競合のない新たなマーケットを開拓した

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営業利益・昨対比150%

自社会員に対して売れる商材を探して売る、といった通常のECサイトとは異なる。良い商材を持つ企業に対して、徹底したマーケティング支援をすることで売上を伸ばし、事業を拡大してきた。「橋渡し」をキーワードに、新マーケットへ挑戦し続ける社長のビジョンとは?

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Q:ご経歴と起業から上場されるまでの経緯も含めてお聞かせください。

 社会人になって、まず日本信販(現・三菱UFJニコス)というカード会社に入社し、債券回収と新規事業の立ち上げを行いました。社内起業で個人輸入代行の事業を起こした後、三菱UFJで通販事業部をスタートしました。それが最初にかかわった通販事業ですね。30歳前に会社を辞め、ハーバードビジネススクールで、ファイナンス、IT、マーケティングを勉強しました。帰国してから、取締役としてソフトブレーンという会社に参加し、そこが上場した後に、現在の会社を立ち上げました。

 

 

Q:ジェネレーションパスでは、それまでと違う事業から始めましたね。

 ええ。アルバムのアーカイブ化です。ソフトブレーン時代、自分の子どもに、父や祖父と写っている写真を残そうと考えたんです。けれども、私は次男で、残念ながら一人の写真がありません。写真は、最初、長男が一人で写っていて、長男が大きくなる過程で私が加わるものばかり。昔は、写真がアルバムに貼り付けてあったためにはがせず、そのままでは次の世代である私の子どもたちに伝えることができない。そこでアーカイブ化を思い立ちました。アルバムというアナログのデータをデジタル化してしまえば、その後CD、DVD、ブルーレイなど、どんなメディアになろうが変換することは簡単です。そこで、データ変換サービスをやろうと思って興したのが現在のジェネレーションパスという会社です。

 

Q:今ではEC(Electronic Commerce)マーケティングが事業の中心になっていますね。

 はい。ECの事業は、先ほどのアーカイブ化の仕事の過程で生まれたものです。あるとき、ベッドを作って大手家具メーカーに納品している木工所の社長から、お父様の思い出のアルバムを作りたい、という依頼がありました。アーカイブ作業の際、社長からインターネットで販売したいという要望を受け、当社でのECマーケティング事業がスタートしました。それが5~6年前で、スタート時にはまったく売れませんでした。お店をいろいろ回ってわかったのは、一点物の商材では売れないということです。例えばベッドは1種類だけより20種類あるほうがいいし、布団や枕もあると寝具店になるから人が来る。そんなふうに商材を集めたら、少しずつ売り上げが上がってきたんです。

 もともと人の思い出の橋渡し役をやろうと思って興した会社ですから、良質な商材を作る会社と、それを求めるお客さまへの橋渡しは、会社の基本理念にも合います。そこで事業をスタートしました。

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Q:「橋渡し」が一つキーワードだったんですね。

 そうですね。ただ、橋渡しはどの会社にもあるんです。例えば人材派遣の会社であれば人材を渡すし、商社であれば海外からよい商材の情報を持ってきて国内の企業に渡す。物作りもそう。ビジネスとして続けるためのサポートをする会社が絶対に必要だと思いました。そこで我々は、そのメーカーの商品を、どうやったら売れるかを徹底的に考える会社が一番いいだろうと。通常、データ分析やマーケットリサーチでお金をいただきますが、私どもは、その商材を世の中に出して売れたらいただくことにしています。

 現在、取引先企業は数百社あり、国内外の30種以上のモールに出店しております。商材としては100万点近くになり、お客様は複数店舗でお買い物する必要がなく、当店だけで欲しいものをご購入頂けます。

 

Q:基本はドロップシッピングということでしょうか。

 ちょっと違います。ドロップシッピングは卸問屋で、販売までは行いません。マーケティング本来の力を発揮するのは、自社で販売まで行うことであると考えております。    

 MD(Merchandiser)に、商社の機能が加わった形です。EC業界はいくつかすみ分けがありまして、通常のECサイトやEC会社は、自社会員を増加させて、会員のためにいい商材、売れる商材を探すマーケットイン型のEC会社が多い。我々は、いい商材を持っている企業の商品をいかに販売するかのプロダクトアウト型のマーケティング会社なんです。簡単にいうと、インターネット上で売れる仕組みを作る会社であり、メーカーにとってはインターネット販売の相談役です。

