「ビジネスマンとしての僕は、まだ敗北者だと思っている」 株式会社trippieace 取締役CFO 小泉文明

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Q:mixiを退任後、満を持してのtrippieceへの参画ですが心境をお聞かせください。

 誤解を恐れずに言うと、僕自身、まだビジネスマンとしては敗北者という認識です。 当初、mixiに参画した時に描いていた「プラットフォームの上に、ユーザーがハッピーになるサービスを広げる」という世界観。たしかにmixiに限らず、GREE、Mobageなどのプラットフォームが誕生しました。しかし、その上に広がるサービスのほとんどがソーシャルゲームであるという事実は、僕にとって道半ばという印象でしかありません。

 ソーシャルゲームが悪いわけではないのですが、もっともっと楽しいコンテンツが世の中には存在していますし、SNSを活用したソーシャルサービスにはその可能性がまだ残っていると思ってます。

 世間的にはmixiの取締役だった、CFOだった、というトラックレコードで見られがちですけど、僕はCFOである前にビジネスマンであり、ビジネスを成功させる、社会をより良いものにするという意味では、まだまだ満足のいく結果は出してません。ここで止めてしまえばただの敗北者だと思っています。

 今回参画した、trippieceは、「旅」というコンテンツになりますが、サービスも開始して1年半、メンバーも10人くらいしか居ません。今回2億円を調達して、挑戦する・失敗するための資金を得たと思っています。1000万円の投資であれば、20回挑戦する機会を得たわけです。「プラットフォームの上に、ユーザーがハッピーになるサービスを広げる」という夢を追いかけて、もう一度スタートラインに立った気持ちでいます。

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Q:mixiに参画した時にはすでに、プラットフォームの上にサービスを広げるという夢を描いていたのですね?

 そうです。 少し遡ってmixi参画の経緯をお話ししますね。 僕が社会に出たのは、2003年4月。大和証券SMBCで、投資銀行本部にてIPOの引き受け業務に携わったことから始まります。そこで、いわゆるモバイルコンテンツを中心にIPO引き受けに携わりました。当時はiモードが出てきて、着メロとかが全盛期の時代でした。僕は、2年目にDeNA、3年目にmixiなどのIPO引き受けなどに携わり、自分自身もインターネット事業が好きになってきました。

 と同時に、大企業の子会社のIPOや郵政民営化などの大型案件にも従事しました。ぶっちゃけた話、大和証券SMBCの中では、大型案件などが出世に必要なキャリアでもあり、出世コースに乗っていたと思っています。(笑) しかし、同世代の経営者がやっているインターネット企業、そっちの方がチャレンジングでワクワクして、面白い。証券会社で出世するのも悪くないかもしれないけど、経営に携われるのは何年後になるんだろう?などと思い退職を決意しました。

 2006年末に退職して、2007年1月にmixiに入社しました。 mixiを選んだ理由はいくつかあるのですが、一つ目は「全く新しかった」ということですね。それまでのインターネットサービスは例えばECであれば既存の店舗などの商行為をインターネットを活用することで価格優位性を出すといった既存産業のリプレイスが主流だったのですが、mixiはインターネットから産まれた、全く新しいコミュニケーションの革命であり、新しい世界を創れると感じました。

 話が遡るのですが、実はmixiの経営陣と初めて会ったのは、飲み会だったんですよ。2004年の夏でした。まだユーザーも10万人いなかったと思いますが、僕もmixiを利用していたので、SNSはポータルサイトに代わるインターネットの新しいベースになると思ってたんですよ。 それで、2005年初頭に「世界初SNSの上場」という提案をしました。まだユーザーが50万人も居ない頃です。プラットフォーム型で、すべての人がIDを持っていて、その上に乗るサービス運営企業をM&Aしましょうと提案しました。すると、笠原さんも「初めて証券会社でSNSの未来を理解してくれる人と出会えた」と言ってくれて、主幹事を引き受けさせていただき、後に入社に至りました。 なので、正確に言うと入社前の2005年からSNSのプラットフォーム化を描いてました。

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Q:mixi入社から退社までの経緯は?

