Q:まず、夏目様がワークスアプリケーションズに入社された経緯をお聞かせください。
私がワークスアプリケーションズに入社したのは29歳の時のことです。前職は、とある専門商社に営業職として勤めており、小規模なオーナー会社でしたので若輩者ながら幅広く経験を積ませていただきました。しかし、27歳で結婚して28歳で子どもを授かったことを機に、30代以降の人生について考えるようになったのです。
学生時代にはスポーツキャスターを志すほど、要するに私は、自分という媒体を通して人に価値を提供することが好きなのです。ただ、当時の私の仕事は限られた狭い業界構造の中での間接販売が中心でした。そこで改めて自分の価値を発揮できる仕事を探し、ワークスアプリケーションズの門戸を叩かせていただいたのです。
Q:実際に入社されてみていかがでしたか?
最高の選択をしたと思います。私は2014年に採用という役目を拝命するまで、弊社製品の価値をお客様に提供する、コンサルタントの仕事をしていました。特に人事分野の「COMPANY HRシリーズ」を担当していたことから、1000社超の企業の人事業務に携わってきました。その中で、製品をご利用いただく多くの担当者の方と関わり業務改善に取り組むことは、難しいながらも非常にやりがいがあって、まさに天職と呼べる仕事でしたね。
また、ワークスアプリケーションズには「世界中でここにしかない」と思えるものがいくつもあります。その最たるものが、社員の大失敗をも許容するマインドです。弊社には「正しいことを実現するために必要だと考えたことは、失敗を恐れずチャレンジすればいい」という創業者の牧野(牧野正幸/株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者)の考えが根付いており、プロセスに妥当性があれば結果を問わず認めてもらえます。そのため、制限や圧力を受けるストレスがなく、自分のようにチャレンジ精神が旺盛な人間にとってはこの上ない環境です。
Q:御社は例年大規模なリクルーティングを行っていますが、採用戦略を伺ってもよろしいでしょうか。
まずは弊社の体制から説明しますと、弊社では、採用部門が1つの事業部としてスピンアウトしています。要は、人事部の中に採用グループがあるのではなく、人事部と並ぶ形で採用部が設けられています。
そして、弊社の代名詞と自負しているのが、徹底して“教えない”「問題解決能力発掘インターンシップ」です。弊社は「インターンシップ」という言葉が世間に定着する以前の2002年から、このインターンシップを実施しています。
これは単なる就業体験ではなく、実務を模した難しい課題を与えて、ビジョンメイキングからプランの策定、実行までのすべてを学生ひとりで行わせるものです。我々はその間、決して答えを教えることはありません。なぜなら、手取り足取り教えてしまっては本人の成長の芽を摘むことになりかねませんから、より深い思考が持てるよう気づきを与えることだけをします。手を伸ばしてもギリギリ取れないようなボールを投げるイメージですね。このようにして、約1ヶ月間みっちりと彼らと向き合い、問題解決能力の高い人材~クリティカルワーカー ~と認められた学生には、「入社パス」を付与しています。
また、この仕組みを成り立たせるには、運営側にもかなり高い能力が求められますから、数十名ものエース級の社員を投入しています。もちろん彼らが通常業務から離れることは現場としては大きな打撃でしょうが、「人材こそすべて」と考える弊社だからこそ、あえてエース級を投入するのがこのインターンシップを始めたときからのスタイルです。
日本の景気は低迷していますが、そういう時にこそヒーローは生まれるものです。牧野は、弊社を社会のモチベート材料となる存在にしたいと考えており、そのための方法論が採用です。「いち早く世界を変えるヒーローへと成長するためには、ワークスしかない」というブランドを築き、優秀な若者が「ワークスのインターンシップにチャレンジしたい」と思えるような世界を作っていきたいですね。
Q:キャリア採用でもユニークな取組みをされているようですね。
そうですね。転職を考えている方には、面白いブレイクスルーをご提供しています。例えば、「IT Express」という採用プログラムでは、IT未経験者を募って、彼らをエンジニアとして育てあげるものです。ITスキルを一定水準まで高める特別な育成プログラムを実施し、高いポテンシャルとの相乗効果で自分の能力を最大限に発揮してもらおうという取組みです。「Global Express」は、国内採用にも関わらず入社後に海外で育成プログラムを実施します。海外での語学研修と実務経験を通じて、語学力がネックとなり活躍するフィールドを狭めてしまっている方をグローバルで活躍できる人材に育成するものです。もちろん弊社の場合、異動は自己申請制なので、プログラム修了後は実際に弊社の海外拠点で勤務するチャンスもあります。
