営業対昨年利益186% 経常対昨年利益189% 当期対昨年利益202%
結婚相談サービス、というアナログ的なものにITとシステムを融合させ、仕組化。
合コン、婚活パーティー、ソーシャル婚活メディア、結婚相談所まで、様々な婚活サービスを総合的にかつ複合的に展開。その独特な事業形態で2012年12月にJASDAQ上場を果たしたのが株式会社IBJ(アイ・ビー・ジェイ)だ。
人をつなぐだけでもダメ、売上至上主義でもダメ。目に見えないサービスと経営バランスを武器に躍進する会社の“カン”とは?
■「ブライダルネット」を起業したきっかけは?
石坂:もともと存在していた“出会いの掲示板”がスタートです。某投資会社の協力で資金調達し、日本初のインターネット結婚情報サービスという切り口で事業化するにあたり、ご縁があった私が取り組むことになりました。人を繋いだり、出会いの舵を取ったりすることが多かったので向いていたんですね。
ネットで展開していない分野でナンバーワンになれて、情報課金ができるというのがポイントでした。仕入れもなく在庫管理はいりませんから、ビジネスとしても魅力でしたね。
個人的には、社会に貢献できてお客様の支持を得られ、人生をかけられるサービスを手掛けたいという思いがあったのも大きかったです。人とかぶりにくい事業なので、好奇心が刺激されたというのもあります。
ネット決済や集客さえ整えれば成功すると思っていましたし、婚活サイトから人の流れができていたのも強みになりました。
■2003年、yahooからの出資を受け入れたことについて
石坂:当時は黒字化していたものの、マンションオフィスで5、6人でやっている小規模な会社でした。個人情報管理というものが、かつてとは違う次元で重要さを増してきていて、これだけの個人情報の束を扱うのに、これまでの管理レベルではいけないと感じていました。そんな折、結婚情報サービスを新規事業として考えていたyahooに声を掛けて頂き、ご縁を頂いたというのが背景です。
yahooからの条件は、子会社の社長になることでした。本当ならアドバイザーや、開発企画委託でも良かったんですが、ご縁ということで100%子会社になることに。そこには、自分としてもこだわりがなく(笑)。それより自分が死んだ後も、作り上げたサービスが残ることに価値を感じますし、yahooという日本一の媒体で自分のサービスが実現できるならその方がいいやと判断しました。それは今も変わらない思いです。
■運営にあたり、yahooとの関わり方は
石坂:日本を代表するIT大企業の中で多くのことを学ばせて頂きましたし、個人情報管理や制作や開発の進め方は大いに影響を受けました。一方で代表権はありましたが、やはり大企業子会社の社長というのは、当たり前ですが、それなりの制約はあったことは否めません。
元々新卒で入社したのが大企業(銀行)でしたので、大組織の良いところも悪いところも、相応に理解できる余裕はありました。そこで「どんな状況や環境でも出来うる最善の方法をとり最大限のパフォーマンスを出す。」ということだけを考えて、思い通りにいかなくても淡々と粘り続けました。実際のところ子会社は後回しにされがち(笑)なんですが「婚活サービス」の可能性は確信していましたし、yahooのトラフィックに頼らずともいけると思っていたので、yahooのトラフィックと独自マーケティングを併用して、事業を安定収益化させました。
■やがて独立したきっかけとは
石坂:ネット完結事業がyahooグループでの正しい事業のあり方でしたが、一方でネットの限界も感じていました。お客様がもっとも望んでいるのは活動することではなくて、成婚することなんです。成婚率の高いサービスはネット完結サービスでは難しく、私はかねてより、リアルなサービスとの組み合わせを考えていました。それが独立のきっかけです。この業界に新しいスタンダードを築くには、ネットの力を最大限活用しながらも、昔ながらのリアルなサービスを組み合わせた新しいサービスモデルが求められていることを確信していました。従来の同業他社サービスは、入会数と売上が指標であり、手間とコストのかかる成婚に至るまでのケアは不足していました。しかし成婚数を上げて満足度を高めない限りお客様には支持されないし、永続的な発展ができません。
また従来の大手結婚情報サービスは全国直営多店舗展開スタイルでしたが、私は大都市は直営店舗、地方に関しては、地域愛と地元事情に詳しい地場の結婚相談所とネットワークを組むスタイルを選択した結果、短期間で日本最大の会員基盤を実現しました。
それを支える大きな要素は社内に制作開発チームを抱えることです。外注だと、きめ細かいシステムを正確にスピード感をもって、自分の納得いくレベルに至らないと思ったからです。最初はコストもかかるし固定費が増大しますが、同業他社に対する差別化というのは凄まじく大きい。この業界、開発をすべて内製化しているのは多分うちだけです(笑)
だからうちは半分はIT企業、半分はサービス企業なのです。会社の付加価値をあげるのにも役立ちましたね。
■前年比150%以上、営業利益で185%もの成長を成し遂げたきっかけとは
石坂:6つの事業部が全て成長フェーズに入っていることです。複合的で伸びしろの高い婚活サービスを実現し、優秀なスタッフと管理職を組織化したことがきっかけですね。
また創業当初から在庫と仕入れがないので、売上のほとんどが粗利なのも安定のポイントです。損益分岐点を超えた時点で利益に直結しています。
業務をシステム化していくことは大切です。労働集約的な仕事はなくならないものですが、できるかぎり仕組化、システム化をしていかないと業績の掛け算はあり得ない。社員の負担を増やさずに付加価値を上げるためにも常に心がけています。
そして企業文化として“長く働ける環境”を実現したいところです。成長過程の会社は業務も大変なので一般的には離職率は高いのですが、うちは去年ぐらいからサービス業の平均離職率をかなり下回るようになりました。ただ単に給料や待遇をよくするだけではだめで、やっぱり帰属意識を高めるということに尽きると思います。となると新卒の採用も今後欠かせませんし、次世代の管理職や役員を育成できるイメージを常に持っていなくてはと。社員の期待値を上げる人事制度の充実など、長期雇用のための工夫は、あらゆる面で図っていきたいですね。
■5年後、10年後のビジョンは?
石坂:実は、全社員に手帳を渡しています。経営方針や中期経営計画、予算のほか重要なことが書いてある社外秘扱いのもので、常にこれを見て、会社の目標とあわせて自らの目標を明確にしようと伝えています。
去年から換算して5年後の2017年には今年の倍、20%成長を継続して50億円、10年後はその倍以上の規模になっていきたい。
また、日本の婚姻数は年間70万組あります。その1%の7000組を「IBJ」グループで産み出そうというのが中期経営計画の大きな目標です。現状、その3分の1程度ですが、きちんとしたアクションプランであるとか、その過程におけるマイルストーンも設定して行っていくつもりです。そうなるには、理念を全員で共有すべきなのでその最初のツールとしてこの手帳があります。
■今後、求める人材は?
石坂:婚活事業をやりたいという人材よりも、社長・副社長と共にライフデザインに関わる新規事業を創出したいとか、経営に近いところで働きたいといった希望をもつ、サービスとITに精通したい将来のマネジメント人材を求めています。5年後には婚活事業は安定成長しつつも、場合によっては婚活事業売上を上回る新たなライフデザイン事業を実現したい。多くの問題解決に取り組みながら、共に成功事例を築ける人材が必要ですね。
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