「2038年時価総額100兆円、未来を信じて目の前のPDCAを回す」
株式会社ZUU 執行役員兼COO 原田佑介

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■ 略歴

東京都出身。2008年に早稲田大学卒業後、新卒で経営コンサルティング会社に入社。その後2011年にDeNAに入社。SAPのソーシャルゲーム開発のコンサルティングに従事し、ゲーム開発や開発プロセスの改善、ビッグデータを用いた運用中ゲームの分析改善等を行い、複数の月間数億円規模のゲーム創出に貢献。グループのマネージャーも経験後、2014年に経営メンバーとしてZUUに参画。

■真逆の会社でキャリアを積んで

Q: ご経歴からお聞かせください。

 2008年に経営コンサルティング会社のベンチャーリンクに新卒で入社して、丸3年働きました。そもそも実家が事業経営をやっていたので、漠然と自分も経験を積んで30歳でやりたいなと思っていて、当時のリクルーターから、「年間300人以上の経営者に会えるよ!」と言われた。その経営者の成功失敗を一緒に経験することで、経営に関する大量の事例が溜まっていくのでは、そうすれば自分でやった時も必ずうまく行く、と思い入社を決めました。ただしっかりコンサルティングをするのに300社も会うはずがなく、入社後は新規開拓中心の営業をずっとやることになります(笑)

 ベンチャーリンクは中小企業向けのコンサルティングの会社で、1年目から新規で営業をして、中小企業の社長と関係を構築しながら経営課題を聞き、コンサルティングやフランチャイズ事業の提案を行い1件数百万〜1千万円とか、そうした受注を頂く仕事をしていました。2002年に牛角をやっていた頃は経常利益で100億ぐらい出ていて勢いがありましたが、それ以降は提案していたフランチャイズがあまりうまく行かず、またリーマン・ショックの煽りも受けて、僕が入社した2008年頃からはかなり厳しい市況で営業を行っていました。経営状況が悪化して営業成績に関係なく給料が何割もカットされて、優秀な社員が次々に辞めていき、新卒同期130人も2年目には半分以下になり、商品が売れないから3ヶ月に1回のペースで売る商品がコロコロ代わり、それでも結果を出さなければならない状況に身を置くというタフな経験をしましたね。そこで、組織に依存したら自分を守れないというリスク意識というか、独立心は芽生えたのかなと思います。

 そうして3年間営業をやっていたのですが、自分自身相手のビジネスの成長にコミットすることにそこまで本気になれないな、という思いが強くなり、実業をやっている会社に移りたいと思いました。インターネットに興味を持っていたこともあり当時売上が毎年倍々で伸びていたDeNAに2011年3月に入社しました。決め手は人で、面接官含めてお会いする人がとにかく優秀だった、ここでインターネットの経験を積んで、将来自分でやりたいなと思ったんです。

Q: DeNA社ではどういうお仕事をされていたのですか。

 協業ゲームのプロデューサー的な立ち位置でゲームのクオリティ管理から開発の進捗管理、プロモーションプランに至るまでをいきなり丸っと担当することから始まり、途中からmobage(当時モバゲータウン)プラットフォームに出されている外部のゲーム会社のゲームコンサルティングをずっとやって、最後その部署の責任者をやっていました。入社当時はブラウザソーシャルゲーム市場が圧倒的に伸びている状況で、どんなゲームを出しても月1000万円とか、億じゃないの?とかいう声があったり。それまで数十万円売上をたてるにも苦労していた自分としては、なんだこれはと(笑)

 ただ急激に伸びる市場は成熟も早く、2年後にはマーケットが成熟し、ガンホーのパズドラの大ヒットが徐々に明るみに出て、mobageに出しても失敗するゲームも増え、一気にブラウザ一筋で伸ばしていたコンテンツプロバイダーにとって難しい市場になりました。もう何が売れるかわからないと。それに対する僕のソリューションは、ゲームをとにかく沢山やって、ユーザーの感覚をとにかく理解することに集中し、その感覚を持ってゲームのコンサルティングをしていた。成熟期で何が売れるかという答えがない中では、ユーザーの感覚を理解するしかないわけで。他の市場だと当たり前の話だと思うのですが、それまでの伸びが異常だった分プレイヤーにその感覚がなかった。

