「ラグビーに向けた情熱を仕事に向ける」 株式会社みんなのウェディング 取締役 新井 普之

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Q:ご経歴を伺わせてください

 私は高校からラグビーを始めて、大学4年間も早稲田のラグビー部でラグビーをしていました。部活中心の学生時代でしたが、金融関係のゼミに入っていたこともあり、大学卒業後は三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行しました。小学校1年~4年まで父親の仕事の関係でシンガポールに住んでいました。発展していくアジアの姿を見ていた事と金融関係のゼミで学んだ事、ゼミの先輩からの影響等もありプロジェクトファイナンスをやっていきたいと考えていました。銀行に入行して窓口業務での研修の後、融資課に配属されました。中小企業に対する融資や回収をやっていました。銀行の寮に住んでいた事もあり、先輩の話や本を読んだりしていく中でいろんな仕事がある事に気づきました。その時に特に興味を持ったのがM&Aでしたね。もともと好奇心旺盛だったこともありますが、就職活動の時に考えていたことからはかなりぶれ始めてました笑その後外資系投資銀行に転職してM&A業務に携わっていました。

それはそれで楽しかったのですが、グロービス経営大学大学院に通っていた事も影響して、経営に興味を持ち、ベンチャーで経営企画やIPO実務の責任者として働くようになりました。実際には業務以外の事もなんでもやってましたね。なにもない中で会社を作っていくのはとても刺激的でした。

 友人からの紹介がきっかけでみんなのウェディングの経営陣と知り合って1か月後の2012年11月に社長の飯尾から「入社してくれないか」と話があり、入社する事になりました。IPOが私のミッションだったのでこれまでの経験が活かせると思いましたね。2013年6月に取締役に就任し、無事2014年3月25日にマザーズに上場する事ができました。

 

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Q:入社後1年半でIPOプロジェクトを完遂するって大変じゃなかったですか?

 んーほんとに大変な事がなかったんですよ、ほとんどのことが想定内でしたし笑高校・大学時代のラグビーも全然そんな事なくて。早稲田の体育会ラグビー部だったので練習も相当していました、当時を今振り返るとぞっとしますが、やっている時は全くツラくはなかったですしね。周りからは「大変だったんじゃない?」ってよく言われますが、全然そんな事はないんですよ(笑)楽しかったんですよね。単純に好きだったし。仕事も同じでみんなと同じ目標に向かっているところはやりがいもありますしね。特に今回のIPOはゴールが明確でそこにみんなで向かっていくのはとても楽しかったです。

 IPOプロジェクトが1年半で達成できたのは役員たちの理解度が高かった点、お互いを信頼できていた点も大きかったと思いますね。

 まず役員の理解度なんですが、これはとても重要で、上場に際しては内部統制や経営管理を整備したり制約が増えてくるじゃないですか。ややもすると経営スピードを落とす事にもなります。一般的にこれまで制約のない中で経営をしてきたスピードで仕事ができないという事はストレスにもなりますし、理解されない部分もあると思います。その点、当社の経営陣はディー・エヌ・エーという上場企業で働いていた経験があるので内部統制や経営管理に関する理解は得やすかったですね。

 あと他の経営陣との経営に対する言語が一緒だった事は重要ですね。日々の会議やコミュニケーションで使う言葉が一緒だったので意思疎通が違和感なくでき、信頼をする事ができたし、信頼を得られたと思っています。

 入社した当時、IPOに向けた整備はほとんど進んでいなかったので、まず現状把握と論点となるポイントの洗い出しを数日間で行ってIPOまでのイメージを持ちました。証券会社・監査法人は決まっていましたがIPOはほぼゼロからのスタートで管理部門もほぼゼロから作りました。IPOはスケジュールが決まっていてそのスケジュールに沿って一定レベル以上の成果物を出さないといけないじゃないですか。そこをずらすことはできないので、巻き取るところは巻き取ってやっていたのでかなり時間的には働いていたと思います。住んでいる場所もすぐ近くなので(笑)

 上場時のPERは予想をしていたものよりは高い印象でした。2013年からITベンチャーのPERが20~30倍、高いところで40倍だったのでそのあたりかなとは思っていました。(インタビュー当時5月14日PER44倍)市況もよくなっていたので高く評価いただけたのかなと思ってます。

