なぜ、仲良し経営では成長し続けられないのか?― 株式会社識学 取締役 梶山 啓介

― 昨今ベンチャー経営者や幹部の間で爆発的に導入が進んでいる「識学」。 「意識構造学」と呼ばれる「人間の思考のクセ」を解消する学問をベースとし、組織パフォーマンスを改革する新たなマネジメントツールとして注目されている。 今回は「識学」を展開する株式会社識学と実際にサービスを導入している3社との対談を通して、「識学のリアル」に迫る。

株式会社キープレイヤーズ 代表取締役 高野 秀敏

新卒で株式会社インテリジェンスへ入社。その後、株式会社キープレイヤーズを設立し、 人材エージェントとして、30社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内、シリコンバレー、バングラデシュで実行。1万名のキャリアカウンセリングと面談対策。マネージャーとして、キャリアコンサルタントチームを運営・教育。
株式会社ランクアップ 取締役 日高 由紀子

1976年生まれ。出版社、広告代理店の営業を経て岩崎社長とともにランクアップを設立する。設立当初から、宣伝部、カスタマーサポート部、製品開発部、システム部など、多くの部署の部長を兼任。また、現在は人事面にも力を入れ、新卒採用、理念浸透プログラム、人事評価制度の責任者として活動中。

株式会社グッドフェローズ 代表取締役社長 長尾 泰広

2006年に地元富山から上京。ネットベンチャー企業にて取締役に就任し、ベンチャー企業のイロハを学ぶ。2009年に株式会社グッドフェローズを設立。産業用太陽光発電の一括見積り依頼サイト「タイナビ NEXT」を現在業界のNo.1の問い合わせ数を誇るサイトに成長させる。 現在はインターネットメディアに留まらず、太陽光発電を含む環境部材の卸売販売も行っている。

株式会社ファインドスター 代表取締役社長 渡邊 敦彦

米国留学後、株式会社ファインドスター入社。不動産業界、通信販売業のダイレクトマーケティング支援に従事。2008年8月株式会社ファインドスターのグループ会社第一号として、株式会社ワンスターを設立し、代表取締役就任。2013年度上半期 Yahoo! JAPAN プレミアム広告 エージェンシーカンファレンスにおいて「優秀成長広告会社賞」を受賞。2015年7月株式会社ファインドスター代表取締役社長に就任。

株式会社識学 取締役 梶山 啓介
1981年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、シティバンク銀行入社。2007年、営業支援事業を行う株式会社エッジコネクションを設立。同社副社長として、様々な規模、業種の企業様の営業支援や営業組織の立ち上げに関わる。2015年、株式会社識学が設立されたタイミングにて、同社取締役へ就任。

それぞれとっての「識学」

日高:初めまして、株式会社ランクアップの取締役をしている日高と申します。

弊社は創業14年目でオリジナル化粧品ブランドの通信販売をしています。
一番有名な商品は「ホットクレンジングゲル」で年間50億ほどお取扱いいただいています。

高野:それだけ素晴らしし業績を出されていてみなさん定時で退社されてるんですよね?

日高:私も含め、弊社は半数以上がママさん社員で構成されているため、そういう人たちの活躍の障害となるものは長時間労働だろうと考え、様々な人事施策を導入してきました。

高野:周りからは「いい会社だね」という声もたくさん頂いているそうですね。

日高:有難いことに皆さんからはそのように仰っていただくこともありました。なんですが、この14年間ずっと組織について悩んでばかりでした。

あるとき、それまで行っていたトップダウンのマネジメント方が良くないのかと考え、会社の価値観を掲げ、その価値観に合えば、なんでもやっていい!みんなに任せるよ!と会社からのメッセージを180度変えたんです。

そうすると、業績が上がったんです。
でもそのうち、目標を選ぶ人が現れてきました。

あるメンバーに「これをお願いね」というと、「それは嫌です、私はこっちをやりたいです」という具合に売り上げやミッションの達成に直結しない目標を個人が選ぶようになっていきました。

