ASEANの貿易自由化、「ネクストチャイナ」の探求など、これからのエグゼクティブにとってアジア進出は、大きなチャンスでもあり、課題だと認識されています。
しかしながら、過去のアジア進出と違う点は、アジアを工場と捉えるか、市場と捉えるか。そして、その違いがビジネスパーソンに対して、どのような影響を及ぼすのか。
アジアでの進出支援や採用支援を手がける株式会社ネオキャリア代表取締役社長の西澤亮一氏に、アジアで成功する人材の条件を聞いてみた。
海外で活躍する方には「3つの能力」
西澤:海外(アジア)で働くことが“厳しい”ということは間違いないのですが、イコール“活躍する”という訳ではありません。
海外で活躍する方には「3つの能力」が求められます。
1つ目は、「飛び込む覚悟と勇気」。
西澤:現在弊社では、シンガポール・タイ・インドネシア・フィリピン・ベトナムに現地法人を持ち、アジアで活躍したい方に対して就職支援をさせて頂いていますが、応募をされる方の中で海外に飛び込むための「覚悟と勇気」を持っている方は、正直なところ3割程度しかいらっしゃいません。
例えば「明日からでもインドネシアに飛びます!」みたいな気持ちですね。
「海外で働く」という言葉のイメージは、未だに”かつての商社駐在員“というようなイメージが大半を占めていて、どことなく「日本が上で、アジアが下」という固定概念が払拭できずにいるようです。駐在手当や住宅手当などがあり、日本と同等かそれ以上の給与がもらえると思っている方も少なくないのではないでしょうか。
- 駐在手当は無いのですか?
西澤:昔は手当が出るのが普通でした。アジアが工場として機能していて、日本が市場の時代は、ですね。
しかし、これからはアジアの方が大きな市場になっていく時代です。現在、海外への進出が著しいのはサービス業です。つまり、高い給与の日本人が工場長で、ローカルスタッフが工員という図式は成り立ちません。
採用に関しても、これまでように「日本で採用して現地に駐在する」のではなく、「現地企業が現地の水準で採用する」のが当然となっていきます。ですので、多くの場合、日本水準の給与や住宅環境ではないことになります。
その“厳しい”環境に飛び込むのには、「覚悟と勇気」が必要になるということです。
しかし一方で、将来性を考えたらどうでしょうか。
少子高齢化が進み、人口が減少する日本。人口が増加し、市場が拡大するアジア。
もちろん、確約はありません。
“将来性”という意味でも、「覚悟と勇気」が必要になるわけです。
2つ目は、「あきらめない忍耐力」
-海外で働くうえで、何が一番大変だと思いますか?
- やっぱり言語の壁でしょうか?
西澤:違いますね。
私も初めはそう思っていました。でも、言葉の壁はコミュニケーション力や努力さえあれば、大した壁にはなりません。
それ以上に、実際に海外で仕事をしていて痛感するのは、「リラックスできる時間が少ない」ということです。
日本であれば、例え仕事で大変な時期があったとしても、休日に友人と会うなど、リラックスできる時間があると思うのですが、海外にて独りで立ち上げをする場合などは、友人が少なく、リラックスできる時間が少ないことが一番の壁になります。
実際に、海外駐在員のうつ病発症率は、日本国内の3倍という調査結果もレポートされるくらいです。
例えリラックスできる時間が少なくとも、「なぜ自分は海外で挑戦しているのか?」という目標を思い出し、その目指すべき目標の実現のためだけに時間を費やすことが出来る方でないと厳しいと思います。
- 現地での友人は作るのが難しいのですか?
西澤:3つ目に繋がるのですが、海外では意外と「相談する相手」が少ないのが現実です。
もちろん現地で働いている友人はいるのですが、「海外で働いているから成長している」という錯覚に陥っている人も少なくありません。
海外で働いていても、結局のところルーティンをしているだけ、他の国で成功したモデルを新しい国で展開しているだけ、という方もいらっしゃいます。
ただ、言語が違い、市場が小さくて、インフラがあまり整っていないところ―それだけであれば、日本の地方都市でやっているのとあまり変わらないですよね。
3つ目は「自分で考えて行動する力」
西澤:日本本社の指示を待つのではなく、自分が現地法人の責任者として、自ら考え、自ら行動する。
現状を周囲と比べるのではなく、自分が実現したいと思っている目標と比較する。
例え教えてくれる先輩がいなかったとしても、自ら本を読み、学び、実践する。
まさに起業家精神と同じですね。
株式会社ネオキャリア 代表取締役 西澤 亮一