CFOroad ベンチャー4社・若手経営者対談【前編】

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今号は、上場企業、ベンチャー企業の今後を担う若き経営者の対談記事・前編です。(後編は12月に公開予定)

公認会計士・学生企業・証券リテール営業など様々なバックグラウンドからベンチャーに飛びこんだ経緯、上場後の組織などについて本音を語っていただきました。

 

(写真左から)

  • 株式会社バンク・オブ・イノベーション 執行役員CFO 河内三佳 (1985年8月31日生)
  • 株式会社ファインズ 取締役管理本部長 水野貴弘 (1985年9月13日生)
  • 株式会社リアルワールド 経営本部統轄マネージャー 井上健 (1985年10月4日生)
  • 株式会社マイネット 執行役員CFO戦略室長 嶺井政人 (1984年9月29日生)

 

■リアルワールド、マイネット、バンクオブイノベーション、ファインズの若手経営者対談


井上:
 株式会社リアルワールドの井上です。自分はCFOではなく経営本部の統括マネージャーで、2011年8月にあずさ監査法人から転職してきました。監査法人の時代はITやIPOはまったく知らなくて、売上を2兆、3兆と数えるような自動車産業の監査業務ばかりでITはまったくだめだったんですよ。最初にリアルワールドに入った時は「バナー広告ってなんですか?」という状態(笑)facebookもtwitterもやっていなかったですしね。

 現在29歳ですが、35歳の時に想像できない自分になっていきたいなという目標を25歳の時に立てたんですよ。想像できない自分になっているにはどうしたらいいんだ?と思った時に今までとは逆の事をやっていかないといけない、新しい世界を見る必要があると考えてて。ちょうどそのタイミングで磯崎哲也さんの起業のファイナンスを読んだんです。結論何が書いてあるかわかんなかったんですよ、わからなすぎてその日に会いに行ったくらいですから(笑)磯崎さんと2時間話した結果、何言ってるかまったくわかりませんでしたね(笑)けどその時にベンチャーという世界があるという事を知りました。監査法人で大企業は見ていたのでベンチャーに入ってまったくわからないIT企業に行きたいと思っていた時にリアルワールドに出会いました。
 現在リアルワールドはCROWDというクラウドソーシング事業を展開しています。クラウドソーシング事業を成長エンジンに持つ企業では初めて上場した企業で、今後クラウドソーシングを軸にする企業は増えてくると思いますが、みんなで業界を盛り上げていきたいなーと思っています。昨日初めて上場後の決算説明会をやりましたので詳細は決算説明資料読んでいただければ幸いです(笑) http://www.realworld.jp/crowd/


嶺井:
 私は起業家とファイナンスの2つのバックグラウンドがあります。直前はモルガンスタンレー(以後:MS)にいて、投資銀行業務やクレジットアナリストとして格付けを付ける仕事をしていました。それ以前は早稲田大学在学中にIT系の会社を3つ作り、その内2社を東証マザーズに上場している比較.comとベンチャー企業に売却しました。学生時代に自ら起業する中で、ファイナンスを学ばなければ事業が伸ばせないと思い、MSに入りました。マイネットには2013年3月に転職し、CFOなので財務・上場準備は当然やるのですが、マーケティングの統括・新規事業、採用等もやっています。

 

井上: 2013年になんでゲーム業界に?ってよく聞かれません?


嶺井:
 よく聞かれますね。私の場合、業界というよりは代表の上原(株式会社マイネット 代表取締役社長 上原仁)と一緒に仕事がしたかったというのが大きいですね。元々代表の上原とは10年前からの知り合いで、学生の頃から一緒に働かないかと誘い続けてくれていました。当時私は吉野家の店員だったんですが(笑)在学中に作った会社を売却した後や上原が起業した時など、ことあるごとに誘ってくれて、大変お世話になった先輩だったので、いつか恩返ししたいなと思っていたんです。2012年12月に声をかけてくれた時に「今回は本気だな」と感じ、私自身がファイナンスの知識もある程度つき、弊社のフェーズからみても貢献できるかなと思い参画を決めました。

 マイネットはスマホゲームの会社です。弊社はSAP事業も持っているのですが、運営グロース事業という他社さんのアプリを買収したり、レベニューシェアで途中から運営を引き継がせて頂き、長期安定運営を実現するという今までにない事業も行っています。最近もイグニスさんのスマホゲームタイトルを買収させて頂きました。http://mynet.co.jp/news/2014/09/11/0911_1/

 

