「正解はない。」だからこそチャレンジし続ける文化を創る
BEENOS株式会社 代表取締役副社長グループCFO 中村浩士

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Qこれまでの経歴を教えてください。

~証券会社時代~ 

1990年に大学を卒業し、ちょうどそのころはバブルの絶頂からちょっと崩壊に向かっているタイミングで、私が就職活動していた時期はまさに日経平均が天井をつけるような相場でした。

野村証券に入社が決まったときは「非常にいい業界に就職が決まってよかった」と思ったのです。しかし入社する4月にはすでに右方下がりの相場になっていました(笑)

入社してからの仕事は、数々のベンチャー企業を上場させるIPOの仕事でした。その頃、新規上場のマーケットは非常に良い時期でしたね。もともと会社に入るとき「3年くらい勉強したら自分でなにかやりたい」と思っていたのですが、結局仕事が面白くて7年間、10社以上の上場をお手伝いしました。

~ハイパーネット転職~

1995年くらいからでしょうか、インターネットが日本でも徐々に利用されるようになり、私自身インターネットという存在は世の中を変えるんじゃないかという思いがあったのです。そしてたまたまインターネットビジネスの会社が上場をしたいという話があり、私が担当させてもらったのですが、それがハイパーネットという会社でした。代表の板倉さんと話をするなかで、やはりインターネットビジネスはおもしろいなと思ったんですね。この時期に上場を目指す、それも日本じゃなくてアメリカで上場をしたいという話で。今までそういった仕事を経験したことがなかったので、ぜひやってみたいなと思っていたところ、板倉さんから「証券会社の立場でなく、こっちに来てやってくれないか」という話をいただき、そのお話を受けることになったんです。

~コンサルティング会社設立~

1996年に、私は証券会社を辞めてハイパーネットに転職をしました。結局1年もせずに会社が倒産の危機に陥ってしまって、1997年にはハイパーネットを辞めることになるんですが。その後、野村証券のOBで私の先輩に当たる方から「一緒に会社を立ち上げないか」という話をいただき、ベンチャーを支援する仕事をしました。2001年にその会社はSBIに買収され、そのタイミングで独立し、自分でIPOのコンサルティングやM&Aのアドバイザーをする会社を興し、上場支援や事業再生を手がけました。

~BEENOSへ~

当時はネットプライスという社名だったBEENOSに出会ったのが2003年です。2004年に上場する前後の1年間、監査役という立場で携わっていたのですが、創業者の佐藤から「監査役としてではなく、中でやってもらえないか」と打診がありました。自分の会社で担当していたクライアントの上場も完了しタイミング的にも良かったのと、私自身も一緒にやっていきたいという思いもあって話を受け、当社子会社の社長として事業の立ち上げをした後2006年にCFOに就任しました。

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Q.最近、伊藤忠商事からの子会社への資金調達がありました。経緯などを教えてください。

これは伊藤忠商事さんからデファクトスタンダードに直接アプローチがあったものです。デファクトスタンダードは、店舗を持たずインターネットの仕組みを通じてブランド品の買取・販売を行っているビジネスモデルとしては先駆け的な会社です。ある商品を何万個も売るのではなく、お客様から買い取った1つ1つ違う商品を販売する、それも猛烈なスピードでオペレーションを回しているユニークなビジネスモデルであることを評価していただき、伊藤忠商事さんが中長期的な視点で新しい事業を一緒に創れないかと興味をもっていただいたのがはじまりでした。

Q.資金調達をする基準というのはあるのですか?

基準については、以前は決めていたこともあります。しかし子会社の状況にもよりますし、グループ全体の状況も判断しなければならないところもあるのと、基準を定めると「ルールで決まってるからいいじゃないか」ということにもなりかねないため、今では基準やルールはなくしました。個別判断です。

Q.多くの事業会社を管理するにあたっての難しさや成功事例は?

いろいろ試してみないとわからないことや見えないことがあると思います。当社もいろいろな失敗を繰り返し様々な方法を試してきたので、一概に「これをやれば正解です。」というものはないと考えています。それぞれの会社の文化もありますし、当社でうまくいっていることが他社でうまくいくとは限らない。いろいろ挑戦してみないことにはわからないですね。

またグループ経営の難しさとしては、それぞれの子会社の社長には、いい意味で独立心をもって経営に当たってもらう一方で、その力は遠心力になりやすいのでそれをどうコントロールするかというところだと思います。

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Q.投資事業についてお聞かせください。投資先を選ぶ基準は?

