株式会社インサイト・プラス
取締役 COO 八木 正夫
1974年10月17日生まれ
慶應義塾大学理工学部応用科学科を卒業後、大手化粧品メーカーに就職。営業を2年経験し、まったく異業種のITベンチャーに転職。その後友人に誘われトラフィックゲート(現リンクシェア・ジャパン)に入社。営業マネージャー、営業統括、経営管理部長を歴任。2011年1月より現職。
Q:COOまでの道のり
私は大学在学中、応用化学科の応用錯体というテーマの研究室に所属していました。卒論は「新規ポルフィリン化合物とDNAの相互作用」というタイトルで、新薬の基礎研究に当たるテーマの研究をしていました。研究自体は楽しかったため、多くの仲間が大学院に進むこともあり大学院への進学という選択肢も考えましたが、それよりも早く社会に出たいと思い、就職しました。
新卒で入社したのが、大手化粧品メーカー。一応、大学で学んだ知識を活かし研究職につくはずだったのですが、結果営業職に。仮に企画や研究をするとしても、数十年の勤務を考えると、最初の2~3年は営業職で経験を積むべきだというのが彼らの発想です。ルートセールスを2年ほど勤め、営業のイロハや仲間を巻き込んで仕事をする楽しみを学びましたが、やはり裁量の大きさや変化の度合いからすると物足りないところがあり、IT系のベンチャー企業へ転職しました。ここで営業のマネージャーとして2年ほど勤めたのち、中学・高校の同級生でトラフィックゲート(現リンクシェア・ジャパン、以下TG)の取締役であった井上琢磨(現グルメイノベーション社長)に誘われ、TGに営業マネジャーとして転職しました。TGは当時3年目の会社で、ミッションとしては経営陣と営業マンの懸け橋になるような営業部門のまとめ役を仰せつかりました。
かなり自由にやらせてもらいましたが、逆に手助けや干渉はない環境でした。COOを「CEOが決定した経営方針に従った業務執行をする責任者」と定義するなら、ある意味でCOOの役割をしていたかも知れません。TGでは紆余曲折あり、営業統括部門の立ち上げから経営管理部長まで幅広く経験させてもらいました。
その後TGが楽天の完全子会社になったのを気に、当時TGの副社長であった当社社長の八木岳郎に誘われ、当社の創業に参画しました。インサイト・プラスはO2Oサービス「PoiCa」(各種ショップカードをスマートフォンで電子化し、位置情報や来店検知技術を用いて効果的な場所やタイミングで顧客とコミュニケーションし、リピート率を上げるためのサービス)や、バーチャル・プリペイドカードモール「precamo」(電子化したプリペイドカードのインターネットモール)等を中心に、ショッピングを便利にするサービスの運営を行っています。現在はCOOとしてビジネス面、営業面を中心に見ています。
Q:COOに就任して苦労したことや心がけていること
バランスをとることを心がけています。どんな役割であれ、組織で仕事をする以上、バランスは重要。どうバランスを取るかという点で言うと、僕の場合は、人との距離感です。具体的には話す内容や頻度、タイミングです。
COOという立場であれば、本来一番コミュニケーションを取って相互理解をしておかなければいけない相手はCEO。これはどんな環境でも変わらない事だと思います。TGの頃からの仕事ぶりは見ていましたし、将来どんな組織を創りあげていきたいと言ったビジョンなどはCEOの八木と話をしたり文字にしたりする機会は多くありましたので、現在はその点に関して毎日膝詰めで話合う事はありません。当社にジョインする時も「八木さん(CEO)がやるんならやるか」という感じで、違和感なくジョインしました。
先ほどもお伝えしましたが、TG時代は営業マネージャーや営業統括をしていてCOO的な役割を担っていました。入社当時はまったく知らない業界でしたが結果的に営業統括をしていました。マネージャーをやりながら現場を知るためにクライアントを持たせてもらって、クライアントに提案を行っていました。良い提案のアイディアが浮かばないような時は、部下に相談したりもしてましたね。翌朝のアポの提案を、夜中の3時に切羽詰って笑
