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 営業利益・昨対比152%   当期純利益・昨対比210%
ユーザーのあらゆる「How much」に応えたいと価格比較・相場検索サイトを運営し、増収増益を続ける株式会社オークファン。 2013年には東証マザーズに上場。「ビッグデータ時代、オムニチャネル時代がついに来た」と語る武永氏。 ユーザ課金による安定した収益と、これまで蓄積された膨大な販売データを武器にさらなる飛躍を狙う。


 

Q: 学生の頃からビジネスをされていたとのことですが、創業したいとか社長になりたいという思いをもともと持っていらっしゃったんですか。

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 いや、全くなかったです。その時その時で自分が打ち込めるベターな選択肢を心掛けたら今になった、というような感じです。ですから、これまで特に社長になりたいなどとは思ったことはなくて、むしろ今でも社長でいることが不思議な感じですから(笑)。


 Q: 社長業に向いてなくても、社長として仕事が出来るんですか。

  経営はチームプレーで、社長も役割、機能の1つなので、全然問題ないです。会社の成長というのは、メンバーがいかに自分の役割を全う出来るかですよね。上場企業の社長の中でも、役割としてうまくやっているけど、自分の本当の性格や適性が必ずしも「社長タイプ」でない人も少なからずいると思います。


Q: 適性は別として、社長には個性的な人が多いですよね。

  そうですね。創業社長には特にその傾向が強い気がします。例えば各種のスキルを正6角形や8角形のグラフで表したときに、1や2の部分も多いけれど、自分の強いところは完全にパラメータを振り切っちゃっているような人が多いですね。逆に、大手企業のいわゆるプロ経営者というか、組織の中で出世した人はバランスが取れているかな、と。大企業で、何万人もの中からのし上がる人というのは、それはもう平均的に能力が高く、バランスが取れてないと社長にはなれません。僕のような人は、社内政治で一発で弾かれてしまうでしょうね(笑)。

 そして、日本では社長像としてよく意識されるなのは、大手企業のプロ経営者だと思います。もともと創業者なんてぶっ飛んでいる人が多いのに、創業者から大企業の経営者になろうとすると、辛くなる場合もあります。リスクを取って新しいものを次々生み出すことと、1000人、10000人単位の組織マネジメントを両立できる人ばかりではない。アメリカだったら、創業者とは別にプロの経営者を雇うことも割り切る傾向がありますね。 例えば、Googleはラリー・ペイジとサーゲイ・ブリン(Google社・創業者)はエリック・シュミット(Google社・元CEO)を連れて来て偉大な会社になりました。eBayは、95年くらいにオークションサイトの原型を作ったオミダイアというすごくユニークな人が創業した会社です。メグ・ホイットマンという敏腕コンサルタントを迎え入れて、いまはや世界的屈指のEコマースの企業になりました。


Q: 創業者と社長は全く別物の側面もあるんですね。

  そうですね。創業者の場合は、スキルというよりも、大きな志、人生を賭けられる夢が重要だと思います。

 面白い話があります。色んな企業の成長率を調べたある機関投資家のリサーチによると、10年単位で見た場合、創業者がいる会社は成長率が全然違うというのです。プロ経営者というのは、スキルが高くバランス感覚に優れており、マネジメントもうまい。合議制を重視するケースも多いですよね。そう考えると、そちらの方が伸びる気がします。一方、創業者は会社と自分の人生がリンクしているんで、ある意味クレイジーなんです。1回誰かに社長を任せても、しばらくしたら「俺が戻る」みたいな話になったりしますよね。ユニクロの事例は有名ですが、スターバックスも、ハワード・シュルツ(スターバックス社・創業者)が戻りました。もちろん、かつてのAppleのように、会社から追われるケースもありますが。。 

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  Q: リスクを取って攻めることが出来るからですか。

 それは大きな要因だと思います。あと、創業者はとにかく意思決定が早い。朝礼暮改は当たり前。休みの日も常に24時間会社の事を考えていて、アイディアもどんどん先行する。周囲からすると理解できない事を言ったりします(笑)。本人の中ではきちんと繋がっているし、盛り上がっているのですが、他の経営メンバーは「また新規事業の話か」「この前と言っていることがまるで違う」とヒヤヒヤする事も。うちも良くありますね。


Q: 武永さんもいわゆる創業系の社長ですが、経営チームを作る時のポイントは何かありますか。

  基本的に僕は何も出来ない人間なので、経営メンバー、社員を含め皆で強みを生かしながらチームプレーを心掛けています。例えば、マーケティングに強い人、営業が得意な人、開発が好きでずっとやってきた人、財務は完璧にこなせる人、など。十人十色の人たちが集まって高いパフォーマンスを全体で出せるのが良い組織だと思います。


Q: では、武永さんはいつも何をされてらっしゃるんですか?