日高:そんな時に代表の岩崎がFacebookで見かけた識学さんの広告が気になっていたところ、知り合いの方に誘われて、セミナーに参加させてもらったんです。

梶山:当時は部下が目標を選べる、ルールを選べると錯覚しており、一つ一つに対して説得、納得させなきゃいけないから時間がかかるって感じの状況でしょうか。

日高:とはいえ会社としてのミッションステートメントやモラルを破ることはできないので、許容範囲を超えた希望には「NO」を返すと、「なんで私の意見は聞いてくれないの?」と不満に思う社員が増えてきました。それに対する説明が本当に大変でした…。

梶山:会社の事業が大きく成功する中で、それに伴い様々なメンバーが入ってきて、組織としての規模は大きくなってきた。
一方で組織としてのルールや管理する指標が明確に定まっているわけではなかったので、マネジメントは大変になってきましたよね?

日高:そうなんですよ。役割、求める結果を明確化しきれていなかったので、大変になってきたので、識学の力をかりて明確化する作業をしていきました。そうすると、最初に反応したのは、昔から会社の数字を引っ張ってくれていたメンバーでしたね。「やりやすくなった」って。

高野:代表の岩崎さんは前職の広告代理店時代に化粧品を担当するなかで「クレンジングこそが化粧品のなかで最も大切だ。そのクレンジングをわかっている人が作るべきだ」とランクアップを創業した振り切った方ですよね。

けれど組織のことになると、自社の意思決定についてメンバーそれぞれの感情を尊重するあまり、意思決定を貫くべきか迷っていらっしゃった。

日高:私たちのようなベンチャー企業に入ってくれたことへの感謝と、その人を幸せにしたいという思いが強いあまり、その気持ちが強かったと思います。それを、「位置関係ができていない」とずばり識学さんに指摘され、はっとさせられました。

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長尾:グッドフェローズの長尾と申します。
弊社は太陽光や風力、電力自由化等、エネルギー関係のメディアをいくつかやっています。

会社名にもなっている「グットフェローズ」は、直訳すると「気のいい仲間」という意味で、私含めもともと仲が良いメンバー3名で創業した会社という背景があります。

私たちはいわゆる「文鎮型」の組織でした。「社長」「副社長」「専務」「部長」「リーダー」といったように各自肩書きはあるものの、役割、責任、権限を明確化していなかったので、肩書きに沿うような働きや機能を各自が果たせていせんでした。

話をわかりやすくするために少し極端に言いますが、全ての責任、権限が僕に集中しているような状態で、その他は実質、並列に近い形でした。精神的にも体力的にも辛いものがありましたね。

梶山:はじめは、弊社のセミナーにご参加いただいたのがきっかけでしたよね。

長尾:はい、識学導入は僕以外にも部長・役員陣にも受けてもらい共通言語をつくることができるようになるとともに、組織が徐々にピラミッド型になっていきました。

梶山:長尾さんのところはもともと高校の同級生が創業メンバーだったこともあり、位置関係が難しいところでしたよね。

長尾:そうですね。副社長がそうなのですが、やはり高校からの同級生で、プライベートでも仲が良いので、位置関係を明確にする難しさはありましたよね。一方、彼の性格の良さも手伝って、識学を受ける前からも、彼なりに僕を立ててくれました。
ただ、それでも私情が入ってしまうので、完全に位置を明確化できず、その弊害はやはり、ありました。そのため、識学のトレーニングを境に関係性を見直し、彼も受け入れてくれている状況なので、心情を想うととても感謝しています。

高野:識学導入後、上手くいったんですね。対立する場合も世の中たくさんありますよね。

長尾:幹部陣に関しては識学的な動きができているのですが、その下の浸透には現在も苦労しています。
ある意味、嫌われる覚悟が必要で幹部陣ともども現在もトライし続けている状況となります。