いろいろな思いで複数の職業を経験された方は、それぞれにニーズをお持ちです。ビジネスパーソンとしてのウィークポイントを補いたい方もいらっしゃれば、自分の強みをさらに伸ばしたい方もいらっしゃいます。新卒と同じように、転職を考えている方も新しいことにチャレンジしようという心持ちが大事です。ぜひ弊社ならではの取組みを活かし、キャリアアップをめざしていただきたいですね。
Q:次に、グローバル採用について伺いたいです。世界から人材を集めるために、どのような取組みをされているのでしょうか。
具体的には、インドのインド工科大学(IIT)、中国の清華大学や北京大学などのトップレベルの大学に赴いています。例えばIITでは、大学を飛び越えて学生と直接コンタクトを取ることが許されていません。また、学生は1つの会社と繋がりができたら、他社への就職活動ができない文化が根付いています。つまり、学生に「ここで働きたい」と思わせられるプレゼンスが必要なのです。さらに世界水準の待遇も重視されますから、弊社ではグローバルで統一した報酬・評価制度を設けています。
インドは特に、今の日本を作り上げた数多の大企業のプレゼンスが浸透しています。ですから、国内ERP市場でトップシェアを獲得している弊社に対し、「日本の立派な大企業を支えている」と好感を抱いてくれます。このことは、日本という国がこれまで頑張ってきた証と言えるでしょう。日本は低迷期と言われていますが、世界的に見ると日本のブランドはまだまだ捨てたものではありません。日本を変えてきたのはやはり民間ですし、特に戦後の日本の技術には光るものがありました。弊社も、テクノロジー・カンパニーとして自信とプライドを持ち、世界に誇れる日本企業のDNAを受け継いでいきたいです。
Q:グローバル採用とあわせて、海外進出を進めていらっしゃいますね。
ワークスアプリケーションズの強みは、「業務のプロフェッショナル」であることです。創業以来20年にわたり、日本の業務におけるあらゆるニーズを包括すべく、製品の標準機能の網羅性に心血を注いできました。日本企業は即戦力を求めるのではなく、雇った人材をタレントとして「育てる」のが特長です。人を手厚く処遇するからこそ制度が複雑化し、福利厚生も極めて多彩になっています。そういう世界的にみて最も複雑といわれている日本の業務をサポートできている我々は、世界中のどんな業務にも対応できるはずです。
弊社は2011年にMBOを実施し、研究開発と人材採用に多額の資金を投じる判断をしました。ERP開発において重要なのは、業務に関する造詣とテクノロジーです。今お話ししたように、ワークスアプリケーションズは「世界一業務に興味がある会社」だと自負していますので、テクノロジーをさらに追求すべく、世界中から優秀な人材を「超無限採用」し、世界中の企業に貢献しようとしているのです。
Q:2014年に発表された新製品「HUE」は次世代ERPとして世界から注目を集めていますね。開発の背景を伺いたいです。
我々は、日本企業のROIを高めるために、圧倒的な業務網羅性を持つ、大手企業向けERPパッケージソフトウェアの開発を、日本で初めて成功させました。それが「COMPANY」です。おかげさまで、ERP市場シェアトップとして、多くの日本の大手企業に「COMPANY」をお使いいただけるまでになり、一定水準以上の高いROIを生み出せるようになりました。このように、企業のROI向上への貢献という我々の1つの目標が達成しつつある中で、次のステップとして考えたのが「現場でシステムを使う人」に対する貢献です。そこで生まれたのが、操作性や利便性が高く、使っていてワクワクするようなソフトウェアで、まるで秘書ロボットのように利用者の行動を学習することで、欲しい情報を即座に提供し要望に柔軟に応えることができる「HUE」の構想です。
スマホネイティブの若者がERPを見ると、使いにくさに戸惑うと思います。しかし、「企業のシステムはそういうものだ」と大人の常識を押しつけるのは、時代に逆行した行為です。特にエンジニア出身の牧野はそういうことに敏感で、作り手の事情をユーザーに押しつけるのではなく、ユーザー目線での製品開発をポリシーとしています。現場担当者のオペレーションを圧倒的に向上させる 例“秘書ロボット”という新しい概念に弊社の社員は100%共感し、一丸となって開発に取り組んでいます。
Q:次世代ERPの開発には、最先端の技術力も必要不可欠ですね。