河内: バンクオブイノベーション(以後:BOI)でCFOをしている河内(こうち)です。私の経歴ですが、大学のときに公認会計士に合格して、卒業と同時にトーマツ(有限責任監査法人トーマツ)に入社しました。トータルサービス部という部署に属しまして、その部署は井上さんとは逆で、クライアントはベンチャー企業がメインでして、主にIPOを目指す会社と一緒にIPOに向かって体制を整えていくような、「監査」というのが前面に出ていない部署でした。08年のリーマン・ショック以降IPOする企業は少なかったですが、関与させて頂いた社数は全部で30社ほどでした。

 そして、2013年4月ごろに転職して自分の力を試してみたいと思うようになり、5年半勤めさせて頂いたトーマツを9月末で退職することを決め、役員の高い視点や成長意欲に惹かれ、縁あって10月1日にBOIに入社しました。最初は経営管理部長として入り、今年4月に執行役員CFOに就任しました。
 BOIはゲーム以外も含めたネイティブアプリを開発・運営している会社です。日本、韓国・台湾・香港などの東アジアを中心にアプリをリリースしており、今年の7月には英語圏57カ国にも新たに展開を開始しました。またそれとは別にイノベーション・ラボという研究開発の部署を設けてまして、より高い成長を目指して、ITサービス・プロダクトの研究開発も行っています。

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嶺井: ちなみに年収って結構下がったんじゃないですか?


河内:
 そうですねー、年収は据え置きくらいですかね(笑)


井上:
 嶺井さんは?直滑降?


嶺井:
 私は直前が外資なんで(笑)


水野:
 私は野村証券でリテール営業出身で財務出身でもなければ、会計・経理出身でもないんですよ。新卒で野村證券に入社して、中目黒支店という対富裕層向けの新店舗で富裕層・高所法人に対するセールスをしていました。当時の担当エリアが中目黒〜渋谷〜恵比寿〜白金だったので、一口に富裕層と言っても、リタイアした経営者から、まだ30代のIT企業の経営者まで、幅広い方とお付き合いできました。そういった方々と仲良くなって話をしていると、自然と「自分もこんな風になりたい」って漠然と思うようになりました。ずっと野村にいるのもいいけど、どこかのタイミングで、野村の看板無しで勝負したいな、と。ファインズの代表の武吉は当時、前に創業した会社で会長をしていて、実は当時の顧客だったんですが、そういった話を飲みに連れてってもらったときにしていました。そういった経緯があって、あるとき「資産運用の相談に乗って欲しい」と言われてオフィスに言ったら「CFOになってくれ」と言われて驚きましたね(笑)当時、武吉は自分の顧客層の中でも最も若く、色々話をしていて、一人の人間として尊敬をしていましたし、会社もすごく活気があった。そんな経緯で、今年(2014年)の7月に取締役CFOとして入社しました。

 ファインズは、「未知を周知にする開拓者であり続ける」を理念として、次々に新しい事業に参入しています。来期で社員数も100人を超えます。スマホとタブレットのコンサル事業をメイン事業としてますが、12月に新規事業として、一つメディアをリリースします。


井上:
 どんな事業なんですか?具体的には?


水野:
 各店舗の予約の空き状況の見える化をしたメディアです。店舗にとっては、空きっていわゆる「在庫」ですよね。その見える化です。・・・これ以上は、また年末くらいに(笑)

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■イメージと1ミリも合っていない入社前と入社後


嶺井: 
入社前に想像していたのと入社後はどうでした?


井上:
 私は事業が上手くいくとかいかないとかいう感覚がそもそもなかったですね。元々監査をしていた企業は売上2兆とか3兆の会社だったのでPLが悪くなる感覚がそもそも無かったんですよ、キャッシュなんていくら使ってもあるだろうって(笑)今の会社に入ってPLとBS見ても数値感覚がわからなかったですね。1000億?あっ1億か!みたいな(笑)


河内:
 そうですか!?それは興味深いです!私は井上さんとは反対に、売上数兆のような会社の監査をしたことがないんで、そんな会社のPLを見てもピンとこないんですよねー。大きすぎると見えない部分がありますよね?監査の観点だと特にですが、見えない部分があるのは怖いよねっていうのを前職の時に話してたのを思い出しました。私は売上高数億の規模の会社についても社内体制も含め見てましたので、BOIに入社してからのギャップはあまりなかったと思います。

 またBOIでは、2015年に上場するというのを短期目標としており、私が関わる社内メンバーはその短期目標に向かってモチベーションが高い人が多いです。上場企業出身の経理担当や、会計事務所&コンサル出身の内部監査担当、スピードや正確性のある財務・開示担当、従業員のことを考えて主体性をもって動いてくれる総務・労務など、みんな優秀です。


嶺井:
 でも事業会社と監査法人はやっぱり違いますよね?


