『ファイナンスこそが最強の意思決定術である』―活躍できる人とできない人の差はファイナンス

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この度、エグゼクティブキャリア総研では、9月16日に発売を控えている『ファイナンスこそが最強の意思決定術である(正田圭著 / CCCメディアハウス)』の一部内容を発売に先立ち当サイトにて独占配信をいたします。

著者であるTIGALA株式会社 正田圭氏、CCCメディアハウス社と連携し、本日より出版記念特集として複数回に渡り配信予定です。

成功しているビジネスパーソンは戦略的に機会を呼び込む努力をしています。その努力とは「意思決定力」の開発です。
質の高い意思決定を日々積み重ねることで「とんでもない結果」を出すことが可能になります。そして、意思決定の質を高めるもの、それがファイナンスです。しかし、ファイナンス力をどのように鍛えればよいかをきちんと理解して、戦略的に実行している人は非常に少なく、成功者との格差が生まれる一つの要因となっています。本書では、なぜファイナンス力を高めると「意思決定の質が高まるのか」から始まり、「ファイナンス力の鍛え方」、そして「その理由」及び「方法」までを紹介します。

自身もシリアルアントレプレナーであり、これまで多くの起業家と向き合ってきた、ファイナンスのスペシャリストである正田氏ならではの持論をぜひご一読ください。

▽Amazon先行予約ページ
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4484172283/hnzk-22

▽正田氏インタビュー
『15歳で起業したボクが35億の会社を経営するまでの話―中学生起業家の失敗のすべて』
http://ex-career.org/tigala_0721/

INDEX
■はじめに│活躍できる人とできない人の差は 「ファイナンス」
― 誰もが意思決定者である
― ファイナンスは意思決定をするためのもの
― ファイナンスを学ぶことで誰もが質の高い意思決定を出来る

■第1章│ビジネスキャリアを加速させる秘訣はファイナンスにあり
― 世界で最も稼いでいるのはファイナンス業
― 「超高収入」の秘訣
― AI時代に求められるたったひとつのこと
― ビジネスは投資活動
― 「アセットアロケーション」から学ぶ

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はじめに│

活躍できる人とできない人の差は「ファイナンス」

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若くしてとんでもない成果を出しているビジネスパーソンが、稀にではありますが、確かに存在します。
「ベンチャー起業を立ち上げ、何億円もの資金調達を行った」 「会社を何十億円もの金額で売却した」「子会社の社長に抜擢され、何億円もの報酬を手にした」といった話を、皆さんもニュースサイトやSNSなどで目にしたことがあるのではないでしょうか。あるいは、特に天才でも何でもないような知り合いが、気が付いたらとても大きな仕事を任されていたり、驚くほど活躍していたり、なんてこともあるかもしれません。

「なぜあいつはこんなに運が良いのだろう」とか「なぜ彼女にばかり大きなチャンスがやってくるのか」と不思議に思い、本人たちに聞いてみると、「自分でもよくわからない」とか「運が良かっただけ」という答えが返ってきます。

このような「運の良い人」は、もちろん、本当に「ただ運が良い」だけの人ではありません。このような人たちは、大抵、自分の能力が最大限活かせるような機会、それも、今の仕事の延長戦上にはないような、非連続の飛地にあるような機会を捕まえ、未経験の分野に挑戦し、成長して実績を作っているのです。
さらには、一度上昇気流に乗るとそのような人たちはより結果を出す機会に恵まれ、次の活躍の開会をも獲得します。これは、決して運が良いだけではありません。これらのビジネスパーソンたちは、意識的にか、そうでないかは別として、戦略的に機会を呼び込む努力をしているのです。

その努力とは何か。それは「意思決定力の開発」です。意思決定力というと、何か大きな一大事を、思い切って度胸と勇気でバシッと決断すること、というイメージかもしれませんが、そんなことはありません。どちらかといえば、とても細かい、一つひとつ取り上げてみたら何でもないような意思決定を日々積み重ねることで、毎日毎日、少しずつの意思決定の差を乗数的に積み重ねていくのです。気が付いたら、そうした意思決定の回数は天文学的な数字になっていて、それが「とんでもない結果」を生み出すのです。

