CFOroad ベンチャー4社・若手経営者対談【後編】

前号に続き、上場企業、ベンチャー企業の今後を担う若き経営者の対談記事・後編です。

公認会計士・学生企業・証券リテール営業など様々なバックグラウンドからベンチャーに飛びこんだ経緯、上場後の組織などについて本音を語っていただきました。

 

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(写真左から)

  • 株式会社バンク・オブ・イノベーション 執行役員CFO 河内三佳 (1985年8月31日生)
  • 株式会社ファインズ 取締役管理本部長 水野貴弘 (1985年9月13日生)
  • 株式会社リアルワールド 経営本部統轄マネージャー 井上健 (1985年10月4日生)
  • 株式会社マイネット 執行役員CFO戦略室長 嶺井政人 (1984年9月29日生)

 

■資金調達後の使い方とは?

 

嶺井: 井上さんのところの今後の資金の使い方はどんな感じなんですか?


井上:
 目論見書を見て下さい(笑)


嶺井:
 ですね(笑)。弊社でいうと2014年3月にセガネットワークスさんから資金調達をしました。結果的に資金調達でとどまらず、業務面でも大きな取り組みもいくつもさせて頂くことになり、弊社の成長に直結する良い資金調達となりました。資金調達や提携により既存事業も強固にすることが出来、いまの運営グロース事業の立ち上がりにも寄与しました。先日のイグニスさんのスマホゲーム買収の資金もその調達から捻出出来ています。ファイナンスの力を使って事業を伸ばすことが出来、とても良い資金調達だったなと思っています。


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河内:
 資金の使い方としては、現在BOIは150人を超えて・・・


嶺井:
 もう150人もいるんですか!?すごいですね!


河内:
 そうですね。規模を大きくするために、まず採用を加速させましたからね。会社規模が大きくなった今、どのプロジェクトに投資するかの意思決定が重要だと思っています。会社の短期目標が上場することですので、10年後を見据えた投資ももちろんしますが、今は利益を重視していますので、上場した後もQ単位で利益が右肩上がりになるように投資していくプロジェクトの組み合わせを考えていく必要があります。上場時の資金調達の資金の使い方としては、より長期的な視点も加わり、その時の会社の状況にあわせて何に投資するかを検討していくことになると思います。

 会社のフェーズにより、お金の使い方は大きく変わってきますね。


水野:
 ファインズは、現状は外部からの資金調達とかしていません。今までのビジネスモデルですと大きな投資を必要としなかったため、銀行借入による調達を行っていましたので、、現時点ではエクイティファイナンスは実施していない状態です。かといって今後まったくしないという意味ではありません。弊社の理念が「未知を周知にする開拓者であり続ける」ですので、今後売上が100億、1000億になっても、必要であればファイナンスをして新規事業に投資をしていきます。現状では、もしファイナンスをする際は嶺井さんが言っていたような形で事業会社との資本業務提携を上手く活用していきたいと思ってます。業務上でシナジーが生まれる、winwinになれる関係を構築していきたいですね。


嶺井:
 新規事業でですか?(笑)


水野:
 そこは、年末以降を楽しみにしててください(笑)

 

■理念と利益 投資家と企業のずれ


井上:
 先ほど河内さんがまずはQ単位で利益を追求していると言ってましたよね?それって理念と利益どっちを重んじるかという考え方があるなーと思っていて、たぶん上場準備期間って利益をしっかり追っていかないといけないと思いますが、社内ではどんなコンセンサスを取りしました?利益を取るために新規事業をあまりやらない判断って難しいんじゃないですか?


河内:
 そうですね。新規のプロジェクトは当然やるのですが、今は、すぐに利益がでないような新規プロジェクトには多くの資金を割けない状況です。これに関しては、会社の短期目標を伝えて、その目標達成のためには、利益がいくら必要で・・・というように、社内メンバーに理解してもらってます。

 上場後のQ単位の利益をできるだけ右肩上がりにするために、収益化するタイミングの違う新規プロジェクトについて、どのプロジェクトをそれぞれいつのタイミングで開発を開始するか・・・、といったプロジェクトの組み合わせが今は重要ですね。上場後に、利益が大きく上がる月もあれば、大きく下がるような月もあるような感じだと、投資家が離れていき、株価が安定せず、やりたいタイミングでエクイティファイナンスができなくなってしまいますので。


井上:
 経営陣の中で直近の目標としてIPOというところは共有できたという事ですか?コンセンサスは取れてました?


