カウンセラーのみが知る、部下から信頼される「聴き方」|基礎編:ヒアリングの王道

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「この人のこと信用したいな」と思ってもらうための3つの聴き方

今回は「聴く」というスキルの基本を解説していきます。

人の話を聞く時の基本は、

①「オープンクエスチョン」 ②「オウム返し」 ③「(ものすごい)共感」

この3つです。

この3つを抑えるだけで、だいたいの人からは信頼されるような聴き方ができるようになります。
これは大げさな表現ではなく、本当にこの3つだけで良いのです。

裏を返せば、多くの人はこの3つをやっていない、ということなのです。一つずつ解説していきましょう。

1. オープンクエスチョン

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「オープンクエスチョン」とは相手によって質問の回答内容に自由度の出る質問のことを言います。主に「what(何を)」「how(どうやって)」「why(なぜ)」を使って質問をします。

逆に回答が「Yes or No」か一言でしか答えられない質問のことを「クローズドクエスチョン」と言います。

一般的にはオープンクエスチョンを続ければ話はどんどん展開されていき、クローズドクエスチョンを続ければ話はどんどん収束していきます。意識をしていないだけで、日常会話の中にもオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンは、混ざりながら使われています。

例えば、あるプロジェクトのリーダーを任されていた部下が、そのことについて上司に相談しに来た、というシーンを想定してみましょう。相談に乗る上司がどちらの質問をするかで、部下にどんな変化があるのかシュミレーションしてみましょう。

<クローズドクエスチョンの場合>

部下:「部長、ご相談があるのですが。」

上司:「なんだ、今度のプロジェクトの件か?うまくイメージが持てないのか?」

部下:「ええと、はい、そうですね。イメージが持ててないかもしれません。」

上司:「イメージが持てないときは、メンバーととにかく会話をすることが重要だぞ。」

部下:「…はい。」

上司:「きちんとコミュニケーションはとれているのか?」

部下:「…いえ、それがあんまり。」

上司:「だとしたら、コミュニケーションをもっととった方がいいんじゃないのか?」

部下:「そう…なんですかね…」

上司:「お前はどっちだと思うんだ?」

部下:「自分でもよくわかりません…」

クローズドクエスチョンの聞き手側の「きっとこうだろう」という予測や思い込みが反映されやすい質問です。これを続けると、部下は本来話したいことが何だったのかよくわからなくなり、「自分の頭の中で整理できるまで上司に相談するのはやめよう」と思うようになり、問題を1人で抱え込むようになりがちです。

ではオープンクエスチョンにするとどうなるでしょう?

<オープンクエスチョンの場合>

部下:「部長、ご相談があるのですが」

上司:「どうした?何が(WHAT)あったんだ?」

部下:「今走ってるプロジェクトの件なんですが、進捗が思うように進んでいなくて…」

上司:「そうか。何が(WHAT)原因なんだ?」

部下:「それぞれの仕事のスピードの遅さでしょうか。」

上司:「何の(WHAT)仕事がどのくらい(HOW)遅れているんだ?」

部下:「それぞれに課したタスクの期限を、みんな守ってくれないんです。」

上司:「そうなのか。それは何が(WHAT)原因だと思う?」

部下:「原因ですか…うーん、もしかしたら、信頼関係がチームメンバーと作れていないのかもしれません」

上司:「どうして(WHY)そう思うんだ?」

部下:「実はこないだこんなことがありまして…」

オープンクエスチョンをすることによって、問題がどこにあるかの本質を自分の頭で考え、自分で答えを導き出そうとしていきます。そして丁寧に事実を把握してくれようとしている上司に安心感を覚えるというわけです。

文章で見ると「なんだそんなことか」と思うかもしれませんが、上司が経験豊富で仕事ができる人であるほど、「これが原因なんじゃないか」と予想してしまって、先回りして問題を解決してあげようとしてしまいがちになります。オープンクエスチョンの目的は「相手の意見を、相手に言わせる」ことによって、より自分ごとと捉え、内省を深めることにあるのです。