■誰もが意思決定者である

人間誰もが意思決定を行います。「朝起きて何を食べようか」「会社について、メールの返信をしようか、日経新聞を読もうか」「この本を読もうか、漫画を読もうか」なども意思決定ですし、「転職しようか」「このプロジェクトに名乗りを上げようか」「先方の要求にYESというか、NOというか」も意思決定です。ビジネスパーソンは、意思決定をする数は一日の中に何度も何度も存在し、とんでもない結果を連続的に出す秘訣は、これらの細かい意思決定の質を高めることなのです。

では、「意思決定の質」どのように高めていけばよいのでしょうか。その答えは意外かもしれませんが、ファイナンスを習得することです。意思決定の質が高く、ずば抜けた結果を出す人は皆、高度なファイナンス力を持っています。最近では、ファイナンスも少しブームになってきており、ファイナンスという言葉を聞いたことがある人は増えてきているかと思います。しかし、ファイナンス力をどのように鍛えればよいかをきちんと理解して戦略的に実行している人は多くありません

ファイナンスでよく使う数式については、多くの良書が出版されていますので、そちらに譲ろうと思います。本書では、「なぜファイナンス力を高めると意思決定の質が高まるのか」から始まり、「誰もが可能なファイナンス力の鍛え方」、そして、「ファイナンスこそが最強の意思決定術である理由」及び「ファイナンスで最強の意思決定をする方法」までを紹介していきます。

■ファイナンスは意思決定をするためのもの

ファイナンスの本というと、企業価値を求める計算式や、資金調達の考え方などのことであり、企業財務や経営企画室でしか使わないものだと誤解されている方もいらっしゃるかもしれません。

しかしながら、本書でいうファイナンスは意思決定のためのファイナンスです。
自分の能力を最大限に活用するための意思決定の質を高めるものこそがファイナンスであると定義しているのです。したがって本書は、財務部や経理部、経営企画室の人々のためだけではなく、努力をし、意思決定の質を高め、チャンスを手にしてとんでもない成長を達成していきたエグゼクティブすべてに向けた書籍となります。

それぞれのビジネスパーソンが高いパフォーマンスを出すためには、キャリアの過程で「活躍するための機会」をつかみ、そこで出した成果がさらに多くの「活躍の機会」を新たに呼び込み、実績が増え、付加価値が高まり、自己実現をしやすくなっていく。という、正の流れを生み出す必要があります。

一流のスポーツ選手は、極限の集中状態に入ったときに「相手の動きがゆっくり見える」「ボールの芯が光って見える」と言います。スポーツの世界だと、この状態を「フロー状態」とか「ゾーンに入る」といい、一流のアスリートたちは、このような状態になるための独自の工夫を行っています。そして、この状態に入った選手たちは、自分たちの能力を最大限に発揮し、トーナメントで優勝したり、連戦連勝を重ねたりして、多くの偉大な結果を生み出しています。

ファイナンスを活用することは、ビジネスの世界でこの「フロー状態」に入るための効果的な手法なのです。

断言しますが、皆さんがファイナンスを習得し、質の高い意思決定を行うことが可能になれば、今までとは全く違うハイレベルなパフォーマンスを発揮することが可能になります

冒頭の話に戻りますが、活躍している人にその理由を聞くと、「偶然だ」とか「運が良かっただけ」という回答が返ってきますが、多くのビジネスパーソンと話をしていると、それは偶然ではなく必然なのではないかと考えさせられる数々のエピソードが浮かび上がってきます。「飛びぬけた結果を出す人」には「飛びぬけた結果を出す理由」があるのです。

そこには、ファイナンス的思考を用いて、細かいところから大きなところまで質の高い意思決定を連続的に行っている共通要素があるのです。

ファイナンスを学ぶことで誰もが質の高い意思決定を出来る

私は、会社を作っては売却するという、いわゆるシリアルアントレプレナー(連続起業家)であり、「どのタイミングで経営の舵をきろうか」や、どの条件で売却しようかという意思決定の連続を繰り返してきました。また、現在はTIGALA株式会社という企業の代表取締役に就任し、M&Aのコンサルティングや投資事業を行っています。これらの経験や業務内容が、意思決定の精度を高めていくことに大きな影響を及ぼしているのかもしれません。

