株式会社いい生活
代表取締役副社長COO 北澤弘貴
1968年4月5日生まれ
1991年3月に早稲田大学理工学部電気工学科を卒業し、ゴールドマン・サックス証券会社に入社。そこで出会った同僚と2000年に株式会社いい生活を設立し、代表取締役副社長COOに就任。
COOまでの道のり
高校の頃から30歳、もしくは就職10年目には独立起業、どうせなら将来上場できるような会社を作ろうと思っていました。「起業してから3年間は給料なし」という事態も想定していた為、十分な収入を得られる企業で、かつ、日本だけでは経験できないことを得るために、世界的に評価されている会社で働こうと思い、就職したのがゴールドマンサックス(以後GS)。当時日本の普通の大学生は誰も知らないような会社でした。
もともとアメリカが好きだった為、大学3年の時にアメリカ大陸をオートバイで横断しました。全長12,500km、約1ヶ月半で走りきりましたね。僻地にも立派なハイウェイや橋があって、アメリカの社会資本の凄さを感じました。途中で、頼まれたお土産物を買うために寄ったニューヨークなどのブティックの美女店員達に、興味本位で聞いた質問。「ボーイフレンドはどこに勤めているの?」と聞くと、自信満々に「ゴールドマンサックスよ」と、数人から同じ答えが返ってきました。ニューヨークが好きか嫌いかは別として、そこには世界のビジネスが集中していることも実感しました。
それで日本に帰国後、早速GSを調べてみると、東京に支店があり、社員はハーバードとかスタンフォード、MITをはじめ世界の一流大学院を卒業した人が入る会社と判明しました。就職活動は大学4年の夏休みが本番の時代、一足先に大学3年の1月にGSの学生インターンシップ・プログラムに参加し、これだ!と確信しました。インターンシップ終了後、当時の東京支店のあったアークヒルズ(赤坂)の地下駐車場にある時間外通用ドアに朝6時に行って、GSの社員を待ちました。ソロモンブラザーズだったり、バンクオブアメリカだったり外資系の金融機関の社員がたくさん入っていく中で、しばらく待つとGSの人を見つけ「インターンを経験してGSに入りたいと思います!」と伝えると、「君、面白いね!」と社内に招いてくれました。今では考えられませんね。すぐに面接をして頂き、当時の株式部門の外人のトップに「君は優秀か?」と聞かれ「優秀です!」と勢いで答えました。日本ではそれなりの大学の理工学部で学んでいること、さらにはアメリカをバイクで一周したことを話しました。この話は結構インパクトあったようです。その日の午前中に2,3人の社員を紹介してもらい、すぐにメンター(世話役)をつけてくれました。丁度GSが新卒採用を本格的に始める時でした。訪問や4,5人との面接を経て、2月の中旬くらいに内定をもらい、その場でオファーレターにサインしました。
GSの考え方は“Client Comes First”(顧客の利益こそが第一)であり、また、よく社内で“Long term greedy”という言葉を聞きました。直訳すると、「長期的に貪欲になれ」ですが、そういう感じではなく、「顧客とのビジネスでは目先の大きなお金を狙うな。そういう場合、金融では、目先は儲かってもお客様は損をすることが多く危険な取引だ。顧客と長く付き合ってもらい、そして長期に渡りサービスの対価としての報酬をもらおう」というものでした。非常に共感しました。GSでは、インチキは絶対にしませんし、できませんでした。会社が未公開のパートナーシップで、失敗すれば役員の資産がダメージを受けます。当然コンプライアンスは徹底されています。またビジネスの相手はプロの機関投資家だからそもそもインチキは通用しません。目先の1年で100億円ではなく、信頼を得て毎年5億円を頂く。10年、20年付き合って信頼を得て仕事をもらい、利益を上げていこうという文化です。そのためには途中で縁が切れないようにと努力をするものでした。
GSの採用は特徴的で、中途だろうが、新卒だろうが面接は一対一で行います。それも人事の面接ではなく、働く部署の人達との面接です。つまり面接官は自分の仕事の時間を割いて面接を行います。GSを受験する人とは当然金融に興味があるわけです。将来、GSの社員、金融業界でのライバル会社の社員、顧客であるファンドマネージャーや、はたまた事業会社の財務部員になる可能性がありますよね。相手がどの立場に将来なるかわかりません。間違いなく言えることは、失礼な面接をしたら敵を作る事になるので、各自、全力で質問には答え、厳しい質問もして面接をしていました。
あと面接官(社員)は、最終結果が出る前に面接した候補者の評価の共有は絶対にしませんでした。共有をすると、その後の面接官は先入観をもってしまいます。人間だから、自分より上の立場の人や同僚のコメントを聞くと、何らかの影響を受けるものです。先入観ではなく、働いている人が一緒に働く可能性がある人を自分で正当な評価をしてこそ、最良な採用ができます。以上のような顧客とのビジネスの考え方、採用のあり方などは、いい生活において も引き継いでいます。
艦隊の艦長、マクロとミクロの視点で
いい生活を創業来、毎年毎年、仕事においての負荷は同じですね。振り返ってみると楽しい事ばかりですね。その時その時、すべき事をすべき時に粛々、淡々とやってきました。振り返ってみると楽しい事ばかりですね。