先日とある社員が辞めたのですが、その社員の上司が「あいつは優秀だった」と言うんです。けれどその社員は売り上げ目標を達成できていませんでした。売り上げ目標を達成していないのに、その上司は高く評価していたんです。これは評価基準が誤っていると感じさせられました。

梶山:結果でみることができないとそうなりますよね。ベンチャーあるあるなのですが、創業当初は自分が活躍できていても、組織拡大と共に新卒の方が地頭では上回ってくる。いままで「結果」でなく「経過」で評価されていた新卒はそうなると悲惨ですよね。

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渡邊:ファインドスターの渡邊と申します。

ビジネスは広告代理業がメインで、化粧品や健康食品に特化して紙の広告代理業からスタートしてネット広告、PR、インフォマーシャル、と国内は横展開していて、海外では台湾、上海、バンコクの3拠点で日系のメーカー様の通信販売の支援をさせていただいています。

ファインドスターは特に通販のクライアント様の支援でご好評いただいているのですが、事業成長と共に支援先のクライアント様のポートフォリオの偏りが顕著になり、業績の成長が滞っていました。

当時、以前に創業した会社でネット広告で売上を伸ばしていたので天狗になっていた僕は、「僕がV字回復させます!」と参画しました。
そして、そこから僕が参画してから売上30%を落とすことになりました。苦笑

本来ならクビになるような話ですが、グループ代表の内藤は一切口を出さずに見届けてくれました。

高野:信頼されていたのですね。

渡邊:頭が上がらないですね。当時は下がり続ける売上をどう止めていいかわからず、様々な経営者に相談していました。

梶山:渡邊さんは創業オーナーではないが故に、組織マネジメントに悩まれてましたよね。

渡邊:はい。ファインドスターという会社に途中から参画した私は途中でピラミッドが出来上がっていて、その中で僕がズケズケとトップに入り、信頼関係をつくることもせず、人事をいじったり戦略発表をするということを行っていました。

加えて当時は組織ピラミッドが多層階層になっており、情報伝達に大きな障害となっていたので、6層あったピラミッドを3層まで潰して現場に近いところに入っていきました。

結果少しずつ業績は回復したものの、ピラミッドを潰していくこのやり方には拡大性がないと感じ、これから100人、300人の組織にするにあたり、このままではいけないと感じたのが識学さんとの出会いのきっかけでした。

梶山:渡邊さんはトレーニングを受けていく中ですぐご自身の直下のメンバーも連れてきてくださいましたよね。

渡邊:話を聞いていく中で、僕が欲している型とフィットすると感じました。

同時にこれは組織内で共通言語化することが重要だと。なので今は部長以上のすべてのメンバーに識学を受けてもらっています。

特に識学を導入して良かったのは、「完全結果」が機能したことです。
それまでは僕があいまいな結果設定をするものだから、部下があげてきた成果に対して納得できない、一方部下はやってきたつもりだけど、僕も部下もストレスをためる状態がありました。

このままでは不必要な恐怖が蔓延し、優秀な幹部たちがYESマンになりかねない状態に識学が大舵をふるってもらいました。

なぜ、仲良し経営では成長し続けられないのか?

高野:識学をやるとイエスマンの会社になってしまうんじゃないか?という話がよくありますよね。その辺りはいかがですか?

渡邊:それはむしろ逆ですね。
イエスマンにさせない、NOを言える範囲がどこまでかを明確にするのが識学だと思います。

業績を落とした時は部下と距離を縮めてコミュニケーションでごまかそうとする自分がいました。

日高:わかります。あの人暗いな、と思ったら飲みに連れていき話しを聞く。自分ではきっとモチベーションあがっただろうと満足してましたが、根本の解決には全くなっていませんでしたね。

高野:本来評価制度とは雇用される側、雇用する側、双方のために設定されているはずです。そして「完全成果」の設定以外では、どうしてもそれ以外に逃げがちだったりしますよね。

明確な目標と評価設定と同時に共通言語があるのはいいですよね。

日高:そうなんです。

私たちも・・・

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