2. オウム返し

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次にオウム返しです。これは「相手の言ったことをただそのまま言い返して確認する」という手法です。これによって相手は「自分の話を聞いてくれている」と感じることができます。大事なことは「相手の言ったことをそのまま」繰り返すことであり、「要約して確認する」ことではありません。

私たちは人の話を要約して理解することに慣れてしまっているために、「つまりこういうことね?」とまとめようとしまいがちです。ですがこれでは相手の信頼を勝ち取ることはできません。

部下:「いつまでにできるかを確認した期限を、みんな守ってくれないんです。」

上司:「そうか。いつまでにできるかを確認した期限を、みんな守ってくれないんだな。」

部下:「そうなんですよ!ひどいと思いませんか!?」

となり、話し手の感情がそこに乗っかって出てくるのが理想です。これを、要約してしまうと

部下:「いつまでにできるかを確認した期限を、みんな守ってくれないんです。」

上司:「期限を守らないっていうのは困るよな。」

部下:「はい。それで仕事が思うように進みません。」

と表面的な会話になって終わってしまうのです。この部下の場合、「約束の期限を守らないメンバーに腹が立っている」という感情を誰かに理解してもらいたいという欲求が隠れています。事実の理解も大事なのですが、感情の理解をすることができると、話し手の信頼をぐっと手繰り寄せることができるのです。

会話において「キャッチボール」という比喩をよく使いますが、オウム返しをされると、自分の投げたボールが相手のグローブにきっちり収まった感じがして、自分のメッセージを受け取ってもらえた、という気持ちになるのです。それによって安心感が生まれ、この人にならもっと自分の話をしてみようと思うようになるのです。

3. (ものすごい)共感

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部下が「期限を守ってくれないメンバー」に対して「ひどいと思いませんか!?」と思っているとしたら、そのまま「どうしてそう思うんだ?」と話しを進める前に、「確かにそうだな。リーダーの立場からするとひどい話だな」とクッションのように共感を挟んでみてください。

共感されると「あなたの価値観を受け入れていますよ」という姿勢が相手にダイレクトに伝わります。女子高生の「それわかる~!」の感覚ですね(笑)

たとえ、あなたが上司として「それはお前のリーダーシップに問題があるからだろう」と問題の本質を見抜いたとしても、まずは一回「わかるぞ」と言ってあげてほしいのです。

相談している部下からすると、「メンバーがついてこないのはお前にリーダーシップがないからだぞ」と指摘する上司の言葉ではなく、「俺もその経験をしたことがあるからお前の気持ちはよくわかるぞ。」と理解してくれる上司のアドバイスを受け入れたいと思います。

必要なのは「聴く覚悟」なのです。

共感は、わかりやすく表現しないと伝わりません。激しく、首を縦に振って、表情豊かに「わかる、わかるぞ!」という気持ちを大げさなくらい表現するぐらいがちょうどいいぐらいに思っていた方が、相手からの信頼をより得やすくなりますよ。

まとめ

相手の話を聴く際のポイントは以下の3つです。

  • オープンクエスチョンで相手の話したい内容を引き出す
  • 話された内容にオウム返しをすることで、「話を聞いてもらえている」という安心感を生む
  • 話し手の感情に激しく共感することで、信用を勝ち取る

復習になりますが、これらの3つの基礎が機能するのは、聴く側の「あなたを理解したい」という態度を話し手が感じている時のみです。当然ですが上辺だけオープンクエスチョン、馬鹿の一つ覚えのようなオウム返し、心のこもっていない共感は逆効果です。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

川口 美樹

川口 美樹(かわぐち よしき) 元俳優。 東日本大震災をきっかけに、浅野忠信さんや、田中真弓さんなどとの関わりを経て、芸能界のあり方に疑問を持つ。 海外の政治家やCEOが必ず学んでいる、パブリック・スピーキングの技術を日本でいち早く取り入れ、俳優経験を活かしたプレゼンテーションやスピーチのコンサルティングを行う。