「超えられない壁はない。自分らしく前へ」 トライベック・ストラテジー株式会社 取締役(COO) 後藤 洋

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取締役(COO) 後藤 洋

1978年9月13日生まれ
慶應義塾大学法学部卒業。同大学卒業後、ソフトバンクに入社。同社出版部門の広告局にて、幅広いクライアントの広告営業に従事。また新規事業立ち上げにおけるマーケティング全般を担当し、新たなビジネスモデルによる収益を追求した。2002年より、トライベック・ストラテジーに参画。現在、同社取締役として活躍中。著書に「オウンドメディアコミュニケーション成功の法則21」。2012年には内閣官房国家戦略室のWebコミュニケーション検討会にコンサルタントとして参画。  

 


COOまでの道のり

 慶応義塾大学を卒業後ソフトバンクに入社しました。大学生の頃は、広告や商社などの大企業を中心に就職活動していました。もともとIT企業にはあまり興味がなかったのですが、『孫正義大いに語る』という本と運命的な出会いを果たし、孫社長の描くビジョンに感銘を受け、これまでの内定を取り消して入社しました。 

 グループのメディア系会社であるソフトバンクの雑誌や出版物の広告営業を担当し、テレアポから飛び込みまで、泥臭い営業を経験しました。このとき私は、「広告を売るとは、自分を買ってもらうことだ」と実感し、自分磨きに専念した1年でしたね。クライアントとのコミュニケーションやつながりを何より重要視し、クライアントにとって何が有益かをとことん考えていました。

 誰に頼まれているわけでなく、クライアントに関連する業界ニュースや、お役立ち情報なんかを「メールマガジン」として送っていたんですが、それが功を奏して、「後藤洋」を覚えてもらえるようになり、名指しでお声がけを頂けるようになり、ナンバーワンの実績を残すことができました。

 営業をして半年くらいでしょうか。私自身は雑誌広告の効果や有効性について疑問を感じていました。「クライアントの広告に込めた想いは、一体誰に、どのように伝っているのか?」。そこで私は、当時の上長と共に新規事業の企画を立案しました。

 当時ではまだニッチだったセミナー・イベント事業を通じて、クライアントの想いを直接来場者に伝えるというものでした。結果は大成功。今では同社の主軸事業のひとつに成長していると聞いています。人と人のつながり、コミュニケーション、それこそがビジネスにおいて何より重要だと感じた瞬間であり、このとき得た経験は今も私の財産になっています。

 つながり、コミュニケーション。気がつくと私はさらなる高みのビジネスシーンを目指していました。特にIT業界で揉まれながら、リアルなマーケティングを経験した私は、デジタルとマーケティングを融合していくことで、新たなコミュニケーションが創出できると信じていました。ソフトバンクを卒業し、ネクストステップを踏み出そうと行きついた会社が今のトライベック・ストラテジーでした。

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 当時のトライベックは3人の創業者を含む10名程度の立ち上げたばかりのベンチャー企業でした。デジタル×マーケティング×コミュニケーションをコンセプトにしたこの会社は、まさに私が目指そうと思っていた考えに合致する企業であり、胸が躍りました。その頃はこれまでのキャリアが通用すると軽く考えていましたね。蓋を開けば、私はなんの役にも立たないメンバーの一人でした。

 

 当時のトライベック社員は、人数こそ少なかったものの、大企業でのキャリアを持ったプロフェッショナルばかり。そういう方々と比べれば私は新卒と同様の素人みたいなものです。ゼロからのスタートでした。何をやってもできない自分、クライアントの前で土下座したこともありました。今考えれば笑い話ですが、当時の自分のプライドはズタズタでしたね。でも私の長所はとことんポジティブなこと。後ろを振り返ってもしょうがない、前を向いて歩いていこうと思い、がむしゃらに勉強しました。毎日ひたすら早朝と仕事終了後の勉強、通常業務をやりながら、ガンガン怒られながら、先輩社員の振舞いを学ぶ日々でした。

 結果として出てきたのは入社して3年目くらいからでしょうか。私が満を持して作った企画書が通り、自分主体のプロジェクトが初めて前に進み出しました。

 そこからは、どんどん新しいプロジェクトが立ち上がり成果も出せました。そして何よりビジネスのネットワークが拡がっていきました。

 実はこのビジネスのネットワークこそが重要なんです。ビジネス上のネットワークは、仕事や会社を通じてだけでなく、友人を通じて、そして大学OBを通じて、さまざまな場面で作られます。あらゆるネットワークを活用しながら、そこから新たな仕事が生まれるビジネスのネットワークを構築しました。ただこのビジネスのネットワークは、会社のため、仕事のためだけのものではありません。「どれだけ後藤洋の価値を高められるか」が問われるものでした。私にとって、セルフブランディングへの投資を絶やさず、そして向上心を忘れず自分を高めていくことが仕事や私生活のモチベーションでもあります。 