では、私のような経歴や、何か飛びぬけた才能がないと、このような意思決定力は向上しないものなのでしょうか。

私は、今のクライアントや「経営のプロ」たちと付き合うことで、正しいプロセスでファイナンスをきちんと学びさえすれば、経歴や才能に関わらず、誰でもが質の高い意思決定を行うことが可能だと確信しております。

拙著では、今まであまり語られることがなかった、ファイナンスの習得でどのように意思決定の質を高めるかというところのエッセンスを抽出し、それを誰もが再現可能な状態で実際のビジネスや日常生活に落とし込むかということを試みております。

私は、仕事柄、ファイナンスをどのように習得すればよいかを尋ねられることがたびたびあります。中小企業の社長さんに聞かれることもありますし、社会人キャリア1年目の人に聞かれることもあります。中には、上場企業のトップに質問されたこともありますし、弁護士や公認会計士等の士業関係者に尋ねられることもあります。

私はいつもこの問いを尋ねられると答えに苦しみます。ファイナンスについて書かれた本は書店にはたくさんあります。もちろん、私もファイナンスに関する本は書店でいろいろと目を通してみました。しかし、いわゆる数式の説明をしている本や、ファイナンスの理論書などのマニアックな本はいくつもあるのですが、「ファイナンスを知らない人に向けて書かれた、ファイナンスで意思決定するための本が存在しない」のです。

そして、何よりも、本を書いている人たちの中でも、ファイナンスは意思決定を行うための手段であるということを理解している人がほとんどいないのです。

ファイナンスが意思決定のためのものであるということが知られていないことは、非常に好ましくないと思いました。そして、ファイナンスが意思決定の技術であるということをわかりやすく伝える本があれば、日本にも傑出したビジネスパーソンが数多く出てきて、日本経済がもっともっと活性化すると思ったのです。

私は、実は、ビジネスの世界で成功を収めたい誰もが、ファイナンス思考を学ぶべきだと考えています。財務や経理の畑ではなく、企業の経営幹部でもない、圧倒的多数の社会人や若者こそが、ファイナンスで意思決定する術を知ることが重要だと考えているのです。

今回このようなテーマで書籍を書いた理由も、このような理由からです。ファイナンスを学んだことがない人が読んでもわかる本で、しかも、ファイナンスで意思決定をするための具体的な方法論をビジネスで成功したい全ての人に向けてわかりやすく書きました。

ファイナンスはいつ学んでもその日から役立ちます。ファイナンスによって意思決定の質が高まると、「良い結果が出る確率」が高まります。大げさかもしれませんが、ファイナンス思考を習得すれば人生を自分の力で切り開いていけるのです。

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1章│
ビジネスキャリアを加速させる秘訣はファイナンスにあり
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まずは、ファイナンスが、ビジネスキャリアにおいてどのような結果をもたらしているのかを見ていきましょう。

ファイナンスを使うキャリアといっても、意外とピンと来ないものだと思います。ファイナンスを使う職種の人といえば、企業の財務部や経営企画室で働いているような気もしますが、いまいち何をやっているかわからないと思います。営業マンを思い浮かべてみても、特にファイナンスに長けているとは思えないかと思います。もちろん、中にはファイナンスに詳しい人もいるかもしれませんが、職種によってファイナンスを使っている人、使ってない人を分類しようとしてみても、なかなか見えてこないものだと思います。

そこで、企業の業種という観点から分析してみたいと思います。

■世界で最も稼いでいるのはファイナンス業

東洋経済新報社は毎年、『会社四季報』に掲載している上場企業の「生涯給料」を発表しています。そのうち上位5位に注目してみると、1位のM&Aキャピタルパートナーズ(平均年齢30.5歳・2253万円)をはじめ、2位のGCAサヴィアン(平均年齢37.1歳・2153万円)、4位の日本M&Aセンター(平均年齢34.7歳・1237万円)の3社が企業の合併や買収を専門とするM&Aに携わっているのだということです。3位のドリームインキュベータも経営コンサルティングと並行して企業に対する投資を行っている会社です。

M&Aや投資は、ファイナンスに携わる業種ですので、日本国内の企業ランキングで見ても、ファイナンスに携わっている業種は「超高収入」であると言い切ってもよいと思います。

