パート・アルバイトを含めると700人を越える会社で、正社員は230名。
そのうち女性社員は8割という、いい意味でも悪い意味でも、完全な女性社会の会社だった。
大手証券会社出身で20代の役員が会社に来たということで、私はすぐに女性社員の噂の的になった。・・・もちろん敵としてである。
女子高にイケメンの大卒新米教員が赴任してきたらおそらくラブレターの嵐かもしれないが、会社の業績は極めて厳しい時期。
誰がどう見ても株主や銀行から送り込まれたスパイか、少なくとも安寧な毎日に脅威を与える、女性にとってはもっとも憎たらしい敵だと思われたことだろう。実際、スパイではなかったが銀行系VCの要請で経営の立て直しを引き受けCFOに就任したので、私はこの女性たちの何人かに対して厳しい態度を取らざるを得なくなるかもしれない立場だった。敵として異物とみなされ、排除されるのが当然である。
そんな私がなぜか、本タイトルである「部下の女の子からデートに誘われた時、エグゼクティブは応じてもいいの?」というようなことをこの会社で悩ましく思うようになり、そしてドツボにはまることになった。
女性は怖い、そして現実的だ。
そんな当たり前の、誰でも知っているはずの事実を、ふと書き留めてみたくなったので世のエグゼクティブの皆さんと共有してみたい。
敵として迎えられた“女の戦場”
私の主な役割は経営の立て直しとエクイティの出口戦略を模索することだったので、就任早々すぐに財務諸表を頭に叩き込むことになる。
しかし会社は、その主要な事業に工場生産があったにも関わらず、月次決算は月末に締めて数字が判明するのが翌月の25日という有様だった。その数字を分析し役員会を招集するのはさらに翌月の5日。
つまりこの会社では、1月の月次に基づく役員会を3月5日に開催し、どうして儲かったのか儲からなかったのか。営業成績の進捗具合はどうだった、次はこうやります、という確認事項が決まるまで1ヶ月以上の時間が掛かっていた。
生産管理が生命線である製造業において、この実態は致命的だ。
しかしさらに致命的だったのは、日次の生産管理が全くできておらず、毎日完成品をいくつ製造し、仕掛品が何日分存在し、製造コストはどれくらい掛かっているかなどが把握されることはなく、全く経営課題になっていなかったことだ。
概算でも良いので、そのような毎日の数字がなければ会社の予実(予算と実績)管理は機能するはずがない。
そんな状態で予算を立てたところで、上辺だけの会話が繰り返されるに決まっている。
その現状を把握した私は、すぐに全社の製造指示を設計する、設計部門の責任者の30代なかばの女性に連絡を入れ、会いに行くことになった。
工場の日々の生産管理を、少なくとも翌日昼までには可視化してコストの傾向を把握する仕組みを作ること。そのためには、工場のどこに、どのような形で数字が管理されており、それをどのように可視化する仕組みに変えることができるか、そのシステムを作りに行くためだ。
それには、彼女の協力が欠かせないと考えたからだが、そうはうまく話が進むわけがなかった。
初対面の挨拶で口を開いた私の言葉が終わる前に、彼女は怒気を含んだ声でいきなり言い放った。
「何をしに来たんですか?」
挨拶もさせてくれない、なかなかすごいクロスカウンターだ。
「言いたいことはわかっています、数字を出せと言うんでしょ?」
「今私達が日報を何種類書いていると思っているのですか?」
「ただでさえ足りない人手の中で、終業後に1時間書けて皆が書いているのに、また報告書を増やせと言いに来たんですよね?」
「偉い人はみんなそう、報告書を書けと言いに来るのに、中身は全く理解していない。それどころか読んでいるとも思えない。」
「あなたにこの仕事のことが本当にわかるんですか?」
罵詈雑言の機関砲だ。だが正論だ。
もっと口汚い言葉でおそらく30分ほど罵られ、かつ会社の上層部に対する不満不平を聞かされ続けただろう。そしてひとしきり不満不平を言って怒りのテンションが上りきった彼女に、私は一言だけこういった。
「私は、そんなあなたとあなたの部下の仕事を助けるために、この会社に来ました。」
「はぁ・・・?」