 ブラウザ市場やアプリ市場に出ているゲームは新着〜既存までほぼやっていたので、当時は日本で一番ゲームをやっていたと思います(笑)そうするともうユーザーとシンクロ状態で、自分の感覚がほぼそのままスマホゲームで多数を占めるミドルユーザーの感覚と一致していたと思います。市況が厳しい中でも売れていたブラウザゲームやスマホアプリを徹底的に定性分析して、後で実際のKPIやもう少し深いデータマイニングして出した数字と照らしあわせて検証し、ナレッジを作って展開することをずっとやってましたね。かなり注力してコンサルティングしたゲームが当時の市況で月間数億円売り上げた時には、やっぱり間違ってなかったなと思いました。

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■自分がワクワクする世界へ

Q: ZUUへ参画した経緯を教えてください。

 ZUUの代表・冨田とは大学時代からの知り合いなんですよ。ソーシャルマーケティングで起業した彼と学生団体で代表をしていた私は共通の知人経由で出会いました。私も家が企業経営をしていていつかやりたいと思っていたし、冨田も起業家であったことから根底のメンタリティが似ていたんでしょうか、その後も大体1年に1回程度会って、将来独立する際のお互いの事業プランを話したりしていましたね。そうこうしながら丁度1年前の2013年10月、ZUUが今のオフィスに移転したてでオフィス移転パーティーに招待されたのですが、そこで「一緒に世界を目指さないか?」と声をかけてもらいました。今、私たちが変えようとしているのは、金融リテール業界です。日本では、一般の顧客が金融商品を購入するリテール市場で20兆円以上の市場があると言われています。金融商品を買ったエンド顧客は当然、買った金融商品によって儲かり自分の資産が増えていく、また自分の資産が守られることが重要です。けれども、いわゆる証券会社の対面営業は手数料商売なので、手数料が高い商品や、あるいは売りやすい商品が優先され、結果顧客は儲からないといった実態になっている。なぜ儲からない商品を掴まされるかといえば、売り手と買い手の間に圧倒的な金融リテラシーの格差、情報の非対称性が存在するからです。それを変えたいという冨田のビジョンに、私はビジネスとしてやっていくスケーラビリティと意義を感じました。大げさな話、自分が変えた後の世界にワクワクしたんです。

Q: 「時価総額100兆円の会社を作る」のは、壮大な目標ですね。

 端から見たら無謀な目標に見えるかもしれませんが、私たちは本気で「2038年に100兆で時価総額ナンバー1の会社」を目指しています。既にお話した今資産運用を行っている場面での非対称性を解消すると共に、資産運用を始める人を圧倒的に増やしたいと考えています。日本では、資産運用をやってる人自体が世界で見ると相対的に少ない。それは、現状ではやり方がすごく難しい、博打っぽいリスク満点なもので、一部の専業プロトレーダーしか出来ないものという固定概念があるんです。だったら定期預金でいいじゃんみたいな。ただ定期預金の金利なんてあってないようなものだし、これから国を挙げてインフレを起こしていこうとしているじゃないですか、現金を持っていたらどんどん資産が目減りするわけですし、資産運用しないこと自体がそもそもリスクなんです。そのこと自体、ここ20年のデフレで、かつ資産運用に対する間違った解釈が先行していてピンと来ない方が多い。本質的な資産運用や、資産管理の価値をちゃんと伝えたいんです。口座数で考えると資産運用をしている方々は約2000万人ぐらいいますが、その多くは65歳以上の層で、要するに既存の金融機関がターゲットにしていて営業した結果そうなっている。認識と仕組みを変えることによって、どんどん資産運用へ踏み出していく人を増やしたいと考えています。

Q: CEO、COOの役割分担を教えてください。

 元々、CEOの富田は野村証券でトップ営業を張っていて、彼の問題意識が今の事業で具現化されていいるので、大枠のビジネスの種をベースにビジネスモデルの大枠を作り、社外の著名なアドバイザーや事業提携といった大きなアライアンスをやっています。それに対して私は、主に冨田が作るビジネスモデルを元にプロダクトの設計、開発管理等をしています。もう一つは組織の仕組み作りや、人材採用です。今最速でビジネスを回していくためにはどんな組織形態であるべきで、どこに誰をアサインするのか、同時に組織課題を解消する人材を採用の打ち手に落として人を引っ張ってくるところまでをやっています。