日本国内だけでなく、ファイナンスに関わる業種はグローバルな視点で見てもやはり「超高収入」です。
ニューヨーク・タイムズ紙が2012年から2015年にかけて、全米最大規模の銀行とテクノロジー企業のデータから様々な業種の年収を分析したところ、プライベートエクイティ(PE)ファンドの経営幹部の求人が、どの業界の経営幹部よりも高いことがわかったそうです。

2015年の収入トップ15人のうち10人がPEファンドの経営幹部で、そのうち8人が1億ドル以上。一方、他の業界では、1億ドル以上の収入を得た経営幹部は5人だけだったというデータもあります。

最も収入が多かったのはブラックストーン・グループのCEOであるスティーブン・シュワルツ氏であり、収入としては、2015年は約8億ドルもの報酬を得ていました。KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)のCEOのヘンリー・クラビス氏とジョージ・ロバーツ氏は、2人合わせて約3億ドルもの報酬を得ています。

もちろん、PEファンドのCEOばかりが高収入なわけではありません。

世界で、6大プライベートエクイティ幹部の平均収入は約2億ドルとなっており、彼らはテクノロジー企業でもあるフェイスブックやアップルの経営者よりも多くの報酬を得ています。

PEファンドも、ファイナンスに携わる業種になりますし、これらのように、国内・外問わず、ファイナンスに関わるビジネスパーソンは、信じられないほどの高所得であることがわかるかと思います。

■「超高収入」の秘訣

なぜこれほどまでにファイナンスに絡む業種は「超高収入」なのでしょうか?
他の業種の企業より多くの製品を生み出しているからでしょうか?あるいは、他より多くの労力をビジネスに費やしているからかでしょうか?

正解はどれも違います。

それは、彼らが「ファイナンス」という技術を用いて、他の企業より大きな影響力をビジネスの世界に及ぼしているからなのです。

投資銀行、投資会社、M&A関連企業が「超高収入」ランキングに並んでいましたが、これらの企業をひとくくりにしてしまうと、皆、「大きなお金に関わる意思決定を行う(あるいは、それらの意思決定に関わるアドバイス)する職業」なのです。

M&Aは、会社を買ったり売ったりする仕事ですし、投資業は、お客さんから預かったお金を企業や不動産などに投下し、リターンを上げる仕事です。M&Aなどというと、何百億、時には何千億円もの取引になることもあります。

彼らが行っていることは、お金を右から左に流すだけのいわゆる「マネーゲーム」ではありません。
プライベートエクイティファンドやM&Aなんて言いますと、経営難に陥った会社の弱みにかこつけて投資をし、業績が良くなったら良くなったで利益の大部分をもっていってしまうようなイメージをもしかしたら抱かれているのかもしれませんが、それは大きな誤解です。

経営難に陥った会社に投資するということは、当然のことながら、大きなリスクが存在します。投資先が回復せずに破綻すれば、大きな損失を被ることになるのです。また、周りがあまり気付いていないだけで、ファンドの恩恵を受けている人々は意外と多いものです。
投資を受けた企業は、投資を受けることが出来なければそのまま倒産してしまい、取引先や雇用者はダメージを受けるわけですし、企業再生や産業再編を行う中で多くの雇用を創出します。
また、プライベートエクイティファンドは、年金基金などのお金を運用しているため、そこでリターンを産み出すことは、納税者のコスト削減にもつながっているのです。

このように、ファイナンスに携わる人々は、大きなお金、あるいは大きな責任というものを肩に背負っており、その重圧の中で意思決定を下す仕事をしているのだということになります。それが、彼らを「超高収入」たらしめるのです。

■AI時代に求められるたったひとつのこと

ファイナンスを扱う業種が「超高収入」になった背景には、科学技術やコンピュータなどの目まぐるしい進歩に合わせて、人々の働き方が劇的に変化したことがあるのは間違いありません。
数年前、英オックスフォード大学でAI(人工知能)の研究を行うチームが「雇用の未来」という論文を発表しました。
この論文は、手先の器用さ、芸術的な能力、交渉力、説得力など、コンピュータ化の障壁となり得る仕事特性を抽出して702の職種を評価し、「今後、10年から20年程度の期間で、約47%の仕事が機械によって自動化される」と予言したのです。