いい生活はGSの同僚4人と立ち上げた会社で、当時から4人全員が代表取締役。株の持ち分も平等に、すなわち、責任を平等に振り分けました。先にもいいましたが、元々30歳か入社10年目くらいまでに独立起業を目標としていましたから、31歳という絶好のタイミングでした。実は他の仕事の話もあったのですが、現CoCEOの前野からのいい生活の設立の誘いに、「その話、のった!」となりました。自分が入るときに出した条件は「営業系の仕事を担当すること」と「責任、株の持ち分は平等」。もちろん前野の回答は、その場で、「当然」というものでした。決して独立起業は一人でやらなければいけないわけではなく、中村(CEO)も前野(CO-CEO)も塩川(CFO)も創業メンバーは私から見て優秀な人しかいません。物事、どうせやるなら自分から見て優秀な人達とですね。
創業前は、具体的に何をやろうか?と言う状態でしたが「インターネットを使って何かをやる」ことは決めていました。マクロとミクロの視点で色々議論した結果、目を付けたのが不動産に関わる事業でした。特に若い人だと収入に対して家賃が占める割合は20%から30%ですよね?これはかなり大きい出費です。借りるにしろ、買うにしろ、消費者にとって住まい選びは大きな決断です。不動産会社にとっては、これら部屋を借りたい、買いたいというお客様もいれば、貸したい、売りたいという資産家・オーナーと呼ばれる方もお客様としています。つまり、不動産会社の提供するサービスそのものが人にとって必要不可欠なもので、かつ、大きな金額の資産を取扱うものなのです。
当時のインターネットの基本的な技術とサービスそのものにまだまだ改善・進歩する余地が大いにありました。その時代に、これからは、引っ越しをする時に、わざわざその土地に行って、物件を見に行かなくても、まずはインターネットを使っていろいろ物件の細部を画像でチェックして地図で場所を確認して、ある程度納得して絞り込んでから不動産会社に問い合わせして現地に行くというように不動産を探す時代が来ると思いました。要するに不動産業は情報産業であると捉えて、そこで最新のITを駆使して、不動産会社にとっても消費者にとっても有益なクラウドサービスを提供するビジネスで勝負することとしたのです。
COOとしては、日々いい生活の舵取りをしていく上で他の役員同様、「マクロの視点とミクロの視点」を大切にしています。例えばマクロの視点でいうとマーケットがどう動いているか注視しています。世界経済の動向、アメリカの株式、為替、金利の動向に関する重要な情報などは、前職からお付き合いが続いている人たち、その人達を通して新しく知り合った人達が、情報を共有してくれるからとても助かっていますね。マクロをしっかりみれば、自分たちがサービスを提供する市場の状況を予想、分析することができます。当社のお客様は不動産業界ですが、今回のアベノミクスによる影響は多分にあります。人口の減少、少子化、高年齢化のトレンド、電子デバイスの変化など、大きな流れを見て、それぞれの業界がどうなるのか、不動産業界にいる企業はどうすべきかを判断して、当社としての方針の見直しや目先とるべきアクションを定める必要があります。
ミクロな視点に関して言えば、私の管掌する営業部隊の一人一人のビジネスでの行動も当然把握するように努めるし、態度や雰囲気の変化も見ます。目標に向かって四六時中一緒にいる仲間の変化が見えないなんて、それは仲間じゃないですよ。顔色が少し変わったとか挨拶に元気がないとか。営業からくるメールや活動報告書なんかも、ほとんど全て目を通しています。文章から活動の進捗が明るいのか、暗いのかなども感じ取れます。日々の活動を把握していないと少しの変化に気づくことはできません。最近は組織もしっかり出来てきて、大きくもなったので、すべてのメンバーを自分自身で見ることは無くなって来ましたが、そういう細かな事を見ようと心がけています。
創業メンバーが今も一緒にいて、一人一人がちゃんと役割を担い果たしているから出張もできる。一緒に働く仲間が中途半端だったら現場から離れられないですよね。
COOを目指す方へ
いつも好奇心・探究心を持って一生懸命働きなさい!20代、30代は若い。とにかく体力のあるうちに知識と経験を積み重ねていく期間です。新しいこと、新しい経験に出会えばラッキーと思って調べるのです。40代50代になった時、しっかり知識や経験を積んでいる人と積んでいない人を比べると、その時点でも、その後も仕事の質も量も格段に違ってきます。十分な経験と知識を持てば、若い人たちがその知識や経験を求めて寄ってきてくれます。その若者達こそが新しい発想や情報を持ってきてくれます。
与えられた仕事をする事は誰でもできます。その時に、なぜ、この作業、仕事があるのかなど好奇心を持つべきです。そこには必ず理由があります。成功するためには+αで何か違う事をやらないと成功しません。
このように、好奇心を持つことも非常に重要です。好奇心を持っていると、知らない事が絶対に出てきますよね。その時になぜだろう?と思ってそれを調べます。ある事を調べる過程で、また知らない事が出てきます。それをまた調べます。これが探究心です。好奇心と探究心がない人は、ただ、すごい事に出会っても、「あ~、あれすごいね」で終わっているんじゃないですか?「なぜ、どこがすごいんだ?」と探求して調べましょう。その積み重ねが知識とか経験になって将来絶対に役に立つ時が来ます。
物事がうまく行った時こそ、「なぜうまく行ったのか?」を考える事ですね。失敗した時に失敗した理由を考える人は多いです。しかし成功した時こそ「なぜうまく行ったのか?」を省みる事。うまく行ったのが予定通りだったからか、それとも偶然だったのかなどの理由がわかれば、それはそれで次がもっとうまくいく可能性が高まります。何事にも、なぜだろうと思う事です。
最後に「だって、でも、だから」は絶対に使わない事です。指導や指摘、質問をした時に相手から「だって、でも、だから」って言われたら、その人に仕事のやり方など教えてあげようと思いますか?教える気は失せますね。素直に聞いて、知識・経験を積んでいく事がなによりも大切です。