そういうと彼女は、すごい勢いで並べ立てた罵詈雑言のバーゲンセールを急にやめて、私の顔をじっと見つめた。私は黙って、恋人時代の妻にだけは見せていたであろう優しい目をして彼女を見返し、必至に警戒をとこうとした。
「そんなこといった偉い人は初めてやわ。で、今日は何をしに来はったんですか。何をすれば良いんですか」
「私が今日ここに来た用件は全て終わりました。現場責任者のあなたが何に問題意識を持ち、どのように会社を変えたいと願っているのかを知るためにきたので、聞きたいことを全て聞かせて頂きました。ありがとうございます。」
「あんた、変な人やな。で、この状況をどう変えてくれるの?」
「そうですね、できればまず、毎日1時間書いているという日報を全種類1週間分と、その報告書の元になっている数字のある場所を教えてください。明日で結構です、お忙しいと思うので、今日は現場に戻って仕事を続けて下さい。」
「そんなんでいいんか?明日までに準備しとくわ。」
彼女がスッキリしたという顔で、少し上機嫌にも見える顔を見せてくれた。私もそれに笑顔で答え、最後に“女性しか居ない”彼女の部下たちに向かい、フロア中に響く声で、
「皆さんお邪魔しました、明日またお邪魔させて頂きます」
と声を掛けたが、返事をするものはおろか顔をあげるものすら一人も居なかった。前途多難というレベルではないが、1歩だけでも前進できた手応えは感じた。
現場を味方に取り込む
翌日私は、約束の時間に設計部門の責任者である件の女史に会いに行った。一日経てばまた怒りを溜め込んでいるのではないかと内心ヒヤヒヤものだったが、彼女は約束通り1週間分の日報全種類を用意し、その日報の数字を書き写しているPC画面を開いて待っていてくれた。
早速調査にはいると、現場の実態はかなり悲惨なものだった。
まず日報は主なものだけでも3種類、しかも同じような数字の内容を製造部長、事業部門長、社長の3人に、違う書式でエクセルにし、2人にはメールで、1人にはFAXで送っていた。そして更に酷いことに、数字は、全ての書式にPCの画面を見ながら別ウインドウでエクセルを立ち上げ、目視で1時間掛けて打ち込んでいた。
こんな酷いことをさせられていては、私が登場すれば4枚目の、同じような書式の報告書を要求されると警戒するのも無理はないだろう。上層部に怒りを感じるのももっともだ。
「まだまだお聞きしたいことはあるんだけど、ちょっと1時間ほど、隅っこをお借りしていいですか?」
私はそういうと、その場で3種類の書式を全て自分のPCに取り込み、経営に関して社長、事業部長、製造部長の3人の階層全員が「知るべきではない」情報が含まれていないことを確認して、これら大差のない書類を1枚の書式に集約した。3枚の書類に記載のあった項目全てを1枚の書式に盛り込んだというわけだ。
さらに、数字の情報の基になる画面を開きcsv形式で吐き出させ、それをやはりPCに取り込み、csvからこの新しい書式にボタン一つで一瞬で転写するマクロを組み、「製造報告書」という書式にまとめ上げると、「社長、事業部長、製造部長」3人に一斉同報するメアドをサーバーに設定した。
そして設計部門の責任者と部下の女性たちを呼び、報告書に関してはこれからこうして下さいと説明し、サーバーからcsvを吐き出す方法を教え、それをエクセルに設定したボタンを押すことで一瞬で転写する新しい仕組みと、それを一つのメアドに送信すれば帰っても良いという新しいルーティンを説明した。
「ちょっと、なにこれ!?」
「すごい、魔法やん!」
「私ら今まで何してたんよ!!」
彼女たちはほんとうに驚き、自分たちが無駄な作業から開放されたことに目を輝かせて喜んでくれた。そして昨日、私を心から憎み敵視していた設計部門の責任者の女性は、
「良いかみんな、よく聞き!この人は私らの味方やで。この人、使い倒して、これからも困ったことは全部この人に相談しようや!」
「この人が何か質問してきたら、ちゃんと答えてあげて。仕事の手を止めてもええで!」
