「人から学び続ける意欲」 セカイラボ・ピーティイー・リミテッド 代表取締役COO 大熊一慶

SKL_top■略歴

1987年8月2日生まれ。東京都出身。慶應大学商学部商学科卒業。 2011年4月1日、モンスター・ラボに入社。 在学中よりベンチャー企業への就職を望み、モンスター・ラボでエンジニア、ビジネスプロデューサーを歴任。国内の法人と海外の開発会社のプラットフォーム事業として立ち上げる。2014年2月にセカイラボ・ピーティイー・リミテッド代表取締役COOに就任。

Q:大熊さんがセカイラボを立ち上げるまでの経緯についてお聞かせください。  

新卒でモンスター・ラボに入社して、最初はホームページの制作やPHPの開発などに携わっていました。そして、半年ほど経った頃から、法人向けのアプリやWebサービスの企画・営業を担当することになりました。新しい事業を立ち上げようとしているクライアント企業から「こういったサービスを作りたい」という依頼を頂き、具体的な内容について企画と営業の視点から提案するというものです。また、モンスター・ラボは中国に開発子会社があるのですが、その海外の子会社のディレクションのような業務にも携わっていました。  僕は、その法人向けの営業とオフショア開発の経験を通じて、国内には開発エンジニアが絶対的に足りていないことに気づきました。国内のエンジニアが足りないのであれば、海外のエンジニアの力を借りればいい。そこで、日本人エンジニアに発注するには予算が足りなくて依頼できない、またはエンジニアがいなくてサービスが開発できないという法人向けに、海外に開発を依頼しやすいようなプラットフォームを作ろうという話になりました。それが2012年の冬です。そこから鮄川(いながわ セカイラボ・ピーティイー・リミテッド代表取締役CEO、株式会社モンスター・ラボ代表取締役社長)と2人で企画を練り始めて、全社会議でセカイラボの構想を発表したんです。この会議は、企画や新規事業を誰でも発表することができ、全社員の半数以上が賛成なら可決されるシステムです。そこでほとんどの社員が賛成してくれたので、実際にスタートすることになりました。もともとは1つの事業部としてやろうとしていたのですが、そのまま僕が事業責任者として人員のアサインや予算取りをして、子会社としてセカイラボを立ち上げることになったんです。 SKL_1

Q:セカイラボをモンスター・ラボの子会社として立ち上げたのはなぜですか?  

プラットフォーム事業だからです。実はモンスター・ラボも開発事業をやっていて、セカイラボにも登録しています。外部から見ると、同じ会社内でプラットフォームを運営していると、公平性を欠くような印象を受けますよね。子会社にしたら印象が変わるかというとそこは疑問の余地があるのですが(笑)実際に、モンスター・ラボはセカイラボのプラットフォームに乗っている一企業に過ぎませんし、少なくとも事業部として同じ会社内でやるよりはいいだろうということで子会社化することにしたんです。それにあたって、もともと事業責任者だった僕がCOOに、全社の代表である鮄川がCEOに就任しました。

Q:CEOとCOOの役割分担はどのようになっているんでしょうか。  

鮄川は全体的な戦略を、僕は現場をという感じです。鮄川が打ち出した戦略を、僕が実際に現場で執行していきます。実は鮄川がもともとコンサル出身で、実務で身につけたスキルをもとにモンスター・ラボのCFOを兼務しているんです。ですから、財務的な面に関しても鮄川の存在は大きいですね。うまくバランスを取りながら、それぞれのタイプに合った役割を担っています。

Q:お二人はそれぞれどのようなタイプなんですか?  

鮄川は締める時はしっかり締めるタイプで僕はどちらかというとやわらかい空気を作るタイプですかね。わかりずらいので具体的に言うと(笑)僕は、会社がスタートアップの時期は、失敗したことを他人に言えないような空気になったら終わりだと思っているんです。失敗しないとわからないことがたくさんある分、失敗から学んだことを次に活かすというサイクルが重要だと思うからです。ですから、どんなに小さな失敗でも言いやすい空気を作るよう心がけています。 鮄川は考え方や話し方が論理的ですね。。コンサル出身でベンチャーを立ち上げたという珍しいタイプの人なので、ちょっと独特なところはあります。たとえば、会話を始めるときにまず三本指を立てて、「3つあって・・・」という言い方をすることが多いです(笑)

Q:もともと社長と社員という関係だったということですが、とても仲がいい印象を受けます。  

そうですね。比較的仲はいいと思います。実は、僕が新卒で入ったときはモンスター・ラボは全社員が30人弱くらいの小さな会社だったので、それこそ営業の現場にも鮄川と2人で行くことも多かったですし。社長と社員という関係でしたが、一緒にいる時間がとても長かったので、距離は自然と縮まっていきましたね。 SKL_2 Q:セカイラボは独自のサービスを展開されていますが、競合として考えている企業はありますか?  

