“成功する起業家”はこうやって見極める!
投資のプロが自らの成功と失敗から導き出した投資戦略を全公開!

ご自身で立ち上げた会社を運営し、それ以外に2つのVCの取締役をも務める星野善宣氏。「新潟から日本へ 新潟から世界へ」の実現をめざす熱い想いを本音で語ってくださいました。

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―今までのご経歴、また現在に至るまでの経緯、背景などについて教えていただけますか?

星野氏:生まれは新潟で高校まで地元で過ごし、その後北海道大学で理系を学びました。でも、エンジニアとしてこのまま研究を続ける気になれなかったので、就活では自分の力で勝負できる職場として商社を選び、入社したんです。

 

そこで、M&Aで合併した企業などを見て経営に興味を持ちはじめ、そのうち「おもしろい会社を自分でつくろうかな」という思いが強くなり、会社を起こすことを決めました。

ただ、準備をするにも何もノウハウがなかったんですね。そこで、コンサルティングファームに転職し、勉強してから独立して会社を立ち上げたんです。

 

現在21名体制(うちプロパー5名)で、案件を受注し制作して納めていますが、私たちはブランディングコンサル案件を半年~年間で契約して月次でお金をいただいています。さらにそこに制作案件や新卒募集パンフレット作りなども入ってくるので、案件を継続いただければ、毎年比較的安定した収入が確保できるようになりました。

 

そんな状況になってきたなか、数年前から地元新潟の経営者の方々とお会いする機会も増えていったんですね。

そんな中、現事業創造キャピタル(株)の取締役会長で(株)アルビレックス新潟の会長でもある池田弘さんから、「おまえも、いいかげん新潟に貢献していけよ。キャピタルの方で人が足りないから一緒にやってみては」とお声がけをいただき、合流することになりました。

 

 

―今、星野さんはご自身の会社以外で、事業創造キャピタルと新潟ベンチャーキャピタルの取締役を務めていらっしゃいますが、両社はどのような関係なんですか?

星野氏:事業創造キャピタルは、もともと池田さんが運営する民間教育機関 NSGグループのベンチャーキャピタルとして設立された会社です。地銀さんや地元の企業さんからお金を集めさせていただいたファンドを運営し、もう10年くらい経ちます。

 

その後、今から6年位前でしょうか。新潟県がお金を用意するので、それを運用するベンチャーキャピタルを県内に設立する、という新潟県の公募の話があったんです。それで、事業創造キャピタルが、新潟のいろいろな事業会社の社長さんを株主として集めさせていただいてつくったのが、新潟ベンチャーキャピタルです。

両社はグループ関係にはなく別会社ですが、どちらも代表取締役社長を永瀬が務め、私も取締役を兼務していますので、とても深い関係にあるといえます。

 

 

―ご自身で起業されたパートナーオブスターズと取締役を務めている2社とは、どんなふうに業務を切り分けていらっしゃるんですか?

星野氏:自分の会社では、新規事業や私自身が担当している一部の案件だけは私が見ていますが、その他はほとんど任せています。業務の割合としては、今は自分の会社が15%、事業創造キャピタルが15%、新潟ベンチャーキャピタルが70%くらいですかね。新潟ベンチャーでは今年の6月に私もファンドの立ち上げから担当した新しいファンドがスタートし、現在投資などを実行している段階なので、それで時間がとられています。

 

 

―新潟ベンチャーキャピタルさんは、今どのような投資戦略を考えていらっしゃるんですか?

星野氏:私たちがもっているファンドは、基本的には地銀さんや新潟の事業会社さんから集めているので、新潟の経済に貢献できるようなベンチャーさんに投資しています。本店が新潟にあるのが一番いいんですが…。

新潟経済へのいい意味での影響を考えて、比較的業界は幅広く、レベル感もアーリーからレイターまでバラバラで入れていっています。ポートフォリオを結構拡散していっているのと、あとは、新潟にはメーカーさんや製造系の会社が多いので、IoT分野のベンチャーさんをひっぱってきてくっつけるというスタンスでも投資していますし、新潟出身で東京でチャレンジしている経営者が経営する企業にも投資していきます。そんな経営者が地元新潟に新しい刺激や、ビジネスを展開してくれることを目指しています。

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―新潟というエリアを区切った上できちんとイグジットできるようなベンチャーを見極めるとなると、結構大変ですよね。

星野氏:正直いって大変です。私が投資担当をしていたわけではないのですが、事業創業キャピタルで運用してきたファンドでは、正直あまりトラックもよくなかったですし、新潟ベンチャーで県から資金を預かっているファンドについては、雇用を生み出さなければならない事情もあり、ベンチャーで固定費を増やす事業戦略を書かせなければいけなかったりするので、結構難しい投資だったとは思います。

