常に最新の技術をキャッチアップして事業に活かしていきたい – ポート株式会社 取締役CTO浦田 祐輝氏

ポート株式会社 取締役CTO浦田 祐輝氏
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■略歴
福岡県生まれ。9歳からプログラミングを始めて、その面白さに魅了され大学在学中に起業。その後いくつかの会社を経てソーシャルゲーム制作を手がける上場会社、クルーズ(株)に技術統括部長として就任、Unityを使った開発を推し進める。2014年にポート(株)に移り、webシステム本部 部長・取締役CTOに就任、現在に至る。
学生起業からweb開発部部長・CTOまで

■まずは浦田さんのこれまでの歩みを聞かせていただきたいと思います。

浦田氏:小学生の頃から独学でプログラミングを行っていました。小さい頃は漠然とそのままプログラミングを指導する、技術教師のような仕事に就きたいと思っていました。でも大学は実は文系学部でプログラミングの授業が多いわけではなかったです。それでもプログラミングは好きなので、大学在学中も暇を見つけては、プログラミングの勉強ばかりしていました。

■大学に在学中に起業されたと聞いていますが、なぜそのような事を考えたのでしょうか。またクルーズさんへのご入社経緯などもうかがっていいでしょうか。

浦田氏:はい、学生の頃から起業しました。起業する事に目的があったのでしゃなく、プログラミングを仕事にしたいと考えてはじめました。その後会社を離れフリーランスのエンジニアになろうと考えていたところ、前の勤め先であるクルーズ(株)の子会社であるソーシャルゲームアカデミーの講師募集がありそこに応募しました。

■それで幼い頃からの夢である講師になられたのですね。

浦田氏:そうですね、夢と言うと大げさですが、講師をする事はできました。また講師を務めながら親会社であるクルーズ(株)に入社しました。当時は全体を振り返るとWebサービスの開発というよりは、スマートフォンのアプリケーションを開発する仕事が多かったです。言語は当時注目され始めていたゲームエンジンの「Unity」でした。マネジメントという立場でしたから、Unityを社内に浸透させる役割も担っていました。

■その後現在のポート(株)に移られるわけですが、こちらも経緯をお聞かせください。

浦田氏:当社に入社したのは2014年の10月で、創業から4期目のタイミングでした。私が入社する以前は新卒採用のコンサルティングが事業柱で、業務のメインは営業でした。けれども、代表の春日がこれからは技術力を高めていきたいとの想いがあり、私がCTOとして誘われました。

■入社直後はどのような業務に携われていたのですか?

浦田氏:現在も提供を続けている「キャリアパーク」「Tabimo(たびも)」といったWebメディアの運用を任されました。キャリアパークは就職、転職、ビジネススキル・マナー、資格、留学など、キャリアに関するさまざまな情報やノウハウを発信しています。Tabimoはメディア名にもなっているように、旅をもっと手軽に楽しんでもらいたいとの想いから、国内・外の旅行やちょっとしたお出かけに関する情報を発信しています。たとえば「2016シルバーウィークに行きたい全国の人気スポット20選」といった記事などです。

選定写真PCと

遠隔医療サービス「ポートメディカル」

■最近は「ポートメディカル」というサービスがとても注目されていると思うのですが、こちらはどういったサービスでしょうか。

浦田氏:病気を患っている方、特に慢性疾患などで長きにわたり通院が必要な方に、医療機関に行かなくても、診察や処方が受けられるサービスです。高血圧治療が必要な患者さんを例に挙げると、週に何度かご自宅で、ご自身で血圧を測定してもらいます。そのデータをスマートフォンなどを介してサーバーなどに送信、医師はデータをもとに治療方針や処方薬を決定するという内容です。テレビ電話やチャット・メールといったアプリケーションを活用することで、より実際の診察に近づけていきます。

■インターネットを利用した遠隔診療サービスですね。

浦田氏:そうですね。同サービスは既に臨床試験がスタートしています。東京女子医科大学さんと共同し、医療受診の利便性向上、さらには新しい医療分野の構築を目指しています。なおこのサービスは日本ではまだ取り組みが少ないので、テレビ・新聞など多数のメディアで取り上げていただきました。

■医療分野への進出はハードルが高いと思うのですが、そこはやはり御社の技術力の高さが礎になっていますか?