と部下たちに指示してくれた。口は悪いが最大の賛辞だった。裏を返せばこの人はきっと、私がなにか言ってきても無視をするような指示をしていたのだろう。だからこそこのような言い方になったと言っているようなものだが、そこは敢えて突っ込まずに、指示に感謝した。
たったこれだけの簡単なことだが、私は自分の要求を言わずに、まず彼女たちの役に立てることを証明しただけで、わずか1日で会社の8割を占める女性社員のほぼ全員を味方に取り込んだと言っていいだろう。
そこから自分の要求を通すことは極めて簡単だった。
他も製造部門のサーバーにおいて、日々の製造原価を管理する上で欠かせない情報がいくつも死蔵していることを発見し、それを同様にcsvで吐き出しボタンで一瞬で転写できるマクロを組み、私が知りたい経営情報に置き換えるエクセルとして、社長と私に毎日届くような仕組みを作ることができた。紆余曲折はあったが、スタート地点に立つことは出来た。
なお、人間関係ができた後に聞いたことだが、設計部門の責任者の女性はやはり、
「最初、あんたには仕事をさせずに追い出すつもりやったんやで。」
と、後日語ってくれた。お局様というと怒られるかもしれないが、現場を実質的に支配する女性は、やはり恐ろしい。
CFOが堅持するべき「現場第一主義」
私には経験値の中で確信した、一つの信念がある。それは、CFOこそ現場に足を運び、数字のもとになる毎日のルーティンを把握し、誰よりも現場に精通しなければならない、というものだ。上から見下ろし、数字を俯瞰するのは無能なCFOでもできる。
いや、無能なCFOこそ、数字を俯瞰してきれいな理由をつけ、「これが経営分析である」と頭の悪い満足感に浸っている事が多いものだ。そのようなCFOは、マクロでの数字の変遷を説明し、大きな理由を説明することはできても、製造機器別の消費電力の大きさの順番やその稼働時間の組み合わせなどは絶対に把握していない。
また事業用の電気代の決まり方は、消費電力量だけでなく最大電力需要、すなわちデマンドで決定されることすら知らずに、電力とガスをどのように組み合わせれば光熱費を最小化できるか、という考え方があることすら知らない。時には、製造機器の稼働時間の組み合わせを工夫し、製造工程を30分ずらすだけで1年の利益が1億円増える事があることにも、全く思い至らない。
上辺だけの、顧問税理士にもできるような経営分析しかできないCFOは、CFOではない。
言うまでもないことだが、数字には全て理由がある。
少なくとも、製造原価計算書と損益計算書の勘定科目のうち、上位10項目程度は、毎月の勘定科目明細全てに目を通し、そのコスト構造がどのように決定されているのか、現場に足を運び、把握することが最低条件だ。
さらにそれを現場にフィードバックするだけのCFOは並以下であり、現場とともに解決策を考えられてやっと普通のCFO。
有能なCFOならば、コスト構造を分析し、そのコストの決まり方までを把握して、現場の責任者にそれを噛み砕いて説明し、一緒に解決策を考えるだろう。
日々の製造で忙しく、製品のクオリティに最大限の責任を持つ製造責任者は、電気代の決まり方を知るはずもないし知らなくても良いからだ。
この例で言うとCFOは、最大電力需要で電気代が大きく変わることを理解すれば、製造機器ごとの電力消費量を調査して(電力会社に依頼すれば簡単に実値を調査してくれる)、さらにその機器ごとの稼働時間をグラフ化して、電力需要が最大になる時間帯と最小になる時間帯もグラフ化することができる。
そして製造機器の稼働時間の組み合わせによっては大きく利益が変わる事実を明らかにした上で製造部門長に会いに行き、「このような理由で、製造工程をこのように変えることはできないだろうか」と相談をする。
これが現場第一主義のCFOのあるべき姿だ。
もし、「それは経理部長の仕事ではないのか」という人がいれば、それもやはりCFO失格だ。
会社の財務に責任を持つ覚悟があるなら、会社の金の入出金は全て自分の守備範囲だ。
もしあなたが、部門ごとに役割分担が厳格に決まっているトヨタや三菱重工の財務担当役員であればお詫びするが、きっとこの原稿を読んでいただいている人のほぼ100%の会社では、経営トップとCFO以外に会社の数字を十分に理解できている役員などいないはずだ。
