「人生最大の敵は“退屈“」 株式会社FiNC(フィンク) 取締役COO 岡野 求

IMG_3330■略歴
株式会社FiNC(フィンク) 取締役COO 岡野 求
1983年9月2日生まれ。早稲田大学理工学部卒。新卒でガリバーインターナショナル関連のベンチャー企業に入社し、新卒2年目で経営戦略室室長へと抜擢。ガリバーインターナショナルの営業では入社3ヶ月でナンバー1の車両販売台数を達成し新人賞を獲得。その後、テラモーターズ株式会社の創業メンバーとして同社を業界トップへと導く。売上前年比3倍に貢献。2013年12月に株式会社FiNCに参画。現在に至る。

■大学にはほとんど行ってなかったんですか?
 そうなんですよ。大学は研究以外ほとんど行きませんでしたね。毎日毎日朝から晩までDVDを見る生活をしていました。当時好きな子がいてその子に振られた事もあり完全に腐っていた時期だと記憶しています(笑)将来の事もあまり深く考えておらずアルバイトで生活していけばいいかなぁ程度に考えていました。ふとしたきっかけでガリバーインターナショナル(以後:ガリバー)の役員にお会いする事になって「君は経営者を目指しなさい」と言われたんですね。毎日DVDを見て過ごしている人間からするとガリバーの役員なんて雲の上の存在じゃないですか。その人から経営は面白いと言われたら何かあるんじゃないかと思いますよね?それをきっかけに経営者になろうと決めました。
 役員とお会いしたのはインターン採用の最終面接のタイミングでその後海外事業における企画・マーケティングのインターンをやらせてもらいました。そのインターンはとても面白かったですね。僕は学生時代に演劇やバンドをやっていて文化祭的なノリが好きなんですが、インターンをやってみてビジネスも文化祭に近いモノがあるなと思いました。

 それをきっかけに真剣に将来の事を考えるようになって、就職活動の時に自己分析やるじゃないですか?それで毎日ワクワクしながら常にアドレナリンが出ているような働き方がしたいと考えついたんですよ。大企業で言われた事だけやるとか、意思決定までのスピードが遅いとかのそういう組織では働きたくないなぁと思っていて、ガリバーからもお誘い頂いたんですが最終の意思決定の際に断ったんですよ。ガリバーは当時既に2000人の会社でしたし、ガリバーで役員になる事は相当先になると考えていたので。しかし役員からガリバー関連のベンチャー企業を紹介いただきました。当時50名の小さい規模だったのでベンチャーを経験できると思い入社しました。そこでは経営戦略・人事などを主にやっていました。実はリーマンショックの時にこの会社がつぶれてしまい、ガリバー本体へ異動になりました。営業を1年経験しましたが人生で一番成長した時期だったと思います。営業として売上をどうやって作るか、お客様の満足ってなんだろうと毎日毎日考えて行動してました。結果的に新人賞をいただく事ができましたが、修行の時期でしたね。最初に入ったガリバー関連のベンチャー企業では、社会人になってすぐの時に経営戦略などを考える部署を任せて頂いたのですが、正直言うと失敗だったなと思っていて、ビジネスの本質(売上はどのようにつくられるのか、お客様はどのようなニーズを持っているのか)が全然わからない時に戦略を考えていました。検討違いの戦略も出していたと思います。ガリバー本体では営業を経験してほんとにめちゃくちゃきつかったですが、振り返ってみるとお客様を理解し、商売の意味を突き詰めたり、ものを売る力を養う本質的な1年だったなと思ってます(笑)
 その後縁があって創業メンバー(2人目)としてテラモーターズに入社しました。入社前の面接で4時間話をしていて変わった人だなーとは思いましたが大学も出ているし、MBAも持っていて、シリコンバレーに行っていた経験、電動バイク事業に1億円自身で投資しようと考えていたので変な人ではないだろうと思い入社しました(笑)
 仕事は営業開拓がメインでしたがお客様対応や工場管理、PRなど会社立ち上げの業務すべてをやっていました。当然ゴミ捨てなんかもやってましたよ。立ち上げ当初は誰も知らないベンチャー企業でしたが、色々なメディア戦略やアライアンス戦略で徐々に露出が増えどんどん有名になっていきました。どこがポイントになってどこがメディアに取り扱われるかという部分も経験含めいい勉強になりました。約3年半いた後に、前々から知人であった溝口(FiNC社CEO)に誘われて2013年12月に参画を決めました。