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Q: その分担は、どのようにして決まったのですか。

 冨田は人を凄く良く見ています。それで、私がZUUにジョインしてからすぐにその強みを発見し、逆に自分が得意ではない領域と判断して自然とそういう分担になりました。仕組みやルール、定義作りといった領域を、私が補完するイメージですね。冨田は営業力があるので、すごくたくさん事業の種を作ってきてくれるんですが、私たちが達成したいビジネスモデル自体に対してインパクトが出るのか、議論を重ねながら形にしています。

Q: CEOが事業案を作ってCOOが指摘するということでしょうか。

 以前はそういうところがありましたが、最近は逆転してます。私はこれから作るプロダクトの設計をしている状況で、設計したプロダクトを冨田に説明すると冨田から指摘や否定的な意見が入ります。それを繰り返しやっていくことで最善のプロダクトにしていっています。冨田を説得できなければ、株主も説得できないし、その先のユーザーも使わないですからね。生み出す側はどうしても良い方に見がちですので、役割は入れ替わっていいと思っています。

Q: 今は、プロダクトに関する権限は原田さんがお持ちでしょうか。

私とCTOの後藤が持っています。ただ、冨田には、圧倒的な金融知識がありますし、私たちのターゲットユーザーは元々冨田がリテール営業で関わった人たちなので、適宜相談しながら進めています。弊社のコアコンテンツである「ZUU online」というメディアは月間200万PV(2014年10月インタビュー時)で、四半期ごとに倍で成長しています。冨田や元々リテールの営業をやっていたメンバーを含めた編集部で、リテールのお客さんの気持ちになって企画して、ライティングしています。記事を通じて、資産運用の重要性や、どういった視点で経済ニュースを見るかを伝えています。普段、「最近この株こうやって上がりましたね」「あのニュースでこう上がりますよね」みたいな話はリテールの営業マンがお客さんに対して日々、繰り返し行っています。それを理解できるレベルに噛み砕いて、2,000字程度の文字にしたのが「ZUU online」の記事です。これまでは配信本数を意識していましたが、ヤフーさん含めて集客ルートができてきたので、これからは記事のクオリティをどんどん上げていきたいと考えています。

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■未来の可能性を信じてPDCAを回す

Q: COOになりたい人へメッセージをお願いします。

 例えば今、時価総額60兆ぐらい(2014年10月インタビュー時)でナンバー1のAppleやGoogle、FacebookのCOOと比較して、私がそのCOO達と同じ器があるかと問われたら、当然今はありません。どうしたらそのレベルになれるのかも、もちろん考えていますが具体的には見えていません。ただ、今自分が解決しなければいけない自分の課題はわかっています。それを、PDCAを高速で回しながら潰していくしかない。そうしたら新たな課題が見えてくるし、それを繰り返して行ったら見えるんじゃないかと思ってます。何が言いたいかというと、最初から出来る/出来ないなんて正確にジャッジなんて出来ないと思ってます。自分のレベルが上がっていけば、見える世界は常に変わっていく、よく成長すると可能性が広がると言いますが、裏を返すと今可能性として見えている世界なんてたかがしれていると。だから未来の自分の可能性まで今から否定してはいけないんじゃないかって思うんです。精神論になっちゃいますが、やりたいことに対する、欲求の大きさや執着の度合がすべてを決めると考えています。だからそれが大きければ、やってみることが重要なんではないかと。

Q: 原田さんが執着や向上心を強くしたのはいつですか。

 今のZUUを成功させたい気持ちを執着とすると、1社目と2社目の、真逆の経営環境を経験したのが大きいと思います。1社目は会社が傾いていて、そうするとお客さんも従業員も経営メンバーそしてその家族も、全部が不幸になっていた。反対にDeNAのプラットフォームにゲームを出した会社がすごく成長できて、その結果雇用ができて、関わる人たちがどんどん幸せになっていきました。やるなら、できる限り多くの人たちに対してインパクトを残して、必ず高い収益を上げられる会社にしたいと思っています。私たちの企業に関わって、頑張って貢献してくれた、あるいは、何か一緒にやる中ですごいシナジーが生めたら、どんどん還元していくサイクルができればいいと思っています。企業としてみんなが幸せになるような環境を作りたいですね。

 

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