  自分にしかできないのは、ビジョンを絶えず反芻し、会社の方向性を決める。つまり決断と責任です。それ以外には、採用とメンバーの育成、事業の新規投資です。

 他のメンバーでもできるところはどんどん任せていきたいし、まさにいま自分自身もその途上です。ただ、社長としての役割を考えた場合に自分にしかできないことがあります。多くの場合は、緊急ではないが優先順位が高いことなので、どこまで集中して時間を割けるかは意識しています。

 新規投資は、日々情報収集する中での、目利きが重要だと思います。


Q: 武永さんのその「目利き」の力はどこで養われたんですか。

  もともと子供の頃からそういうのは大好きで、中学生の頃は友達からゲームソフトの委託販売を受け、お店に高く売ったりして稼いでいました。少しでも高く売りたいので、街中のゲームショップを回って、買い取り相場表みたいなのをもらってきたんです。当時はスーファミとかPCエンジンのゲームソフトだったんですが、「うわ、このソフトA店で買ったら2000円なのに、B店で売ったら3000円だ」というようなのがあったりして。そのうち、店舗間でのアービトラージ(鞘取り)をしていました。その体験が今も僕に生きているんです。

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Q: オークション、いわゆるCtoCのどこに将来性や魅力を感じたのですか。

  人がモノを買うにも売るにも情報が必要だからです。不動産や車は比較的分かりやすい。例えば、この車はデザインが格好いいなと思っても、次に売った時にいくらになるかわからなければ怖くて買えないですよね。だからフェラーリやベンツのようにみんなに人気がある車を選びたいと思う人が多いし、実際に中古の価格も落ちにくい。不動産に至っては、投資を兼ねて購入し、値上がりする可能性すらあります。

 他の一般消費財も実は一緒。何をいくらで売ったり買ったりすればいいかという、How muchのニーズは常にあります。オークファンは、ここに応えられるメディアになれるんじゃないか、とサイトに出会った2001年頃から思っていました。

 当時からカカクコムは既にあって、BtoCというかショッピングの分野ではNo.1でした。リアル店舗とネットの比較もできるし、口コミも充実している。家電や携帯を買い替える時はよく使っていました。一方、CtoC、いわゆる個人間取引は、チケットや芸能人グッズなどマニアックな商品が多い。中古品、個人出品など、ジャンルや種類は千差万別です。この面では、データを持っているオークファンこそが、売り手と買い手の双方にフェアな価値を提供できます。

 オークファンにはそういう可能性を感じたので、これはイケると思いました。残念なのは、当初想定していた成長スピードよりも遅いので、これは私の経営能力の責任ですが。


Q: 今、国内では競合となる会社はないんですね。

  今のところ、国内にはありません。海外に同じような会社は、知る限りではカナダに1社あります。

 よく、競合がいないことに対して「どうしてなのか」と聞かれます。このビジネスは、実はあまり儲からないんです。正確に言うと、儲かるまでの先行投資の期間が非常に長いんです。例えば、同じ比較サイトでも比較的儲かりやすく、プレイヤーがひしめいているジャンルがあります。ローン、キャッシング、FXなどの金融分野。あとはコンタクトレンズ、レーシックなどの美容系。Wi-Fiも多いですね。契約単価が高ければ、マージンも大きいので成り立ちます。

 一方、EC系は元々アフィリエイト報酬の単価は低い。かといって自社でECをやるとオペレーションに埋没し、在庫リスクも抱えてしまう。ここがまず難しいと思います。

 さらに、データに関しては、インフラに膨大なコストをかけたくさんため込んだところで、まずそこからどういう収益を生むかが見えない。そこまでして他のベンチャーや他の大手企業がやりたいかというと、割のいい事業ではないと思います。

 当社の場合は、国内で唯一の「売り手向けサイト」と言われる事もあり、売り手の方に課金サービスを提供することにより、何とか黒字化した経緯があります。

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Q: オークファンさんは上場まで増収増益ですが、勝因はどこにあると思われていますか。

  一番大きいのは、先ほどもお話したように、課金(有料会員)という安定的な手段に恵まれたことです。大手企業向けのマーケティング支援はこれからなので、過去の収益にはそれほど貢献してないです。でも個人事業主や副業者、いわゆるSmall B向けの事業モデルという意味では非常にありがたかったな、と思います。

 社内的には、最近になって人事面に手を入れました。会社を立ち上げてから2、3年ほどは、まったく整備されていなかったので、かなり苦労しました。最近は注力している事もあり、かなり良くなってきたところです。この業界は優秀な人に活躍してもらう事がとても重要なので、いい人はどんどん採用し社内で活躍できる環境を整えていきます。

 思い返すと人事、組織面が全然ダメだった中でも、課金サービスは一定して伸び続けていました。事業モデルが仕組みとしてきちんと回っていたので、業績が人の面をカバーできた面もあるかも知れません。「成長は全てを癒す」という言葉がありますが、これまではまさにそうだったと思います。

 これからは大手企業向けの法人サービスを伸ばしていく予定です。ビッグデータと言われて久しいですが、色々なオファーを幸いいただいています。来年以降はサービスのラインナップも充実させていくので、楽しみなところです。


Q: 最後に、今後の事業展開をしていく上で、どんな人に門戸を叩いて欲しいですか。

  当社に合う気質としては、ズバリ4つです。「素直さ」「好奇心」「柔軟性」「タフさ」です。他にない独自の事業を築き上げていく会社なので、競合を参考にしたり追い付け追い越せではない。初めてだらけかもしれません。でも、この4つの気質が備わっていれば、どんなチャレンジも楽しく、やりがいと経験を得られます。「面白い事をやりたい!」そんな人に来て欲しいですね。

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