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■テラモーターズでもNO2のような位置ではあったと思いますがFiNCと対比させるとどんなところが違いますか?
 テラモーターズの時は徳重さんの大きなビジョンが既にあったのでそれを実現していくための施策をひたすらこなしていた感じですね。年齢も10歳以上離れていたので意思決定は徳重さんに任せて、どのようにしたら営業開拓がうまくいくか、戦略を実行に落とし込めるか、大きなビジョンに1歩でも近づけるかを実施していたと思います。
 今は二人三脚というか、CEOとは持ちつ持たれつの関係で意思決定の側にいる感覚ですね。溝口は創業者ですのでビジョンはありますし、彼には見えていて僕には見えていない視点もありますが、いつでも冷静に分析をして、意見する事を心がけています。COOはCEOとのディスカッションパートナーであるべきだと考えていて、すべての事に賛同をするのでは強い組織を作る事はできないと感じています。

 CEOの共通点としてはビジョナリーな事、良い意味でワンマンなところですが、溝口はバランスのいいCEOだと思っています。彼は自分がワンマンである事を理解していて、ワンマンで到達するレベル、到達できないレベルを知っているからこそ戦略的に意見を言ってくれる人を周りに置いているんだと思います。耳が痛い事も言われないと新しい視野や考え方ができなくなってしまうとわかっていると思うんですよ。

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■見える視野の違い。CEOとCOOの組織に対する考え方。
 溝口は高校卒業後からトレーナーをやっていて、お客様への提供するサービスにもの凄い思い入れがあり、サービスも世界一のものにするというのが前提となっています。なので社員に求める基準が高く、めちゃくちゃ厳しく指導をしています。できなかったらゲキヅメです。(笑)組織作りとしてゲキヅメをするCEOのような存在は確かに必要で、締めるときは締めないといけないじゃないですか、でもずっとそれをやり続けてしまうと社員が疲弊してしまいますよね。その時に僕が間に入って意識の統一を図ってます。僕は一つ一つ段階を積み上げていくような教育スタイルを取っているのでCEOとは逆ですね。
 CEOと社員では見えている視野が違うと思っていてCEOは1~10全部見えているので「10まで全部やれ!」というような高い基準を求めるんですが、社員は3までしか見えていなかったり5までしか見えていなかったりするんですよ。その時に10までやれ!と言われる。これが無茶ブリとか理不尽の正体ですよね。見えている視点、領域が違う。そこでCOOの役割として3までしか見えていない社員には4~10までのやり方を順番に一つ一つ段階を踏んで教える。そうする事でCEOの言いたかった事を通訳する事になります。一つ一つ段階を踏んで教える事で社員の理解も深まって見えてくる領域を広げる事につながります。それにこの無茶ブリがないとベンチャーのスピード感って出ないんですよね。だから必要なものなんです。
 COOを経験した事のあるCEOはバランスの良いCEOになれると思っています。COOの気持ちも理解しているのでケースバイケースで自分をカスタマイズできるのは理想ですね。今回は厳しくいこう、今回は柔らかくいこう、今回はCOOに任せようなど適時俯瞰的に見て最適な行動が取れると思います。その点溝口は前職で100人の組織を抱えていた時はCOO的なポジションにいたので理解は深いですね。私もゲキヅメする時がありますが、その時はCEOがお母さん役になって優しく接します。その時はめちゃくちゃ優しいですよ(笑)

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■経営者になるためには?ターニングポイントは「失恋」と「自己分析」
 すべての選択は自己責任という事を自覚する事と明確な目標設定が重要ですね。自己責任という事を自覚する事に関してはインタビューの冒頭に話した失恋が実は関係していて、ターニングポイントだったと思います。とても好きな女性がいて振られてから10か月ほど毎日毎日過去の事を振り返っていました。「あの時のメールでああ言っていたらこうなっていたんじゃないか」とか「もしこうしていたらこう場合分けされてこうなっていただろう」とかそんな事ばっかり考えていました(笑)最初の頃は「なんでその子は自分の事を嫌いになってしまったんだろう」と思っていましたがよくよく考えてみると自分が起こした行動が原因でその女性の気持ちが変わってしまったと思うようになったんです。自分が取った行動でその女性は「振る」というアクションを取る結果になった。これは突き詰めると自己責任じゃないですか。逆に言い換えると自分の行動を改めれば成功するという事ですよね。誰かに幸せにしてもらおうではなく、自分で自分を幸せにしよう。むしろ自分を幸せにできるのは自分しかいないじゃないですか。当時はとても大好きだった人に振られて落ちるところまで落ちたと思っているのであとは這いあがるだけなんですよ(笑)すべては自己責任です。
 あと明確な目標設定に関しては就活をしている時にとても考えさせられました。どういう企業に行きたいか、どのようなゴールを目指しているか。一人で考えているとすぐに行き詰ってしまうので経営者や尊敬する方々にアドバイスをもらいながら目標を立てました。目標を立てれば自然とそっちの方に向かうと思うんですよね。僕は自由に自分がやりたいと思った事業ができる事を目標にしてました。要は経営者になりたいと思ったんですよね。結果的に現在はCOOとして経営をさせていただてます。目標を設定する事で変わる事は多分にあると思います。予定としては今頃孫正義さんクラスになっている予定だったんですけどね(笑)