河内:
 うーん、確かにはじめのうちはそうだったかもしれません(笑)

 監査法人のときは、10あるうちの2ぐらいを伝えて、あとは「いい感じにやっといて」と言えば、「いい感じのもの」が下から上がってきてました(笑)。それは、お互い成果物のイメージがついていて、2を言っただけで下の人も10の枠がイメージできるからで、確かに私が転職したころはそういう状態ではなかったと思います。


井上:
 わかるわかる


河内:
 あっこれ、ギャップですね!(笑)

 ただ、現在は、1年間一緒にやってきているのでお互い共通の成果物のイメージがついてきていると思ってます。


水野:
 自分は入社して4ヶ月目なんですが、社内もそうなんですが、社外の印象が強くてベンチャーって本当に優秀な人が多いなと感じますね。頭の回転早い人多いですし、何よりサバイバル感がある。「自分の強みが何か」「将来どこで稼ぐか」みたいなものを意識して仕事をしている人が多い環境は、やはり大企業とは違うなと感じます。結果としての話ではありますが、よく大企業で「一人ひとりが経営の視点を持って~」みたいな話はマネージャーから出ますよね。あれはかなり無理があると僕は思っていて、とりわけ金融は、ルールとマネジメントがガチガチすぎて、一セールスマンとして、経営の視点を持つのはかなり難易度が高いかと


河内:
 証券にも優秀な人相当いますよね!?(笑)


水野:
 もちろん証券にもいますよ!(笑)野村に入社して良かったと思う事は、仕事に熱い人が本当に多いことですね。顧客や後輩のことを真摯に考えて、結果にコミットして背中で語る人が多かったです。僕もその姿を見せてくれた人の仕事観に今も影響を受けています。一方で、自分はIT業界に関しては新人の部類です。今はとにかく同業界のCFOを中心に、たくさん人と会う事も大事にしていますので、仕事の半分は夜だと思っています(笑)。まだファインズに入社してすぐのときに、フリークアウトCFOの横山さんに「キレッキレの人に会わせてほしい」と依頼してご紹介いただいたのが井上さんだったんですよね!


井上:
 あざす(笑)


水野:
 良い意味で、社内外で色んな方とお会いしていて、周りが優秀すぎてへこむ事も多くなりましたね(笑)以前は、仕事にある程度慣れすぎてしまって、そういう感覚は薄れてたなと、今になって思います。ただ、大企業の感覚とベンチャーの感覚、セールスの経験と、セールスではない部分で会社の売上に貢献する経験、といったように、多角的な視点と経験を持てるからこそ、組織においてもそうですし、マーケットにおいても自分の価値が上がると思って、ファインズにジョインした経緯があります。今の苦い想いは、そういった新しい視点、新しい経験をしているからこそのものだと思っています。事業とかファイナンスの仕事よりも自分はそっちの方が印象的でした。

 

■組織についての話


河内:
 ちなみに管理部門の組織ってどんな感じなんですか?


井上:
 うちは全社的に新卒文化ですね。経営本部にも新卒の子が多数在籍してます。みんな優秀なんですよ。地頭いいしやる気あるし、逆に下から突き上げられてる感が(笑)


水野:
 ファインズの場合は、自分のチームに年下も勿論いますが、年上がいることが今までなかったので、そこは新鮮でしたね。逆に、年上のIPO経験者などのメンバーに支えられています。若いメンバーも、一人一人仕事や組織への想いがあって、良いメンバーに囲まれてるなと思います。


井上:
 自分監査法人時代はずっと最年少だったんですよ。数10名のメンバーと関わって、多くの現場責任者やってたけど全員年上。20代前半でやってたから色んなところで経歴話すと大抵疑いから入られるという・・・本当にやってたの?みたいな(笑)


水野:
 一方で、文化の違いはやはり感じますね。野村證券とかの文化って結構独特なものがあって、新卒から入社してから一本筋通った文化で、あうんの呼吸で言えば伝わったりするけど、今はそれじゃダメだなと思って、こちらの意図とか、「なぜそうするか」までちゃんと伝えることを心がけています。


嶺井:
 井上さんとは逆で僕のところは管理部門には新卒は1人もいないですね。財務は会計士、監査法人出身の人もいます。会社全体としては創業当初から新卒採用をしているので新卒の割合は多いですけど。

(後編へ続く 12月公開予定)