 2007年1月に入社と同時に社長室を新設してくれて、何でも屋状態でした。 2008年の2月だったかな?コーポレート部門全体を統括することになりました。2か月・3か月ごとに自分の下に組織が増えていき、気づいたら一年後には全体を統括していた感じです。2008年6月に取締役に就任しましたが、常勤役員も3人しかいなかったのでファイナンス面だけでなく事業面にも多く携わりました。

 SNSがブログなどの他のサービスと大きく違うのは、ユーザー同士のリアクションが多いことだと確信してました。特に「あしあと」なんかは秀逸でしたね。あと、当時のインターネットは女性の居場所が少なかったとも考え、意識的に女性ユーザーが居やすい場所にしました。

 一方で、mixiが成長していく中で、組織も大きくなり優秀な人材も多く入社してきてくれました。そうなると、僕自身の役割としても、人的資源(社員)の配分を考えて仕事にレバレッジを生んでいくという事が多くなってきました。それはそれで意義があるし、不満があったわけではないのですが「この歳(当時30歳位)で・・・」という感覚はありましたね。

 もっと自分の手で事業をつくりたいという気持ちですね。並行して投資事業もやっていたので、ベンチャー投資をしている中でスタートアップの方々と接する中でいっそうに感じたのかもしれません。 それで、別に今のポジションにこだわっている訳でもないのでシンプルに考えて、2012年6月に退任しました。

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Q:これからについて

冒頭に申しあげたとおり、「プラットフォームの上に、ユーザーがハッピーになるサービスを広げる」という夢の実現ですね。 インターネットは、今までの産業をリプレイスする可能性があると思っています。たとえば、楽天やアマゾンで言うなら、賢く買う・安く買うというようなコモディティ化された商品を買う時代があったと思うんですよ。でも、mixiを紐解いていくと、ソーシャルの世界が広がっていくにつれて、消費であればモノを買うのではなく「ストーリーを買っている」方に進化してきたと思うんですよ。もしくは、自分が納得するポイントで買っている。

そのなかで、旅行はとてもわかりやすい分野だと思っています。JTBやH.I.Sで買う事が無くなるとは思いませんが、本当に行きたいところに行けているのか?と疑うことが多いと思ってます。予算と予定で検討して、なんとなく東南アジアに行っているというような事が多い。

本当に消費者の嗜好性を踏まえると、世界のどこかに、その人に会ったもっと素晴らしい旅行先あるのでは?と思うんですよね。例えば野外フェス・音楽フェスなんかがわかりやすいですが、友達を連れていくには気が引ける、でも行きたい。なんて時に、SNSで「このフェスに行きたい!」と、気が合う人と行けばとても楽しいと思うんですよ。そこに、コミュニティがあったり、コミュニティが出来上がったり、そのメンバーとまた違う旅に出かけたり。旅行は市場も大きいですし、そういうソーシャルの可能性が高い分野だと思っています。

trippieceは、まだ10人程度の組織ですので、2億という資金を調達はしましたが、事業の細部にまで携われる。実はmixiに従事していた時も、CFOという感覚はなかったのですが、もう一度、小さい事業を大きく成長させる道のりに訪れる、あの何とも言えない熱狂に携われると思うとワクワクしますね。

ただ、実際に0から1や100を創るのはクリエイティブで良いけど、めちゃくちゃ難しいんですよ。ところが、僕のように一度100を知っている人が、逆算的に1や10、100を創っていくというのは、少しはやりやすいかなと。僕に限った話ではないですけど、組織を大きくした経験を持っていたり、既に大きな組織を経験した人がベンチャーの成長に貢献するような社会がもっと進むと良いですよね。

リスク? リスクは・・・・・特にないんじゃないですか?

大きい会社に残ったって出世できないのもリスクだし。大きい会社の経験を積んだのだから、小さい会社の経験を積んだ方がキャリアとしてもリスクヘッジ出来ますから。 人の能力なんて大して変わらないですから。たくさん挑戦した人の勝ちですよ(笑)

 

 

 

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