河内:
 そうですね。私が入社するタイミングで既に、IPOの方向で話が進んでいましたし、現時点では、短期・中期・長期の経営戦略の一覧を作成しているのですが、そこでの短期目標をIPOとしています。

 10数年後に向けた大きなストーリーを実現するために、直近でIPOして株式市場に出て、一気に規模を大きくすることが重要と考えてます。


井上:
 新しい事に挑戦する時に上場会社だと開示しないといけないじゃないですか。当たり前ですが。社内でビジョンを共有することは非常に難しいですが、外部とのコンセンサスも難しいですよね。それは上場準備中から感じてました。社内と外部の認識がめちゃくちゃずれていたらブランディングなどにも影響してくるわけで、市場はどうみるか?投資家はどう判断するかといったところも一歩踏み込んで考えるようになりましたね。

 

■課題、CFOの定義

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水野: 今直面してる課題とかってあります?


井上:
 んーー課題っていうとみんな若いんで、企業としても個人としてもあらゆる事が課題になっちゃう気がしますね〜(笑)一つ、個人として課題というか頭に留めている考え方があってよく会計士が集まる会で話す事は「なにかひとつ自分のモチベーションの琴線に触れるものを持つ」という事ですかね。これをすれば自分をモチベートできるという事を持っておかないといけないと思っていて、私の場合自己紹介の時にも話した35歳で想像もつかないような自分になるという事で、それを改めて意識すると焦るわけですよ!だって同年代ですごい人いるじゃないですか。同年代ってあれですよ、レディーガガ(笑)あと一つ上ですがザッカーバーグ!!


嶺井:
 そう。ザッカーバーグ84年生まれなんですよね(笑)


井上:
 そうなんですよ(笑)同い年でものすごい人がいる中で全然レベル追いついてないじゃないですか。35歳でイケてるって思われたいじゃないですか。自分はそれが一つ琴線に触れたので、転職という道を選びました。ベンチャーとは無縁の人がベンチャー業界に興味を持つんだったらそういった琴線みたいなものを一個もっておいた方がいいと思いますね。


水野:
 井上さんはキレッキレじゃないですか、イケてますよ(笑) 私が今まさに強烈に意識している事が一つあって、元クックパッドCFOの成松さんが仰っている、「CFOの役割は信頼の中心にいて、周りと信頼を繋いで行くこと」と言う言葉ですね。問題が出てきた時の調整役になる事もそうだけど、事業を組む時に人を連れてきたり、社外との信頼を繋げられているか、そういう点はものすごく意識してますね。


河内:
 リアルワールドさんは今年上場して株式市場に飛び込みましたよね。BOIはこれからなんです。今は製品市場であるアプリ市場のみ関わっていますが、今後は株式市場にも入っていきます。そのため、投資家からの見え方などを意識して、しっかり対応していくことが課題ですかね。あと、直近は利益重視ですが、上場後は、海外投資家も意識しEVAなど企業価値を年度ごとに測定していくという視点も入れないといけないと感じてますね。

嶺井: マーケットと企業の橋渡しがCFOですもんね。私が証券会社時代、資本市場部というところにいて、公募増資とかの案件に関わっていたんですが、投資家と良いリレーションを作れている企業はしっかり資金の調達ができるし、良い株価がつきますよね。

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嶺井: 私の中でのCFOの定義ってファイナンスを使って事業を伸ばす人。いろんな会社を見てもファイナンスを上手く活用出来ている会社って伸びているんですよね。一番上手く活用しているのはやっぱりソフトバンク。ファイナンスの力で大きく伸びた会社の典型ですね。ソフトバンク以外にも上場時にしっかりと資金調達したことで伸びた楽天やサイバーエージェントもそうですよね。ベンチャーってファイナンスの力で大きく伸びるんです。私のバックグラウンドはファイナンスと起業家なので、だからこそ私自身がファイナンスを活用して事業を伸ばしていきたいなと。CFOとしての成長、そして醍醐味はそこにあると思っています。


河内:
 ファイナンスを利用して企業価値上げるのはCFOの役割なので、ファイナンスをうまく使っていきたいですよね。


嶺井: 
あとCFOは事業をレビューするだけじゃなくて事業を作るっていう主体性が大事なんじゃないかなぁと。CEOが事業を考えて、CFOがエクセル叩いて数字を出して銀行やVCと交渉して必要な資金を集めてくる。ただそれだけをやるのってCFOが事業を作っている印象はなくて、私がCFOとしてありたい姿はCEOの目指すビジョン、事業をCFOがファイナンスの力を使い、例えば3年前倒しするとか、そもそもCEOが想像していなかった事業を実現するとかです。それが出来ることがCFOの醍醐味だし、経理・財務担当者との違いと思います。それがファイナンスの力で事業を伸ばすという事。私自身で事業を考えてファイナンスの力で事業を伸ばしていきたいですね。