「忙しすぎる」という問題の本質
「成功は、シンプルから生まれる。」
これは、Google共同創業者セルゲイ・ブリンの言葉です。
「忙しすぎる」という問題は、避けられないものと思い込んでいませんか?
まだまだ「長時間労働」がやめられない日本。その中で生活していると、残業や休日出勤など、時間をかけることで問題を解決するといった発想になりがちです。
時間をかけて忙しさを解決しようとすると「とにかく頑張る」といった思考停止モードに陥ってしまいます。しかし、時間は有限です。今日という日が2度と来ないように、時間が経てば経つほど、生きることのできる時間は限られてきます。お金は増やせますが、時間は増やせません。
となると、「時間=限りある資源」と捉えることができます。目に見えないものであるがゆえ、ついついおろそかにしてしまいがちな時間。しかし、「忙しすぎる」という問題を時間で解決することは、そんな限りある資源を無駄遣いしているわけです。
労働時間と生産性のジレンマ
会社でのポジションが上がるほど、目を配るべき部下の数も増えていきます。すると、自分の仕事だけでなく、部下が担当するプロジェクトに目を配る必要もありますし、出るべき会議も増え、自分の時間を削りながら忙しく働く必要が出てきます。
もちろん仕事をしながら家事もこなすといった必要性も出てくるでしょう。仕事も家事もこなすとなると、仕事以外の時間も忙しさに追われる場面が多々出てきます。
ベンチャー企業で働く方々の中には、人数が少ない創業当時は圧倒的な成果を出せていたのに、社員が増え、目の行き届かない範囲が増えると、無駄な会議、無駄な作業やらで、創業当時のようなスピード感を持って成果を出せない。しかし、作業量は今の方が多いという方もいらっしゃるのでは?
このように、「忙しすぎる」という問題を抱える日本人は多いです。しかし、時間が有限である以上、時間を費やして問題を解決するといった方法には限界があります。
長時間働くことが美徳とされる日本。そのせいか、「仕事を頑張る=長時間働く」と捉えている人は多いです。しかし、長時間働くことは本質ではありません。仕事を頑張るとは、圧倒的な成果を上げることだとすると、時間をかける以外にも方法はあるはずです。
「忙しすぎる」という問題の本質とは?
「忙しすぎる」という問題の本質は、「生産性の低さ」にあります。
ここでいう生産性とは、「今やっている仕事をいかに効率的にこなすか」ではなく「時間という資源を費やして、どれだけの成果が得られるのか?」です。
ポイントは時間を”資源”と捉えているところ。
たとえばあなたが80歳まで生きるとして、「あと何年生きるか?」「あと何時間生きるのか?」と考えたことはありますか?
冒頭でも説明した通り、時間は限られています。その時間を有効活用し、どれだけの成果を上げるのかこそ、真に考えるべきと言えます。
最近では、ロボットや人工知能の登場によって、「淘汰される仕事」が議論されるようになりました。身近なものでいうと、スーパーのレジや、小売店の販売員など、自動化しやすい仕事が代替されると言われています。
また、自動化とは無縁そうな知的労働すらも代替される可能性があります。例えば、IBMが開発した「ワトソン」という人工知能は、2000万件の医療論文を学習し、たった10分で患者の病名を診断したそうです。
専門的なスキルを持った医者や弁護士などの知的労働者は、職の上では安定と言われていましたが、そういった高度な知識を有する職業人も、人工知能にはかなわないのです。
また『ワーク・デザイン これからの〈働き方の設計図〉(著)長沼博之 』によると、”FacebookやGoogleでさえ「Good natured person( いい人、好人物)」を雇おうとしている”という話もあります。
これは、何を指しているか?
それは、”天才的な知能や高度なスキルは、それが必要な時に、 世界中の70億人の中から選んでアウトソースすればいい”といった考え方を基本に、に加え、人間の能力をはるかに凌ぐ、人口知能に任せればいいといった考え方に移行してきているということです。
つまり、「自動化のしやすさ」ではなく、人間よりもロボットがやった方が生産性が高い仕事ほど、代替されていくということなのです。
逆に、ロボットや人工知能がやるよりも、人間がやった方が生産性の高い仕事はこれからも残り続けます。知識を中心とした仕事よりも、その人の人柄や旅・遊びといった人間にしかできない経験を必要とする仕事が、これからは生き残っていくと言われています。
つまり、生産性を高くするサービスや工夫は即座に取り入れ、空いた時間を、より人間らしい活動に費やすことこそ、忙しさから脱却し、生産性を高めることにつながります。
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生産性を上げるには、「時間を制限する」
では、生産性を上げるための具体的な方法はというと、「時間を制限する」ことです。
「残業してもいい」という気持ちから、時間は有限にあると思い込み、生産性は低くなります。ではなく、「定時までに終わらせる!」と決心し、その限られた時間の中でいかに成果を上げるのか考えてみましょう。すると、今まで残業していた時間は、より人間らしい活動に費やすことができます。始業式1週間前になって、今まで遊んでいたのが嘘のように宿題を必死に終わらせようとしますが、それと一緒で、時間の制限という”締め切り”を設けてあげると、生産性は上がります。
今まで5時間かかると思っていた仕事も、意を決して3時間という締め切りを設けてみると、意外と終わるものです。まずは時間を制限し、働く時間を減らしてこそ、「忙しすぎる」という問題を解決できるのではないでしょうか?
そしてもう一つが、「やらないことを決める」ということです。
優先順位の反対の言葉に「劣後順位」という言葉があります。
P.Fドラッカーは自著「創造する経営者」の中で“優先順位より劣後順位を決めることの方が難しく、そして重要である”と述べています。
ロボットや人工知能がやった方が生産性が高くなる仕事ほど代替されると述べましたが、今やっている仕事は、本当にあなたがやるべきことでしょうか?
目の前の仕事に対して、それって本当に大事?と問いかけてみてください。
昨今、「ライフハック」など、いかに効率的に仕事をこなせるかが話題に上がりがちですが、そもそも、本当にそれはやるべきことなのか?という根本に立ち返り、問う癖をつけると、やらなくていいことが見えてくるはずです。
また悪者のように扱われてしまうロボットや人口知能ですが、勤勉な日本人が陥る「忙しすぎる」という問題を解決するには、不可欠な存在です。
そういったロボットや人口知能をうまく活用し、空いた時間を自分が真にやりたいことに費やしてこそ、より人間らしい生活を送ることができるのです。