 

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■競合のない新しいマーケットで

 

Q:前期経常利益が150%となった要因を教えてください。

 まず、専門家をあまり入れなかったのが大きいですね。自動的にある程度の分析ができるシステムを開発したことにより、様々なマーケティングデータを獲得することができる環境を構築できたことが大きいと考えております。

 

Q:アルゴリズムを駆使して、ということではないのでしょうか。

 アルゴリズムは多分に駆使しています。非常に需要な数値計算です。ただ、それは全員が知る必要はありません。例えば、スマホはみんな使えるけど、その構造を知ってる人はほとんどいません。スマホを使えればいいわけで、構造までは知る必要がないと思っています。

 

Q:ほかにも要因はありますか。

 うちみたいな会社がなかったことです。EC市場は、2008年から2013年で大体2倍程度の成長率です。そのような中、他社の商品を本気で販売し、それも成功報酬で売る会社なんてないんです。仕入先の開拓と仕組み作りは意外と簡単にできないからこそ、新規参入は簡単ではないと考えています。販売代行や、少数商材を扱う会社はあるかもしれませんが、多種多量な商材扱えるのは、今のところほぼないと思いますね。あんまり競合がいなくて、新しいマーケットにトライしているから、ということになりますね。

 

Q:今後についてはいかがですか。

 あと5年10年は市場は110〜150%ぐらいに成長すると考えています。人口動態としては少子化が進んでも、今後誕生する世代は100%がECのユーザーになります。10年15年ぐらいは間違いなく伸びていくと思っています。

 

Q:御社の事業展開についてお聞かせください。

 EC業商材が少ない、良質な商材を販売しているが集客できない。そのようなお悩みを抱えるEC事業者向けに、当社で取り扱っている商材を卸し、商品数を増やして頂くことや、集客アップのノウハウを提供するなどのECサポートを行っていく予定です。

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■本気で3日3月3年やれ。

Q:では、ご自身のビジョンをお聞かせください。

 やっぱり仕事を本気でやることだと思っています。本気でやれば、きっとなんらかの成果が生まれるし、周りが助けてくれるんです。また基本的には、ジェネレーションパスという名前である以上、橋渡しをすることが大事だと思っています。今、インターネットのマーケットは30代が主です。われわれのちょうど今の社員たちの年齢層なんですよ。彼らが5年して40歳になったら、やっぱり40歳のマーケットもできているし、マーケットも一緒に育つんです。やっぱり同じ世代のマーケットは同じ世代でやるべきだろうなというふうに思います。

 

Q:経営者を目指す方にメッセージをお願いします。

 会社員であろうが、経営者であろうが、本気でやれば面白いと思うんです。ビジネスは、同じ土俵で、男性も女性も年齢も関係なくやれる唯一の場です。今、目の前の仕事を一生懸命できない人は何もできないので駄目ですね。ただ一生懸命やった結果、自分に合わないことはある。

 私は、3日3月3年ってよく言うんです。3日間はとにかく真剣に、その後は3か月間必死でやれと。3か月して振り返ってみて、これは向いてないなと思ったら辞める。でも、3か月やった結果、これやれるなと思ったら、3年やらないと身になりません。どんな仕事にしろ、ニーズを見付けて、それが当たるかどうかはやってみないと分からない。3日3月3年真剣にやってみて、当たればやればいいし、当たらなかったらもう次っていうぐらいの気持ちが必要です。合わないなと思ったり、人間関係で疲れるなとかいうこともあるかもしれない。それは合わないんです。真剣になれないものを続けることはありません。

 

Q:真剣になっていない若者はそういうものに出会えてないということでしょうか。

 仕事だと考えるからおかしなことになりますが、みんな真剣になったことはあると思うんですよ。例えば、サッカーに真剣になったことがある人はいると思うんです。レギュラーになれなかったり、試合に勝てなかったり、いろいろあるかもしれない。ただ、その一生懸命やったということは、いい思い出じゃないですか。いい思い出になるのは、やった感があるからです。人生でやった感がないことほどつらいものはありません。目の前にあることを真剣にやって、その上で考えるということが必要ですね。

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