当社は投資先を、国内、アメリカ、新興国と3つにわけています。アメリカに関しては、完全にスタートアップでインターネットの最先端ビジネス企業に特化しており、年間20社程度投資をしています。そういった投資先から新しいビジネスを学ぶ感じですね。そこで、日本のビジネスに活かせるものはないか、投資している新興国のビジネスに反映できることはないかという情報を得るために投資している部分もあります。

新興国への投資に関しては、当社が15年間、日本で培ったEコマース事業のノウハウを活かしています。以前、中国において、自分たちで事業を立ち上げたことがあるのですが、やはり日本流の経営を他国に持ち込んでもなかなかうまくいかないし、各国で事業を展開するにはその国の人たちがやるのがベストだとわかりました。それ以降は、自らが経営をするのではなくて、経営をサポートする役割、そのため投資というスタンスが一番いいのではないかということになりました。

2012年から本格的に新興国の企業に投資をしていますが、投資する事業領域は決まっています。われわれが15年間培ってきたノウハウが活かせる領域、かつわれわれが絶対成功すると思っているビジネスの領域、「マーケットプレイス」と「オンライン決済」の2つ、そしてその周辺事業です。

世界中みても、たとえば日本では楽天、アマゾン、ヤフー、アメリカを見ればイーベイ、アジアではアリババなど、どれもマーケットプレイスが最強のビジネスモデルになっています。またマーケットプレイスがあると必ずそこにはオンライン決済がセットにある。新興国ではこの2つの組み合わせを作っていきたいと思っていて、こういったビジネス領域をサポートしています。

また、実際これまでの投資先選定としては、創業者の佐藤が世界中飛び回り、その国で自らネットワークを作り現地の経営者に会う。そして、経営者のネットワークを広げ、その国のマーケットプレイスのナンバーワンや、ナンバーワンに成長しそうな企業を見つけて口説くというのが新興国における手法でした。 

一方、アメリカの投資に関しては、投資担当がいて、投資の上限を決め、権限をほぼ委譲してきました。アメリカの事業は、半年後にはまったく違うことをやっているのが当たり前になっているので、事業に投資するというよりは、経営者や事業の着眼点を見て判断します。この経営者だったら他の事業にもピボットできるのではないかということも考えながら投資しています。 

投資資金に関しては、完全に自己資本です。

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Q.投資先の経営者を見極めるポイントもあるのでしょうか?

投資する会社の経営者は同じようなタイプかというと違いますし。企業秘密ですね(笑)

経営者の共通点としては、とにかく事業が大好き、インターネットビジネスが大好きというところ。寝てもさめてもその事業のことを考えている経営者がほとんどなのではないかと思います。

以前、創業者の佐藤がこんなことを言っていました。メールの返信スピードがけっこう重要であると。メールの返信スピードが速いというのは、常に仕事に臨戦状態であるということの表れで、そういう経営者は信用できる。私もそれは当たっていると考えていて、レスの遅い経営者や会社はその後に何かしら問題があることが多いなというのが経験上の感覚としてはありますね。

またその事業が好きかどうかは、会社の話を聞いているときに、ワクワク情熱を持って話しをしているかどうかが伝わってきますよね。

加えて、数字を社長自身が把握しているかどうかという点も重要ですね。

Q.投資後のフォローアップもされているそうですね

そうですね。昨年はシンガポールにて投資先を集めたワークショップを行いました。私どもは投資の領域を決めているので、各国でうまくいっていること、失敗したことを共有することで、ヒントや応用になると考えています。

Q.海外投資に関してアドバイスがあればお願いします。

特にないですね(笑)というのも非常に属人的な要素が強いビジネスだと思うからです。我々が投資して来られたのは、自分たちで事業を創ってきたからだと思います。事業の勘を持って一から育て、開拓をし、経営者、起業家だったからこそできている投資だと思います。逆にその経験がないと難しいのではないでしょうか。 

Q.貴社におけるCEOとCFOの役割の違いはなんですか?

事業に関しては、大部分を各事業会社の社長にまかせているので、グループのCEOの役割としては、それぞれの事業というよりもグループ全体の戦略を考えていくのが仕事ですね。CEOが旗をふって動かし、CFOがそれをサポートしていく役割だと考えています。私自身は、管理部門と投資部門を主に見ていますが、グループ全体の戦略については、CEOとCFOと子会社の社長が2名BEENOSの役員になっていますので、基本的にはその4名で考えてやっています。それぞれの立場で多角的な視点から事業を見ていくことも重要と考えています。

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Q.CFOや、グループ経営のCEOを目指している方にひとことメッセージをお願いします。

先ほどの話と重複しますが、CEOは事業、CFOは管理ときれいに分かれているものではなく、CFOを目指す人は事業のことも分からないといけません。CFOは何かの専門家でなくて、事業を経験したり幅広い経験があったほうがいいと思います。例えば会計だけ突き詰めるのではなく、事業も経験することをお勧めします。