お気に入りの漫画にキャプテンという漫画があって、中学野球の話なんですけど、野球の名門から転校してきた谷口君は最初、皆に期待されるんですが実は名門の2軍の補欠だったんです。しかしその高い期待に応えるべく影で努力を怠らず、結果的にチームメイトの人望を集め、自然に皆を引っ張っていきチームを優勝に導く、というストーリーです。TGに入社してからのミッションは経営陣と営業マンの架け橋なので、自ら行動を示して、部下に背中を見せて徐々に信頼を得ていきました。現在当社のCOOとしても、自ら行動する事を心がけています。
Q:COOとは何か?CEOとの役割分担等
これは組織の大きさや状況によって変わってくるのではないかと思います。一般的にはCEOの決定した経営方針を実践していくのがCOOと言われていますが、個人的にはCOOとはCEOにとって信頼のおけるNo.2のような存在であるのが理想的だと思っています。COO同様、組織にとって重要な役割としてCFOやCTO等ありますが、特にCOOはCEOと一体となって動ける状態が組織にとっては好ましいと感じています。
現在当社は10人に満たない組織で、サービスも顧客のニーズをくみ取りながら構築しているところでして、実は明確に役割を定義して活動しているわけではありません。会社にとってやるべき事をタイミングによって優先順位をつけ動いていくスタイルでやっていますが、なるべくCEOの言動を汲み取り動くようにしています。
先日出店をした展示会は私一人で設営から対面の営業まですべてやりました。終止一人でしたので寂しかったですが。笑 小さい組織なので、会社にとって必要だと思えば何でもやりますよ。
Q:COOを目指す方に向けてのメッセージ
COOをCEOのNo.2と定義するなら、まずはこの人だと思えるCEOを見つけることですね。すぐにそれが難しい場合、社内の遠くない関係性の人で、自分にとってのNo.1をみつけることをお勧めします。必ずしも直属の上司である必要はないですが、上司であることの方が望ましいでしょう。この自分で決めたNo.1に対してのNo.2になれるよう努力することは、その人の考え方を理解し、組織やグループとして実践していくことになるわけですから、自ずとCOOを目指すことに繋がっていくのではと思います。
また、もし小さな組織なのであれば、具体的な人やポジションのイメージは付きやすいと思いますので、COOとして「何がしたいのか」「どうしたいのか」をイメージしておくと良いと思います。やりたいことが本当にCOOでなければできないのか、今のポジションでそれを行うにはどうしたらいいか、常に考えて行動する。あるいは、自分の目指すCOOの●●さんなら、こんな時どう判断して行動するかを考える。これを続けて行けば、役割は後からついてくるものだと思います。こういった考えやイメージは行動に一貫性を持たせ、見てくれている人には必ず伝わります。
「宣言する」「手をあげる」っていうのも一つの手かもしれませんね。積極的に手をあげて「やらせてください!」という人には何かあったら任せようかなと思いますよね?例えば子会社を作る時に社長を補佐する人材がいなかったら「あいつ前からやりたいって言ってたな」と印象に残っていれば抜擢される可能性もあるじゃないですか。今いる環境で積極的に宣言してもつぶされるような環境ならやめてしまった方がいいかもしれません。サイバーエージェントの曽山さんの著書にも、「抜擢された人を分析すると、実績を出して抜擢されたタイプと手をあげて抜擢されたタイプがいるが、圧倒的に手をあげたタイプの方が多い」と書かれていました。手をあげる・宣言する事にもハードルはあるので、手をあげる・宣言する時点で尋常じゃない積極性があるし、宣言するまでに相当な努力をしてきていると思うんですよ。
私の場合は異業種への転職だったので、それぞれの業界での経験・実績はゼロでした。初めての挑戦ばかりで苦労しましたが、その分面白い。選択をするのに迷ったらアグレッシブな方に行きますね。TGの時に経営管理部長を任された当初は専門知識もないですし、営業経験しかないのでさすがに無理だと思いました。証券会社対応や管理部の業務で結果を出せるようになりましたが、実を言うと冗談だと思っていたので、オファーがあったときは3回断りました笑
ありがちなのはタイトルや役職に拘っているつもりだが、現在のポジションや環境を理由に制限をかけてしまうこと。大事なのは理想をイメージし、行動し続けることです。