浦田氏:うですね、技術力だけで進出したわけではないですが、一因だと思っています。でも実はPORTは最初から技術力があったわけではありません。今でこそこういった取材もしていただく事が多いですが、私が入社したときのエンジニアはわずか2名でした。そこから少しずつエンジニアを増やしていき、現在は30名前後になりました。現在もエンジニアが増え続けている状況ですので、これからも技術力はアップしていくと思っています。

選定写真語り

未経験者でも一人前のエンジニアに育つ環境が理想

■つまり浦田さんの手腕が大きかったわけですね。

浦田氏:いえ、私はマネジメント能力が高いとは思っていません。ただ、エンジニアと接する際に、意識していることはあります。それは、一人ひとりのエンジニアによって、成長の仕方はそれぞれ違うということです。ですから、エンジニアと話す時間を多く持つよう心がけています。また技術的な指導と並行して成長するにはどのような思考が必要なのかといったあたりを伝えるようにしています。もちろん、個々のエンジニアが成長しやすい環境づくりにも重きを置いています。当社で学べばプログラミング未経験者であっても一人前のエンジニアに成長できる、そのような環境をつくるのが理想です。

■お話をお聞きしていると、御社で働くエンジニアはかなり自由な環境のようです。

浦田氏:そうですね、自由だと思います。ただ自由という権利は与えるから、そのかわりに義務はきちんと果たしてください、というスタンスです。「権利には義務が伴う」という考えです。

■他の部署や別の職種の方との連携はどうですか。

浦田氏:当社の組織構成は、キャリアパーク部という部署があるわけではありません。営業部、マーケティング部、開発部があり、それぞれの部署が裁量権を持っています。そのため部署間のコミュニケーションがとても重要です。やり取りはgoogleHangoutsのチャットがメインでChatWork、HipChat、など色々なチャットツールを使ってきましたが、現在はSlackに落ち着きつつあります。
■メールは使わないのですか。

浦田氏:社外の方とは、メールやFacebookなどを使ったやり取りをします。ただ社内のメンバー、特に開発者同士でメールを使うことはあまり多くないです。

■それでは、現在の開発状況についてお聞かせください。

浦田氏:およそ12個のプロダクトが動いています。携わっているメンバーは32名、けれども内5名はデザイナーなので、実質27名のエンジニアで対応している状況です。さらに言うとフロントエンドエンジニアは4名のみ。1人のエンジニアが1つのメディアをまるまる担当しているような状況です。

■そうなると、エンジニアの負担はかなりのものになりますよね。

浦田氏:少ない人数で行っていますから、効率化を特に意識しています。たとえば、個人的にも好きなDockerを使ってサーバーを構築していたりと、自動化ツールを導入しています。今後はOSや開発言語の違いがあっても、なるべく互換性を持つ開発ができるような環境にしていこうと、より一層の効率化を考え、色々と整備しているところです。

■それだけ忙しいと勤務時間が気になりますが、いかがですか。

浦田氏:徹夜していたり、夜22:00以降に頻繁に残っているイメージはないですね。一定の効率化は実現できていると思います。実際、ほとんどのエンジニアは1日の労働時間が9時間ほどで、夜の8時ごろには退社しています。当社では裁量労働制を導入していることもあり、夜遅くまで働くことを薦めていません。逆に他のエンジニアの倍働き、4.5時間労働でその日の業務を終了してもらった方が、効率的だという考えです。ただ先ほども話しましたが、このあたりの働き方も、エンジニア一人ひとりの考えに任せています。

選定写真笑顔

プログラミングが好きでたまらない

■浦田さんご自身の勤務時間や働き方はいかがでしょう。

浦田氏:上の立場の者が残っていると、一般社員は帰りづらいですよね。ですから私も早く帰るよう意識しています。また退社が分かるよう、他のエンジニアから見える位置に意識的に座っています。ただ私の場合はプログラミングが趣味でもあるので、家に帰ってからもパソコンの前にいることが多いです。