この予言が産業界を驚かせたのは、これまで人間にしかできないと思われた仕事さえもが「消える仕事」として指摘されていたからです。
目につくところで挙げていくと、会計士、銀行の融資担当者、不動産ブローカー、保険の審査担当者、苦情の処理・調査担当者など。
こうした仕事が機械にとって代わられるということは、技術の進歩がそれだけ早くなっていることの証しなのでしょう。

ビジネスパーソンに求められるビジネスの成果にも、大きな変化が訪れています。
「いい商品」「いいサービス」を作れば勝手に売れていた時代は過ぎ去り、膨大なビッグデータを効率的に解析し、高度な広告技術を多用することでどんな買い手がいるのかを探り、しっかりとターゲティングしなければ、モノやサービスが売れなくなってきました。

世の中はどんどん成熟して、なかなかモノが売れない時代になりつつあります。
そんな世界で求められる仕事の成果は、「どれだけ長く働いたか」とか、「どれだけたくさん汗をかいたか」といった努力の量や質が問われるようなものではなくなりました。

その結果として、今まであった仕事が機械にとって代わられるという事象が起こり、意思決定するという仕事の付加価値が向上していっているのです。
今ではAIが活用され始めたり、シンギュラリティ(技術的特異点)などという言葉が流行ったりしていて、コンピュータが人間の知能を超えるなんて言われていますが、人間が最終意思決定をするという図式が変わることはあり得ないでしょう。

なぜなら、最終的な意思決定者というものは、最終的に責任を取る人のことであり、どれ だけAIが発達しようとも、コンピュータが責任を負うことはできないからです。

では、このような世界になっていくなかで、ビジネスパーソンに求められることは何にな るのでしょうか?
すでにお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、それは「インパクトのある意思決 定をすること」です。もっと言えば、「インパクトのある意思決定をし、それに対してきちんと責任を取ること」なのです。あと数十年もたてば、ビジネスの世界では、この1点しかビジネスパーソンには求められなくなると私は予想しています。

そもそも、会社の社長が「できる」ビジネスパーソンに最も期待することは、自社のビジネスにいかに良質かつ巨大なインパクトを与えてくれるかです。 私も現在、TIGALA株式会社というところで会社経営を行っていますが、「できる人」に期待する点はそこになります。

特に幹部候補・役員候補としてジョインしていただくような人には、ビジネスの肝となるような命題に対する明確な指針を、入社初日から求めています。
あまり大きな声では言えませんが、私が知っているとあるベンチャー企業では、経営幹部候補として入社して、初日にインパクトのある提案をひとつも出してこない場合は入社取り消しを行っています。

逆に、自分が雇われる際も同様です。
私の会社がクライアントから依頼を受けた場合、期待される第一の仕事は企業価値を大きく向上させることです。
私の会社では、M&Aの支援や事業再生などのコンサルティング業務を請け負いますが、どうしたらこの企業を買収できるかとか、この会社が倒産するのを防ぐためには、まずどこを改善しなければならないのかといった緊急性かつ重要性の高い命題に対して、インパクトのある回答を打ち出さなければなりません。
依頼を受けているということは、私の会社はいわゆるプロの「傭兵」であり、実際の現場では自国の兵士よりも役に立たなかったなんてことは許されません。クライアントも、それ 相応の、あるいはフィー以上の成果を求めているので、クライアントの既存の従業員や経営幹部たちが束になっても出すことのできない策や手法を、私たちは頭がちぎれそうになるま で真剣に考えます。

それだけでなく、私は仕事の依頼を受ける際、その企業の様々なデータを集めながら、独自の分析を行っていくのですが、クライアントの社内の有力者たちがどのような考えや見解を持っていて、どのような意思決定プロセスでその企業の意思決定が行われるのかも見落とさないように観察していきます。なぜそのようなところを観察するのかというと、私たちの会社がファイナンスの技法を使ってどのような良策を生み出したとしても、結局、その策について最終意思決定をするのはその会社になるからです。 インパクトのある意思決定案を出すだけではまだ足りない、というのがビジネスの世界の現実なのです。ビジネスは1人だけでできるものではありません。インパクトのある意思決定を行うためには、人を動かす力も必要なのです。