別の稿でも書かせて頂いたが、「ベンチャーでは、やれる人間がやる 肩書は目安」だ。数字に精通しているなら、数字のことはなんでも自分の守備範囲にしなければならない。
だがこんな「現場第一主義」にも困ったのか嬉しいのか、よくわからない戸惑いがある。
特に、女子社員率80%を越えるこの会社では、現場に足を運び、不満を聞き問題を一緒に解決し、彼女たちを無駄な残業から開放して(サビ残の会社であればなおさらだ)、スーパーマン扱いされると、正直頼られるようになった。
就任から1年もすると、20~30代の女性しかいないような各部門の飲み会にも漏れなく誘われるようになり、彼女たちはお酒の勢いもあって飲み会の席で、私に会社の不平不満をぶつけてくるようになってきた。
もちろん飲み会の席なのでその全てを真に受けるべきではないし、彼女たちもそんなことは期待しているわけではないが、現場の意見に真摯に耳を傾け、相手の目を見つめてその全てを(改善につなげるため)肯定的に聞く作業をしていると、やはり頼りにされる。
それは役員として慕われ、頼られるようになった証拠であり、従業員全体への奉仕者である役員としては誇らしいことなのだが、中には個人的に親しくなろうとする女子社員も、出始めた。
キャバクラであれば間違いなく喜んで同伴するところだが、CFOは会社全体への奉仕者だ。
部下や会社の女性からデートに誘われたら、エグゼクティブは応じても良いのだろうか。
正直これはかなり悩ましかった。
とりあえず応じてみたらどうなるか
既婚の身であるので、若い独身女性と2人きりでのデートなどケシカランと、世の女性のお怒りを買うのは間違いないだろうが、結果として私は、現場の問題を拾い上げる中でキーマンであった女性二人とデートした。
終業後に、工場の生産現場をつぶさに説明してくれた同い年の女性に、20時を過ぎていたこともあり、お礼に近くの寿司屋で晩御飯をおごったのが始まりだっただろうか。
多くの場合、CFOは社内で孤独に過ごしているので、仕事の成果を共有し、達成感を分かち合える関係は男性・女性に関わらず心地良い。私もプライベートの線引きはかなり曖昧になっていたはずだ。
その後何度かメールが来るようになり、ついには仕事中まで、
「今日のネクタイとシャツの組み合わせ、素敵ですね!」
「男性がベストの毛玉を取っている姿は、あまりかっこよくないです。かっこよくして下さい!」
といった、仕事に全く関係がないメールが来るようになり、また食事に誘われることもあるなど、戸惑いながらも悪い気はせず応じていたが、そんな空気は周囲に伝播しないはずがない。
そのうち私は例の「お局様」から、話があるので会いたいと呼び出されると開口一番、
「あんた、女の子探すために現場に来てたんか?」
と強烈な一言を浴びた。
やばい・・・完全に全部バレてる。
いや、やましいことは何一つ無く、実際に私はデートした女性2人に指一本触れていないのだが、このお局様の立場では、自分の部下のうち特定の女性とだけ親しげに見える取締役CFOなど、社員に対して不公平な、言い換えればただのスケベオヤジであったのだろう(もっともこの頃はまだ30歳そこそこだったが)。
私は、下心などなく何度か食事をしたことを素直に認めたが、彼女の怒りはなかなか収まらず、暫くの間、仕事に支障が出るほどにコミュニケーションが難しくなってしまった。
軽い気持ちで特定の女性と2人で食事をしたことで、積み上げ勝ち取った信頼を一瞬で崩す寸前まで追い込まれてしまった。
また後日、デート相手だった同い年の女性から「会って話がしたい」と言われた私は、昼休みの時間にランチで会い、話を聞くことにした。
「私、今度結婚することになったんです、それをお伝えしたくて・・・。」
「おー、そうか良かったな、おめでとう!」
「今日はそれだけを伝えたくて、今まで楽しかったです、ありがとうございました。」
「ん・・・・ん?」
「一緒にいた時間は楽しかったけど、私だって結婚したいんです、結婚したかったんです。」
「あぁ、うん・・・?」
私は、彼女の中では完全に恋愛対象になってしまっていたようで、この後彼女は目に涙を浮かべながら詫びの言葉を繰り返す。