もちろん、信じて伸ばしていっている最中ではあります。

 

あとは、新潟でもともとある程度の規模で事業をされている企業の第二創業的なところで、イノベーションを起こしてガッと伸びるような案件がいいと狙っています。

(株)スノーピークさんがそのいい例ですが、新潟にはシェアトップを取って収益性が取れているメーカーさんがたくさんあります。売上が5億とか10億とかあがって安定はしているから、現在はアクセル踏まなくても…という会社さんに、なんとか上場の方に向いてチャレンジしていただくようなサポートをしたいと思っています。

 

 

―新潟出身以外、たとえば東京出身の人にも投資する可能性はありますか?

星野氏:もちろんあります。ただ、事業計画の中で新潟での事業展開が入っている、もしくは新潟にもってくることで新潟の産業が伸びるなど、なんらかのところで「新潟が絡んでいる」という条件がブレることはないですね。農業系などは、このような基準で選んでいる企業がいくつかあります。また、キャピタルで働く友人、知人も多いので、首都圏のいい案件についてはご紹介いただくこともあります。

 

 

―ここは投資しても大丈夫だという投資判断基準やその優先順位について教えていただけますか?

星野氏:本当に強いリソースを持っていたり技術力があったりすればもちろん評価しますが、ベンチャー企業の事業内容はもともと創造的、革新的であるので、正直、事業内容はあまり気にしていないです。それよりも、ボードメンバーを一番見ていますね。

投資を決定するまでに、私たちは経営者から、会社への想いや、その事業に取り組んでいる理由などについてじっくりと話を聞きます。そのときに、きちんと答えてくれるか、話がブレていないか、人を巻き込む力があるかなど、口先だけのやる気ではなくてちゃんと考えているかどうかを見ています。

 

 

―なるほど。今回投資決定されたFULLER(株)さんの場合は、経営者の方のどこがいいと思われたんですか?

星野氏:こちらは私が直接の担当ではないのですが、まず、ご本人含め、経営陣が新潟出身で「新潟で何かしたい」という強い気持ちをお持ちだったことです。現に地元からかなり人員を採用してましたし、開発拠点もつくっていくことを検討していたところです。自社のファンドの趣旨としてもとても合うだろうということで、この部分はすごく評価にプラスでした。
また、懇親会などで一緒に飲んでいろいろな話をする中で素の部分もよく知ることができ、若いながらもめげない方だと感じたことも高評価の要因です。

 

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会社:FULLER株式会社
設立:2011年11月15日
代表:渋谷 修太
事業内容:スマートフォンアプリ分析支援事業、スマートフォンアプリ開発支援事業
圧倒的なサンプル数で他社アプリデータを解析行う「App Ape Analytics」
アプリが誰に、いつ、どのくらい使われているのかを調査することが出来る上、他社アプリのアクティブ率、インストール推移、性別割合なども調べる事が出来る。

 

 

―いろいろと見極めて投資をしてこられたと思うんですが、投資の成功事例について聞かせていただけますか?

星野氏:(株)エルテスさんは、私が最初に担当した案件なんですが、上場してよかったなという気持ちがありますね。当社はレイターで入れたんですが、代表取締役の菅原さんご本人も自信とやる気、ボードメンバーの強化でも行政関連も考慮に入れた戦略的な取組み、バックボーンで優秀なメンバーが入っていくのも見ていたので、大丈夫だろうと思いました。

事業もこれから伸びる領域でしたし、あまりリスクは感じなかったです。どちらかというと、最後に入れさせてよ、みたいな感じでした(笑)。運も良かったです。

 

 

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会社:株式会社エルテス
設立:2004年4月28日
代表:菅原貴弘
事業:リスク検知に特化したビッグデータ解析によるソリューションの提供
同社はWEBリスクのコンサルティング会社である。「誹謗中傷対策」は日本初のサービスであり、同社がパイオニアとして確固たる地位を築く。今後は、サイバーセキュリティとビジネスインテリジェンスという2つの領域で、ビックデータを活用し、事業を拡大していく予定。

 

 

―投資二社目はどちらの企業だったんですか?