AI時代を迎えるなかで、プロフェッショナルと呼ばれる人の条件は、いかに多くの責任を伴った意思決定活動をしているか、また、それを実現するためにいかに人を動かし、ビジネスの核となる部分にインパクトを与えているかという点になってくるでしょう。

■ビジネスは投資活動

では、このような「超高収入」プロフェッショナルは、どのような生活を送っているのでしょうか?  確かに、毎晩寝る時間を削って激務をこなしている、という噂は非常によく耳にします。

投資銀行のサラリーマンは、基本的には平日9時〜27時まで働き(早い日でも25時)、毎月約350時間働きます。こんな調子で仕事をしていますので、当然、毎日寝不足を抱えています。基本的には3時間睡眠。徹夜明けでよく眠れる日でも4時間半、みたいな生活なので、少しの空き時間でも睡眠を確保するような涙ぐましい努力をしています。
移動は電車を使わずにタクシーを使い、積極的にタクシーの中で眠るのなんて当たり前で、 トイレの個室で眠るとか、立ったまま眠るとか、様々な技を身につけ、細切れでもいいから少しでも多くの累積睡眠時間を稼ごうとしているのです。

このような過剰な労働時間が、プロフェッショナルたちの「超高収入」の源泉という解釈は、果たして正しいのでしょうか?
彼らの労働時間は、先ほど月350時間と書きましたが、通常のサラリーマンの労働時間は月200時間弱です。過激に働いているように見えても、彼らは常人の2倍も働いてはいないのです。仮に2倍の仕事時間だとしても、給料は単純計算で2倍です。どう考えたって、常人の何百倍、何千倍も稼いでいるプロフェッショナルたちの一員になるためには、労働時間だけでは限度があります。

しかも、裏話を明かしてしまえば、このような激務を強いられている投資銀行のサラリーマンは、投資銀行の世界では下っ端です。
投資銀行だけではなく、コンサル業界でも、弁護士業界でも、上のクラスのパートナー役職はプライベートの時間をしっかりと確保して、優雅な毎日を送っているのです。

ということは、彼らの「超高収入」の源泉は、やはり労働時間の長さではないということになります。さらに言えば、彼らが常人たちよりも同じ仕事量で何十倍もの生産性があるのかといえば、そのようなこともありません。これは私の主観でもありますが、ひとつの仕事が10倍、20倍も速い人というのは存在しないものです。

かくいう私も、仕事時間に関して言えば、そこまで多いほうではありません。午前中は、週3〜4日はジムに行き、体を動かしていることも多いですし、夜も18時には帰宅し、家族で夕食をとります。睡眠時間も確保しなければならないほうなので、23時ごろには就寝しています。日曜日には子供を水族館や動物園に連れて行きますし、平日の夕方でも、ふらっと子供を連れてディズニーランドに出かけることもあります。
私の仕事は主にM&Aのアドバイスや投資を行うことになりますが、どれだけ時間をかけるかよりも、どの案件に力を入れるかとか、どの投資先を選定するかで、ビジネスの成果が大きく変わってきている実感があります。

私だけでなく、皆さんの仕事も同じだと思います。仕事のどの部分に力を注ぐのかによって、成果の出方は大きく変わるのだと思います。
例えば、販売会議を1時間行うのにも、商品の価格設定について協議を重ねたほうがいい のか、それとも販売手法なのか、WEBでのプロモーション活動について話し合ったほうが いいのかなど、どこに焦点を当てて議論するかで、その会議が意味のあるものになるのか、そうでないのかが決まってきます。

実際に、ビジネスで大きな成果を出す人は、どれだけ多く働いたかよりも、自分の限りある労働時間をどこに振り分けるかに多くの時間と精神力を使っている傾向にあります。
自分の手掛けているプロジェクトや事業部のどこを突けば伸びるのか、もしくは伸びないのかの見極めが、ビジネスのパフォーマンスに大きく影響してくるのです。
また、自分の仕事だけではなく、新入社員教育のどこを重点的に行うか(パソコンのスキルか、ビジネスマナーか、接客スキルか等)、自分が仕事の能力を高めるためにどの本を読むのかなど、どこにリソースを投資するかで成否は変わってきます。