そうですね。我々のエンジニアは、ビジョンメイキングを非常に重視しています。オペレーションしている担当者の顔まで思い浮かべながら、その人の理想の働き方を阻む問題は何か、あるいはその人のために提供すべき価値とは何かを考え、問題解決のための道筋を描いた上で製品開発に取り組みます。そして、弊社の技術力を担うテクノロジスペシャリストも同様、単なる研究で終わるのではなく、実際に担当者の方に使っていただき価値を提供できるようにしなければいけません。それには何よりも発想力が必要となるのです。弊社に世界最高峰のエンジニアやテクノロジスペシャリストたちがいるとなれば、こんなに心強いことはありません。お客様にとって価値があるものを提供するのがワークスアプリケーションの「技術力」なのです。
Q:技術力含め、能力を最大限に発揮するためには教育評価も重要だと思います。御社ではどのような制度を設けているのでしょうか。
弊社ではまず、新卒社員に「スターターミッション(STM)」と呼ばれる新人研修を受けてもらいます。それはインターンシップのように、一切教わることなく与えられた課題に挑むものです。ただし、その難度はインターンシップの10倍以上です。自分の頭で考え、自分の能力を鍛えることだけに集中し、突破した者から現場に配属されます。
そして配属後は、各職種に応じた育成プログラムに参加します。この表現は不適切かもしれませんが、戦場に出て戦う前に、武器の使い方を知らなければ孤立してしまうでしょう。ですから、戦いとはどういうものかを理解するプログラムが必要なのです。さらに弊社では、経営陣が直接コーチングする育成プログラムを定期的に開催し、社員の成長の最大化に取り組んでいます。他社にいたことがあるからこそ強く実感することですが、環境もそうですし仕組みとして、これほどまで個人の成長に投資している企業は他にないでしょうね。
仕事では毎日が問題解決ですから、取り組んだ分だけ成長していきます。ただ、その途中で駆け込み寺となる部分が用意されているのが弊社の特徴ですね。基本的にはビジョンメイキングから実装まで自分で完遂するフルスタック精神を重視していますが、どうしてもわからない時は駆け込み寺に相談しても構いません。全部自分一人でやらなくてはいけないのではなく、すべてのシナリオを描いて実行することが大事なのです。
弊社では多面評価を導入しており、評価項目の1つに「スピルバーグ」というものがあります。スピルバーグ監督は素晴らしい台本を書き、観客をどう感動させるかというゴールを描きます。そのために、キャスティングやインフラといった方法論があるのです。弊社では、協力を求められた人間は必ず「なぜか」を問います。そこで相手を納得させる理由があれば、協力を仰いでいいのです。
Q:評価の一項目がカルチャーとして根付いているのですね。3,000名規模の会社でカルチャーを伝播させるのは難しそうですが、独自の取組みがあるのでしょうか。
社内では、牧野曰く「他の社長さんが真似したくても絶対にできない」取組みを行っています。その一つは、全社員が業務報告書を経営陣に提出することで、最大の特徴は、仕事や会社、経営陣に対する愚痴さえ、何を書いても構わないという点です。牧野本人への愚痴が含まれていても牧野は一切文句を言いませんし、その人を呼びつけ叱ることは絶対にありません。「皆がイキイキと働ける会社でありたいので、邪魔になることがあれば遠慮なく言ってほしい。すべてを実現できるかはわからないが、しっかり全員の声を受け止める」というのが牧野の思いです。
なぜこれだけ難しく大変なことを続けているのかというと、1人の意見であれば愚痴で済みますが、多くの社員の愚痴は無視できるものではなく、経営の意図が伝わっていないなどという文化のゆがみが生じる可能性があります。だから、毎回欠かさずこの業務報告書を自分自身で読み、経営の羅針盤として活用しているのです。また、月1回に全社員が集まる全社会議「CLOWS」でも、業務報告書の内容を反映し、社員が働きやすい環境作りに尽力しています。
Q:ワークスアプリケーションズの最大の強みは何だと思いますか?
すべてに一貫性があることです。私が入社して14~15年が経ちますが、弊社は1mmもブレずに「良いものを実現し、価値を提供すること」に注力しています。採用、制度、製品開発、営業方針など、あらゆる面がその本質のもとに成り立っており、一切の矛盾がありません。社員に対しては「この会社を選んで良かった」と思える価値を、お客様に対してはROIの向上や働く楽しさという価値を提供するために、美学のように方法論を追求しているのです。
そういう企業文化も影響してか、弊社には情熱的な人間が多いですね。私もすぐに情熱を語り始めるタイプですが、それを周りが嫌がらないがゆえに、「ワークスアプリケーションズは最高だ」と思っているのかもしれません(笑)
生年月日 | 1972年3月16日 |
好きな時間 | 就寝前、翌日の着こなしを考えている時間 |
好きな言葉 | 王侯将相、寧くんぞ種有らんや |
好きなお酒 | ホッピーセット(白と黒のハーフ&ハーフが最高) |