■ご自宅ではどのようなことを行っているのですか

浦田氏:次の日の業務にすぐに活かせるような内容が多いです。これは私の考えですが、エンジニアが成長するのは帰宅してから、あるいは休日の空いた時間にいかに勉強できるかだと考えています。できれば他のエンジニアにも、ぜひ実践してもらいたいと思います。以前Googleさんが実施していた、業務時間の20%はそれぞれのエンジニアが自由研究を行う時間に充てる、20%ルールのような制度も導入できれば、という考えもあります。
■つまり浦田さんは、現在も現場でプログラミングをされているわけですね。

浦田氏:時期によってボリュームの違いはありますが、現在でもプログラミングをしています。たとえば先ほど紹介したポートメディカルのアプリケーションは、iPhone・Android用どちらも、私が1人で制作しました。
■マネジメントをしながら現役エンジニアでもあると。両業務を同時に行うのは、かなりハードではありませんか。

浦田氏:かなり大変です(笑)なので私が現場のプロジェクトマネジメントのような業務は、あまりしないようにしています。そのような人物がいなくても、プロジェクトが問題なく進むチームづくりが理想だと考えているからです。ですから会議も極力少なくしています。週に一度、1週間の振り返りと翌週に行う業務内容の確認だけです。時間にして1,2時間ほど。それぞれのプロダクトのリーダークラスでの定例会はありますが、全員が集まってのミーティングはそれだけです。

■エンジニアには本業である、プログラミングに集中できる環境というわけですね。

浦田氏:会議そのものが無駄だとは思いません。けれども、他のメンバーがキャッチアップのために行うようなミーティングは、なるべく避けたいと考えています。チャットで十分に代用できますから。チャットであれば、エンジニアはプログラムの息抜きのときに、応対することができます。実際、エンジニアの多くは自分に直接関係のないミーティングだと、その内容をほとんど聞いていません。
■ところで、浦田さんはどのような方がCTOに向いているとお考えですか。

浦田氏:それは非常に難しい質問ですね。自分自身がCTOとして正解かどうか常に自問自答しているくらいなので。ただ1つ言えることは、私がCTOを続けられている理由は、メンバーへの信頼やマネジメントだけでなく、キャッチアップも含め技術が好きだからだと思います。好きだから家に帰ってもプログラミングしますし、休日を返上してプログラミングすることも、まったく苦になりません。そしてそのような学習で得た技術を、会社に還元できる方がCTOに向いているのではないでしょうか。これは他のCXOとは違うポイントだとも思います。

■CTOになるためには、常に最新技術や動向をキャッチアップする姿勢が大切というわけですね。

浦田氏:個人的な意見ですが、マネジメントだけのCTOでは、本当に上質なサービスが提供できるかどうか、私は疑問を感じます。やはり自分自身が新しい技術に触れ、その中から使えそうだと思った技術を自分を通じて、会社のエンジニアに導入する。このような姿勢が必要ではないでしょうか。もちろん、従来の技術でしかできないサービスもあります。けれども1人の技術者として、失敗も重ねながら、常に新しい技術をキャッチアップするという姿勢が必要だと思います。私の最終的な目標は、世界で通用するエンジニアになることです。さらに言えば、世界に通じるエンジニア集団をつくることです。目標を達成するためにも、エンジニアとしてもCTOとしても、常にキャッチアップする姿勢は必要な要素だと考えています。

■それでは最後に、CTOを目指す方にメッセージをいただけますか。

浦田氏:先ほども少し触れましたが、CTOとしての経験が長くなるにつれ、悩みが色々と生じてきました。たとえば組織の規模が小さい頃には、魅力的なプロダクトを制作することに神経を使っていればよかった。しかし、組織が大きくなるにつれ、CTOはプロダクトの制作現場からは遠ざかっていくものです。ただCTOにとって技術は絶対に必要です。そのあたりの矛盾と言いますか、自身のなかでの葛藤を経て、それでもなお技術が好きで、深く掘り下げていける方であれば、きっとCTOになれると思います。

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