率直に申し上げると、少なくとも日本にはプラットフォーマーとしての競合はいないと思っています。あえて言うなら、プラットフォーム事業ではなく開発会社ですね。大きなシステム開発の会社や、アプリ開発の会社が競合にあたると考えています。国内にはフリーランサー向けのプラットフォーム事業を展開している会社は複数ありますが、法人向けであるセカイラボとはターゲット層や規模が異なります。また、企業と海外のエンジニアの見積もりマッチングに特化したサービスは国内にもありますが、セカイラボはマッチングだけではなくプロジェクトにも深く入っていきます。ディレクターのアサインサポートなど、プロジェクトが成約してからもサポートするという形態をとっているので、そもそもモデルが違う気がします。そういった意味でも、今のところ競合はいないですね。

Q:開発会社の絞り込みはどのように行っているんでしょうか。  

日本語が話せることが第一条件で、あとは実績です。具体的には、日本企業に対しての納品実績などです。基本的には、実際にお会いして直接お話をさせていただいています。ただ、現在のやり方を続けていくだけでは将来的に牌が少なくなるので、日本語以外の言語にも対応できるような仕組みも整えようと考えています。それができれば、本当に世界中のエンジニアに委託できるプラットフォームになりますからね。

Q:現在、セカイラボの社員は何名ですか?  

10名ほどで、国籍はバラバラです。アメリカ人と韓国人のエンジニアがいますし、スウェーデン人が入ることも決まっています。今後海外で展開していくにあたって、日本人だけの価値観でやっていくには発想に限界がありますし、価値観が色々と混ざり合うことでまた面白いものが生まれると思うので、外国人の採用は積極的に行っています。

Q:大熊さんはもともと海外に興味がおありだったんですか?  

もともとはそこまで海外志向ではありませんでした。就職活動中はメーカーや大手企業を受けて内定ももらっていたんですが、正直つまらなさそうだなと思っていました(笑)。そんな時に、DeNAの南場さんの講演を聞く機会があって、学生に対して「大手には行かずにベンチャーに行け」という話をしていました。内定先は肌に合わない感じがしていましたし、それまで自分の中にベンチャーという選択肢がなかったので、もう一回就職活動をやり直すことにしました。 そこで、スタートアップ企業を探していたところでモンスター・ラボに出会ったんです。すでに中国の子会社は展開されていたので、海外志向というところも興味深かったですし、何より鮄川のビジョンが魅力的だったのが一番大きかったです。実はその時モンスター・ラボの新卒採用は締め切っていたんですが、ベンチャーなら大丈夫じゃないかなと思って(笑)コンタクトを取ったら、会っていただけることになりました。

SKL_3 Q:経営者に大切なのはどんなことだと思いますか?  

自分への投資を惜しまないことだと思います。僕の場合は、ベンチャーという現場と合わせて、ビジネススクールにも通っていました。ビジネススクールでは、もちろん有用なスキルも身につきましたし、人から学ぶことも大変多かったです。大きなことを成し遂げようとしている人が多く集まっているので、非常に刺激を受けましたね。例えば、ワークライフバランスと言っている人ばかりのコミュニティにいると、自分も同じような考え方になってしまうと思うんです。それも決して悪いことではないですが、志の高い人たちのコミュニティに身を置く、足を運ぶということは成長のためにはかなり重要なことだと思います。 それに、人から学ぶというのは僕自身のスタンスでもあります。どんな人からも学ぶ部分はたくさんあると思うので、決して自分はすごいと思い込まない、人を下に見ないということを心がけながら、人から学ぶ意欲を常に持ち続けていきたいですね。 また、ビジネスを体系的に学ぶ術としてはさまざまなツールや教育機関がありますが、勉強だけでは学びきれないこともたくさんあります。ただ、勉強と現場での経験を組み合わせれば、相乗効果である程度の成長はできるはずです。ですから、正直なところ貯金をするよりもその額を自分に投資したほうが将来的なリターンは大きいと思います。ベンチャーではなくても現場はあると思うので、自分に投資して身につけた様々なスキルをいかに現場で活用できるかでしょうね。