星野氏:こちらは直接の担当ではなかったですが、一緒に投資検討を進めました。(株)クリエ・ジャパンという会社で、まだ売上もさほど立っていないスタート時にシリーズAでの投資だと思います。ここは、パーソナライズド動画という個人向けにカスタマイズできる動画の生成エンジンを提供している企業です。

たとえば、生命保険会社さんが、既に持っている顧客情報をそのシステムにいれると、個人に合わせた動画が1本ずつ生成され「こんな保険に入ったほうがいですよ」というサービス内容を紹介する動画を作ることができるんです。システムの使い方はその他にもいろいろあるので、国内のこの分野ではここがトップシェアをとってもらいたいと考えています。

また、代表取締役が2人いらっしゃるんですが、そのうちのおひとりが新潟出身であり、(株)ディー・エヌ・エーの経営企画室長として上場経験がある方で、「新潟に貢献したい」という強い想いをお持ちだったんです。もうひとりの方もソフトバンクで孫社長の傍で働いていた方なので、経営者のお二人がともに特徴的だったというのも決め手となりました。

 

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会社:株式会社クリエ・ジャパン
設立:2010年2月1日
代表:南野智近
事業内容:Webサービス事業、ITソリューション事業、テクノロジーサービス(システム開発・運用)など
日本で初めて、かつ、唯一(※)のパーソナル動画生成ソリューションのPRISMの開発・運用や(※2014年11月現在、同社調べ)、ビーコンを利用した屋内・屋外ロケーションサービスを簡単に構築・提供することができるクラウドサービス「Tangerine」の開発・運用を行なっている。他にも事業企画や戦略企画などの上流工程からサービス開発、プロダクション環境の運用までワンストップでサポートを行なっている。

 

 

―逆に失敗事例をお聞きしてもよろしいですか?どんな意思決定だったからあまりよくなかった、という理由なども伺いたいです。

星野氏:やはり投資したときとその後で、すぐに事業プランがガラっと変わってしまった企業の場合、よい結果を出せていません。そもそもリソースがなかったり、経営者の方が事業に対してあまり思いがなく優柔不断だったりして、約束していたビジネスができなかったというケースですね。その部分をきっちり担保しないまま投資実行したことが失敗でした。リカバリーもかなり苦戦しています…。

 

 

―経営者の見極めは難しいと思いますが、多くの経営者の中で、この人は成功するだろう、または投資したいと思うポイントは何ですか?

星野氏:確かに難しいですね。いい人だから成功するわけでもないですし、すごく熱い人でも成功しない人はしないですから。ただ、私が見てきた中では、素直な人は成功しやすいと思います。事業に対しては想いを貫く部分も必要ですが、周りの意見を素直にどんどん取り入れていくタイプの人は、伸びていますね。もちろん、最終的な決断は本人がするところですが。

見極めるのは難しいので、できるだけたくさん会うようにしています。投資の話の場だけではなく、メールや電話なども含めてできるだけいろいろな話をする場をつくって、普段の様子なども踏まえて見極めることが大切だと思っています。

 

 

―これからいろいろ投資されていくと思うんですが、星野さんにとって、どういう投資家が理想ですか?

星野氏:全てをイグジットできたりIPOできたりしなくてもいいと思うんですが、ファンドを閉じるときに、それぞれきちんとイグジット切れる人はすごいなと思いますね。どんな投資先に対してでも、買戻しでも売却でも構わないんですけれど…。

投資するのは変な話、簡単ですし、いくつかいい案件入れればトラックも出きるとは思うんです。でも、出ない案件についてもきちんといい具合にクロージングかけていけること。私としては、そこを大切にしてファンド運営をしたいと思っています。

もちろん、リターンは出さないといけないですが、私たちのそもそものコンセプトが地方創生というファンドなので、ただ投資してダメだったらダメということで終わらせたくはないんです。イグジットであまりバリューつかなかったけれども、その事業がビジネスとして伸びて残っていく、というところをきっちりサポートできることが重要かなと思っています。

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―最後に、起業家の皆さんに向けてメッセージをお願いします。

星野氏:私自身、おもしろい会社をいっぱい作ろうという想いがあり、みんなでわいわいやれたらいいなと思って起業しているので、キャピタルとしてだけじゃなくてもサポートすることができます。ただ、支援する上ではやはり資金的なものも必要なので、その部分はキャピタルをうまく使ってもらいたいです。

あとは、いろんなベンチャーや事業会社さんと組んでやってきた経験があるので、他の独立系のファンドさんでいわゆるキャピタル(投資)だけやっているところより、かなり手厚くサポートできると思います。特に、「シリーズAくらいのところをBに持っていく」ところに力を注いでいきたいですね。

これからも、スタッフ、そして周りで上場した人なども巻き込んで、「これからスタートする人たちをいかに応援していくか」を考えていきますので、一般のキャピタルじゃないリソースが欲しいときなどには、ぜひお声をかけていただきたいです。