありません。ですから、20%超の出資をしていただいているということは、アスクルがいかに本気かということだと思うんです。本当に一緒になってやっていこうという意思が、その数字にあらわれています。

 確かに20%以上の株式を付与すれば、自社の持ち株比率は非常に希薄化します。ですが、将来的な上場や今後の資金調達方法も含めて、いろいろな選択肢を検討していますし、弊社にとって最善の方法というのはいくつかのパターンをイメージとして持っています。

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Q.最後に、CFOを目指すような若い方々へのメッセージなどはありますか。

 CFOになって良かったことでもいいですか?
 僕の上には社長しかいないので、ひとつひとつの仕事に対して相当なプレッシャーがあるんですが、それを着実にこなしていくことが、自分の成長につながっていると感じています。監査法人に勤務していた頃は、自分のチームや部署のハンドリングはしていても、上にはパートナー(共同経営者)もいますし、「あずさ監査法人」という大看板があるので、頭のどこかで、自分がやらなくても最終的には何とかなるんだと思っていた気がします。でも今は、僕がやらないといけないことが明確にありますし、そういう意味では、すごくやりがいがありますね。

 また、監査法人にいた頃からずっと、ベンチャー企業の支援をしたいと思っていたので、新しいサービスをどんどん立ち上げていって、社会の役に立つことに積極的に携わりたいと思っています。「ごちクル」は社会的に意義のあるサービスだと思っているし、今後も僕らスターフェスティバルが成長していくことによって、外食産業やデリバリー業界も変わっていく可能性がある。そういったことに携われるのは幸せなことだと思っています。

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