 

 そうした数々の実績が評価され、弊社では当時最年少でゼネラルマネージャー、29歳の時に執行役員、30代に程なく現職の取締役COOに就任することができました。現場からより俯瞰した判断が必要となる経営側の立場になり、これまで個を高めれば会社も成長すると思っていた自己中心的で荒削りな自分を捨て、組織・チームを強くすることで会社を成長させていかなくてはと強く思いました。

 しかし、そうは言っても、すぐにはうまくはいきません。当時最年少だった私にとって、年上の社員をまとめていくことは容易ではありませんでした。上司と部下として、同じチームのメンバーとして、同じ志を持ったメンバーとして、時には相談相手として、いろいろな思いが錯綜し、自分の立ち位置が見失いそうになったこともありました。そのとき思ったんです。「見失ってはダメだ。自分にしかできないことをやろう。会社にとって、メンバーにとって、自分ができること・・・」それがブランディングでした。 

 当時のトライベックは業界的にもほとんど知られることのない会社でした。自分自身が身を粉にしてブランディングに打ち込めば、きっとその姿に共鳴してくれる。そして何より、会社が向かうべき方向性や成長しているという実感を、社員全員で共有できると思いました。

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CEOとの役割の違い 

 私たちのCEO(代表取締役社長)は、出身が有限責任監査法人トーマツ出身ということもあり、財務や経営戦略を中心に、会社全体のマネジメントを行っています。一方私はCOO(最高執行責任者)という肩書を持つわけですが、どちらかというと現場に近いポジションでコンサルタントとしてプロジェクトに参画しながら、会社のブランディングやマーケティング戦略などを推進することがミッションです。

 特に私はトライベックの広告塔だと思っております。外部でのセミナーや講演をする機会も多いので、さまざまな場面で評価されることがあります。それは良くも悪くも、大変なプレッシャーです。そこで何が伝えられるか、何が伝わるか、トライベックという会社の印象が決まると思えば、おのずとプレッシャーはかかります。ただそれが、私のミッションであり、現場統括責任者であるCOOの役割なのかもしれませんね。

 ブランディングに力を入れ始めたのが2010年。すぐに広告メディアへの出稿ができるわけではないので、まずは私が先頭に立ってさまざまな場所でセミナーや講演、そして執筆活動や寄稿などを実施しました。押しつぶされそうなプレッシャーの中で、ときに孤独な戦いでもありましたが、徐々に会社の認知度は上がり、今では広告出稿やフォーラムイベントの協賛などもやっています。

 まだまだこれからですが、社員全員で自分の会社のブランディングに取り組むことが、結果として自分のブランディング、つまりセルフブランディングにつながっているのだと実感してもらえる日が来ると信じています。

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経営陣を目指す、起業する若者へ 

 いかなる状況においても信念を曲げないでほしいですね。

 でも意外と信念そのものについて何だろう?と思う人も多いかもしれません。でもそれをこれから見つけられるのも、若い方々の特権です。ゴールは決めつけられたものでなく、自分が決めるものです。柔軟なアタマで、あらゆることを吸収し、もっとも「自分らしいゴール」を見つけてください。「自分らしいゴール」、それこそが信念だと思います。自分の信念(ゴール)が見つかったら、どれだけ失敗してもくじけず、ただひたすら努力し続けることが大事です。何があっても諦めてはいけません。そのためには、まず個を高めてください。

 自分に対して投資し、ひたすら努力してください。そしてもうひとつ大事なこと。それはあなたのチーム(仲間)を作ることです。個の力は高めることはもちろん大事ですが、それだけではすぐに壁に当たります。その壁を個で乗り越えられなければ、チームで乗り越えてください。そうすれば乗り越えられない壁はありません。

 今の私があるのはなぜか。それは個を高めるためにポジティブに好きな事を追求し続け、最高のチームに恵まれたことに尽きます。嫌な事やネガティブなことが面白くないなんて当たり前のことです。仕事なんて全部面白い事ばかりじゃないです。むしろ面倒なことばかりかもしれません(笑)。でも、考えようによっては、ネガティブなことはポジティブに変えられるんです。

 むしろ大事なことは、すべての仕事が自分の信念につながっていると実感することであり、その思いをチームで共有できることなんですよね。越えられない壁なんてないですよ。いつか皆さんとお仕事ご一緒したいですね。

 

 

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