■「アセットアロケーション」から学ぶ

投資の世界には、「アセットアロケーション」という言葉が存在します。
「アセットアロケーション」とは、簡単に言えば資産を分散させる運用手法のことですが、投資をやっている人たちの間でも意外と認識されていないキーワードです。
簡単に説明しておきましょう。例えば、皆さんが1億円の貯金を持っていると仮定します。
なかには1億円すべてを使っていきなり不動産を購入したり、株を購入したりする人もいるかもしれませんし、いくらかは現金で残した上で株にも社債にも不動産にも投資する、という人もいるでしょう。バランスの組み方は十人十色だと思います。

つまり「アセットアロケーション」とは、このように異なるリスクやリターンの特性をもつ「資産クラス」に分類した投資先への分配比率を決定することを言うのです。
具体的には、「日本株」「外国株」「日本債券」「外国債券」「不動産」といったものが資産クラスとして分類され、「日本株30%・外国株10%・不動産55%・金5%」とか、「日本株50%・先進国株式40%・新興国株式10%」などのように投資比率を決めることになります。

実は、この「アセットアロケーション」は、投資の世界ではものすごく重要なのです。なぜなら、投資の成否は、この「アセットアロケーション」で8割以上決まってしまうからです。
もう少しかみ砕いて言うと、投資の世界で最も重要なのは、銘柄選びや売買のタイミングではなく、「どの資産にどんな割合で投資するか」なのです。
証券会社やマネー雑誌が言い立てる「次の高騰銘柄はズバリこれだ!」とか「伝説のアナリストが選ぶ、投資推奨ランキングベスト10」といったものは、極端な話、意味がありません。そんなものを読む以前に、どの資産クラスにどう資金投下するかで、すでに勝負は決まってしまっているのです。

私は、ビジネスパーソンの時間の振り分け方も、この「アセットアロケーション」と同じだと考えています。

ビジネスパーソンでいうと、与えられた仕事をどうこなそうかとか、どうやって時間を捻出しようかと考えるのではなくて、どの業界で仕事をするかとか、どの会社に就職するか、もしくはどのプロジェクトに力を注ぐかを考えることが大事だということです。
戦う場所や勝負すべきポイントがズレていれば、課題解決をどれだけ頑張っても何も好転しないからです。的外れなことにこだわっていても、努力は報われません。

ビジネスパーソンが人並み外れた成果を出そうとするとき、手を動かし始めるよりもまず最初にするべきは、「どう戦うか」以前に「どこで戦うか」をきちんと見極めることです。
そして、自分がこれだと思った方向に周りをしっかりと引っ張っていくことが重要です。

時間や労力といったリソースは、無限にあるものではなく、限られたものです。だからこそ、最小限のリソースを使って最大限の成果をあげるような仕事の仕方が求められているのです。まさにファイナンスにおける投資の原理のように、限られた時間と労力をどこにつぎ込めばいいのか、判断する力が必要になっているわけです。

ビジネスの極意は、「労働時間」でも「作業スピード」でもありません。
限られたリソースをどこに投資するかです。
ビジネスは「投資活動」なのです。そして、その投資効果を最大にするためのファイナンスなのです。

最初のうちは霧がかかったかのように、見えないものがたくさんあるでしょう。しかし、実戦経験を積み重ねていくと、自分が向き合っているビジネスの仕組みが見えてきて、どこに集中するべきなのか、どこがポイントなのかがだんだんと見えてくるようになってきます。
そして、そんな状況の中でビジネスを劇的に好転させるための本質的な核を突き止めること、それがファイナンスを学ぶことで身につく能力なのです。

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ABOUTこの記事をかいた人

正田 圭

正田 圭(まさだ・けい) 1986年奈良県出身。15歳でインターネット関連事業会社を起業。インターネット事業を売却後、M&Aサービスを展開。事業再生の計画策定や企業価値評価業務に従事。2011年にTIGALA株式会社設立、代表取締役就任。テクノロジーを用いてストラクチャードファイナンスや企業グループ内再編等の投資銀行サービスを提供。著書に『ファイナンスこそが最強の意思決定術である』『ビジネスの世界で戦うのならファイナンスから始めなさい』『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』(いずれもCCCメディアハウス)がある。