「転職できず、給料も上がらない」という、キャリアの行き詰まりをどのように回避するか。

NHKのクローズアップ現代にて、40代、50代の転職が取り上げられていた。

40代・50代でも遅くない! 転職市場は“おじさん”の力を求めている

転職市場でささやかれてきた「35歳の壁」。その状況が大きく変わろうとしている。企業の人手不足の波がマネジメント層にも広がり、40代50代の転職者が増加しているのだ。

45歳の化粧品メーカー課長が、コンタクトレンズ・ケア用品メーカーのマーケティング部長に転身。大手外食チェーンで13年間店長だった43歳は不動産会社に転職し、関西エリアの責任者に抜てきされた。

引かれたレールが見える。行き詰まりを感じている。そんな、40代50代のあなたに、転機が訪れるかもしれない。

一見すると、転職を考えているおじさん達に希望を与えるいい話に見える。

だがすぐに、NHKも残酷な番組タイトルを付けるな…と思い直した。
なぜなら番組が紹介しているのは、40代、50代でキャリアが行き詰まっている方に垂らす蜘蛛の糸ではなく、どこまでも現実は厳しいということを突きつけるものだからだ。

実際には、キャリアコンサルタントは記事の中で

人手不足が激しくなる中で、基本的には若手を採用したいが、若手だけでは足りないという、消極的なミドル採用というケースが増えている。結果的に『35歳の壁』が『40歳の壁』になりつつある状況です。

と述べている。つまり、「おじさんの力を求めている」というタイトルは明らかに釣りだ。

もちろん事実として、「おじさんが欲しい」と考える会社も中には存在する。
私もそのような経営者に実際にお会いしたことがある。
その経営者は、「人生を変えたいという人を助けたい」と言っていた。

それ自体は素晴らしいことだ。

しかし実際に、多くの企業が欲しいのは「20代、30代の伸びしろのある人材」もしくは「40代、50代の十分な実績を持つ人材」のどちらかだ。

これは昔から変わらない。
例えば「論語」の中で孔子はこのように述べた。

四十、五十になっても、徳を以て世に聞えないようでは、もうその人の将来は知れたものだ。
(子曰く、後生畏るべし。焉んぞ来者の今に如かざるを知らんや。四十五十にして聞ゆるなくんば、斯れ亦畏るるに足らざるのみと。(子罕篇))

参考:論語物語 下村湖人

40代、50代になるまで、仕事の実績を何も残せていない人の将来は知れたものである、と多くの人が考えるのは当然のことだろう。

現在、大企業は人余りの状況で、リストラ予備軍は500万人に上るという。
彼らはいわば、「キャリアの行き詰まり」に追いやられてしまった状態の人々だ。

「弱者」の定義を「選択肢が無い、もしくは極端に少ない人々」とすれば、彼らは残念ながら「弱者」である。そして一旦「弱者」になってしまうと、そこから抜け出すのは自力では難しい。

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そこで、20代、30代では将来起こりうる「転職できず、給料も上がらない」という、キャリアの行き詰まりをどのように回避するか、が課題となる。

そのために必要なのは、「給料」と「人材の市場価値」がどのように決まっているのかを知識として知っておくことだ。

ここでひとつ、問いを出そう。
「給料」や「人材の市場価値」はどのように決まっているか?と仮に質問されたとしたら、
あなたはどのように答えるだろうか。







おそらく「スキル」や「経験」で決まる、と答える方がもっとも多いだろう。

それも完全に間違いではない。
しかし、そのような認識だけでは「キャリアの行き詰まり」に繋がりやすい。

真に重要なのはスキルや経験ではないのである。
では何が重要なのか。

 

実は、「給与」や「人材の市場価値」をもっとも決めるもの、それは「どの業界で仕事をしているか」だ。

 

例えば、製造業や外食産業で働く人の給与は、一般的に金融業で働く人のそれより低い。
これは製造業や外食産業で働いている人のスキルが低いのではなく、業界自体の生産性が低いからである。

つまり、斜陽産業や生産性の低い産業に従事している人は、いくら努力して経験を積み重ね、スキルを身に着けても、給料が上がりにくく、ポストも限られる。

つまり、あまり報われない。

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マーケティングを少しでも勉強したことがある方なら、「ターゲティングの重要性」がビジネスにおいていかに大切な考え方であるか、は説明するまでもないだろう。
ターゲティングとは、「どの市場を狙うか」というマーケティングにおける最上流に位置する考え方である。

市場の狙い方が適切であれば、多少商品に力がなくても商売はうまくいく。
逆に市場がない場所でいくら良いものを作っても、商売は苦しいばかりである。

このことは「労働市場」というものを想定した場合にも当てはまる。
つまり、「自分の労働力をどこで売るのか」が自身のキャリアを築いていく上でもっとも重要な要素となるのだ。

20代、30代は、この「自分の労働力をどの市場で売るか」に非常に敏感でいるべきであり、自らが属する産業に未来がないと思うのなら、お金と人材が集まる産業にすぐに移動しなければ、そこで飼い殺しになる可能性が高い。

見るべきは自分の経験やスキルではない。
それらをいくら見つめ続けても、そもそもマーケットが間違っていれば、キャリアの行き詰まりを
防ぐことは出来ない。

「売れない商品」を抱えている経営者は、商品改良ではなく、まずは売る場所を変えてみるべきだ、というアドバイスと同じだ。

キャリアの行き詰まりを防ぐためには、より広く全体を見わたすマーケット感覚を養い、どの産業に
未来があるのかを見極め、早めの決断を行うことが大切だ。