その点で言えば投資家やアナリストへの見せ方は工夫をしました。当社の事業には大きく2つの収益の源泉があります。一つ目はストックであるクライアントへの機能提供に対していただく月額掲載料、二つ目はフローである成果課金。毎月固定的に入ってくるストックの部分が崩れない基盤としてあり、さらにその上にプラスアルファとしてフローの収益を獲得する事ができるというストーリーを組み立てました。また、論理を作るのと同じように話し手も重要です。社長の飯尾の方が事業に対する想いや情熱が人一倍あり、その想いや情熱に理論を加えるのがCFOとしての役割だったと思っています。

 でも、1年半で上場プロジェクトを完遂したことは結構話題になると思っていたんですが、その話はあまりしないのでちょっと寂しいですね笑

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Q:クレバーと混沌。何もないところから作っていくとは?

 IPOの準備をする中で本当にゼロの状態から作ってきましたけど、とても楽しかったですね。新卒で入社した銀行はしっかりした新卒研修もあるし、業務マニュアルも規定も備品もあるし、なんでもありますよね。ベンチャーは本当に何も無いじゃないですか。ないないづくしの中で形作っていくことで胆力がついてきたと思います。IPOをミッションにした会社ではIPO、管理部門の仕事以外にも営業管理や営業同行なども一緒にやっていました。振り返ってみるとなにもない環境で混沌とした中で働く事が好きになっていったんだと思います。

 経営管理に関しては以前勤めていた上場企業での経験がベースとなって活きていますね。社長は灘高校、東大、ボストンコンサルティング、コンサルティングファーム創業に関わっていて専務は公認会計士、上司もみなむちゃくちゃ頭の回転が早かったです。その中で特に学んだ事は仕事に手を抜くなという事です。経営陣は頭の回転が早くキャッチアップも早いのに加えて無尽蔵に働くんですよ(笑)働く時間が長いというのは良い事ではないですが、結果が出ないのであればやらなきゃいけないわけですよね。混沌とした中で課題を解決していくために時間は関係なく働いていました。まぁ楽しいからやってしまうんですけど(笑)今となっては落ち着いてくると物足りなくなってきてしまうんですよ。あれです、回遊魚って泳いでないと死ぬじゃないですか、私もそんな感じでマグロのように泳ぎ続ける、常に追い求め続けないと死んじゃうんだと思います笑

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Q:仕事の範囲はまったくないんですか?

 そうですね。ほとんどないですね。とにかく経営陣を目指すのであれば自分の仕事に範囲を決めず、そして仕事に手を抜くな、仕事に対して誠実であれという事ですね。

 CFOのポジションになると当然ファイナンスも重要ですが、法務・人事・総務・はたまた事業部の話もしたりもするんですよ。経理と話をしていたかと思えば法務から呼び止められたりする。日頃行っている業務は目まぐるしく変わるので範囲を決めないというより決めることができません。CFOを目指すのであれば範囲を決めずにまずやってみる事が重要だと思っています。IPOの準備をしていた以前勤めていたベンチャーでは先ほどもお話しましたが営業管理から営業同行までやっていました。結果的に範囲を決めないで業務にあたっているとここに問題があるんじゃないか、ここを良くしたらどうだろう?ユーザビリティを上げるにはこうしたらいいんじゃないか、など事業部門の事も理解できるようになり、バリューチェーンの全体を考えられるようになるのでとてもよかったですね。

 CFOには狭義のCFOと広義のCFOがあると思っていて、ファイナンスだけをやる場合は狭義で、広義はファイナンス以外にも人事・内部統制・法務・事業部のミドルオフィスもあります。仮にファイナンスの業務だけで事業の事がわからないとなれば、どういう方々がサービスを利用してくれてどう利益が出るかわからなく、それではCFOは務まらないと思うんですよね。

 あとは人から聞いた事も鵜呑みにせずにちゃんと調べる事。専門家に聞くのも大切ですが、後で会計監査六法で詳細まで確認するとか。そういう事が積み重なっていくとブレない判断軸を持つことができ、きちんとやっている人とやっていない人とでは歴然とした差がついていくと思います。

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