「そんなつもりはなかった」といえば、この状況はかなりヤバイ。
かといって「ボクは寂しいよ」などというリップサービスはかなりの悪手だ。
彼女の気持ちと、私に求めている言葉を読むことができない、かなりのピンチに私は脳をフル回転させて、
「良い結婚になると良いね。君が選んだ男性だから、きっと素敵な人なんだろうね。」
と、全否定にはならない、曖昧なセリフを絞り出した。
すると彼女は、更に衝撃の事実を告白した。
「はい、実は○○さん(お局様)から紹介された1つ年上の人と、結婚することになりました」
聞けば、今まで男性との交際経験がなかった彼女のために、お局様は世話を焼き、結婚相手にふさわしい交際相手を探し出して、彼女と引き合わせたそうだ。
そんな相談に乗ってもらっており、しかも彼女は私を疑似交際相手のように感じていたのであれば、お局様にどんな事を言っていたのか、恐ろしい事実は容易に想像がつく。
私はこの後のお局様との人間関係の修復が容易でないことを悟り、とりあえず彼女には祝意を伝え、ワリカンでランチのお店を後にした。
敗戦後日談
拙い経験から当たり前の結論を言うと、社内の女性からデートに誘われたら、エグゼクティブは応じるべきではない。まして、恋愛を期待している相手であればなおさらで、社内の女性と個人的に親しくなりながら適切な距離を保つには、普通に仕事をこなす10倍はリソースを使い、気を使う。
仕事の効率と仕事の成果、その関係性の中で気を使えばいい人間関係の中に「個人的感情」が絡んでくるのだから当たり前だ。
しかもその人間関係は周りに伝播しないはずがなく、その中で生まれた偏見はやがて「えこひいき」「不公平」といった、人間の持つ負の感情の中でもっとも強烈な「嫉妬」を生み出す。
今から20年ほど前だろうか、私は独身の頃付き合っていた女性が、駅前留学のキャッチで売上を伸ばしていた英会話スクールに新卒で入社したのだが、彼女いわく、その社長は社員の女性を次々に愛人にして、その女性たちばかり出世させていると私に愚痴をこぼしていた。
事実関係を推し量る手段は無く真相は不明だが、全体に対する奉仕者であるはずのエグゼクティブが社内に個人的感情を持ち込むと、事実か事実無根であるのかは関係無しに、人間関係は崩壊する。もちろん組織も崩壊する。
繰り返すが、事実関係はわからないものの、その後、駅前留学のキャッチで売上を伸ばしていたその会社は会社更生法の適用を申請し、代表取締役は解任された。事実関係に関わらず、新卒1年目の女性社員にすらそのように思われていた人がエグゼクティグであったのだから、会社がもつ訳はない、といったところだろうか。
いくら個人的に女性と親しくなりたくても、独身で倫理上問題がない場合であっても、彼女がほしいならエグゼクティブは社外に出会いを求めて欲しい。
仕事をしっかりこなし、その上でまだそんな元気が有り余っているのであれば、1時間7000円も払えば現役の賢明な女子大生が、仕事帰りの私たちと一緒にお酒を飲んでくれるお店があるので、そちらを利用するべきだ。
役員になると、自分の立ち居振る舞いは自分の成果だけではないところに、重大な影響を与えることを強く自覚しなければならない。
20代で初めてCFOになった私には、そんな当たり前のことに気がつくまでに、手痛い洗礼が必要だった。
なおその後、会社の身売りを完了し、自分の役割を終えた私は会社を去る数日前からお世話になった社内の、キーマンを中心とした社員一人ひとりにメールを送り6年間の謝辞を述べたが、デートをした女性2人からだけ、返事がこなかった。
どのような感情でそういう事になったのかわからないが、少なくともこれ以上コミュニケーションを取りたくないか、コミュニケーションを取る必要はないという意思表示だろう。
女性はやはり怖い。
私は二度と、社内の女性と2人きりでデートには絶対に行かないと固く心に誓ったが、もし今後、中条あやみちゃん似の女性が部下になり、デートに誘われたら、断る自信があるほど私は人間ができていないので同じ過ちを繰り返すかもしれない。
一番怖いのは女性ではなく、自分の頭の悪さかもしれない。