【EX入社後対談#1】“等身大の会社” TIGALAの挑戦。「正田代表 × 新CFO湯瀬氏」~M&Aミドルマーケットへの想い~

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このたび、エグゼクティブキャリア総研では新たな取り組みとして、運営母体である株式会社BNGパートナーズ経由で決定した企業と候補者の入社事例をご紹介します。
対談を通して幹部採用を行った企業の成功要因、そして新たな挑戦を選んだエグゼクティブの意思決定の背景に迫ります。

 
 

■PROFILE
TIGALA株式会社 代表取締役社長
正田 圭(まさだ けい)
1986年奈良県生まれ。15歳で起業。インターネット事業を売却後、未公開企業同士のM&Aサービスを展開。事業再生の計画策定や金融機関との交渉、企業価値評価業務に従事。現在は、自身が代表を務めるTIGALAにてストラクチャードファイナンスや企業グループ内の再編サービスを提供。2016年3月「15才で起業したぼくが社長になって学んだこと」、2016年12月「ビジネスの世界で戦うのならファイナンスから始めなさい。」、2017年10月に「ファイナンスこそが最強の意思決定術である」を出版。2018年1月には「会社を売って旅に出よう」を出版予定。
TIGALA株式会社 取締役副社長 兼 CFO
湯瀬 幾磨(ゆせ いくま)
1981年生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科を2005年に卒業し、同年11月に公認会計士2次試験に合格。株式会社エスネットワークに入社。上場企業から中小企業まで複数社の経理を経験後、リノべる社入社。2014年3月よりリノベる株式会社CFO就任。2017年10月よりTIGALA株式会社取締役副社長兼CFOに就任。

公認会計士からベンチャー企業のCFOへ


― 湯瀬さんは元々リノベる社にてCFOをされていましたが、今回、TIGALAに入社された経緯について教えてください。

湯瀬:2017年にリノベるが三井物産から出資を受けたタイミングで、新しいメンバーに席を譲ることになりました。

― もともとリノベる社への入社はどのように決断されたのですか?

湯瀬:私の経歴は、公認会計士からスタートしています。そのため、いわゆる事業会社でCFOをやってみたいという気持ちは元々ありました。最初に入った会社であるエスネットワークス社の創業者メンバーから影響を受けたということもあるかもしれません。

リノベるに入社したきっかけは、知り合いから紹介され、そのまま入社しています。当時のリノべるにはまだ管理部門がなく、そういったフェーズで参画し、挑戦できたことには大きな意義がありました。まさにゼロからのスタートです。

― CFOとして活躍されているなかで、今後のキャリアについても意識されることがあったのでしょうか?

湯瀬:リノベるのCFOとして活動してきた3年間においては、とくに、投資家の“意思決定に対する強さ”を感じました。CFOは会社をバックエンド側からコントロールしていますが、同時に投資家とのパワーバランスも考慮する必要があります。
とくにベンチャー企業の投資家には発言力があります。だからこそ、CFOとして経営にタッチするだけでなく、投資家としての活動もできるような、いわゆる「二足のわらじ」を履けるような仕事をしたいと考えるようになりました。

横並びの目線で語り合えるCFOという存在

― CFO採用をするにあたり、正田社長としてはどのような人材を求めていたのでしょうか?

正田:正直なところ、CFO職で優秀な方が欲しいとは考えていませんでした。ファイナンスや会計に関しては、私がわかる部分も多いので、当初は言われたことをテキパキとやってもらえればいいという感じでした。必要なことは私が教えることもできますし。

ただ、湯瀬さんの履歴書を見たときに、その経歴に驚きました。エスネットワークスという有名企業で9年も経験を積み、その後リノベる社でCFOをされている。調達した額も大きかった。勿論、今後のことに関してはお会いしてから考えようと思っていましたが、間違いなく一度お会いしてみる価値があるなと判断しました。

そして最終的な意思決定をした要因は、当社のCFO業務を担っていただける、ということも勿論あったのですが、現状のような、いわば私のワンマン体制の当社において、横並びの目線で語れる人がいた方が良いのでは、と経営体制そのものについて考え直したことも大きかったと思います。

― CFOのみではなく、COOとしての役割までこなせる方だと認識したということですね。
まさに一人のキーパーソンの参画が経営そのものまでを良い方向へと変えていけるという。

正田:最初にお会いしたときはキャリアに目がいきましたが、実際にお話していると、現場で活躍されてきたこともあり、事業運営の視点も強くもっていることが分かりました。良い意味で“CFOっぽくない”と言いますか。

ポジションとしてはCFOでもCOOでもいいだろうという発想もありましたし、湯瀬さんであれば、経営陣の一人として、どこの立場でも活躍していただけるような頼もしさを感じています。

またこちらは余談ですが、エスネットワークスさんに私の知り合いが何人かいて、彼らから湯瀬さんの話を聞いてみても、総じてとても評判が良く、退職してから3年経過しているのに、湯瀬さんのことを知らない人はいなかったということも意思決定の後押しとなりました。

経験があるからこそ正しいリスクがとれる

― 湯瀬さんからの、正田さんに対する印象についてはいかがですか?

湯瀬:ご著書を拝読させていただいた限りでは、波乱万丈な人生を歩まれていることもあり、尖ったお考えや性格をされている方なのかと思いました。ただ、実際にお会いしてみると、等身大で飾り気がなく、とても自然体なので意外に感じました。

― キャリアという視点から考えて、TIGALA社の魅力はどこにあると思いますか?

湯瀬:CFOとして、それ以前に一人の職業人として、仕事をする上で、やはり、出会いは大切です。もちろん事業には成功も失敗もありますし、難しい部分もたくさんありますが、それでも成功している正田さんに出会えたのも、ひとつの幸運な出会いだと考えています。

私自身、30人弱ほどの規模から数百名規模へと企業が成長してくのを見ていて、成長の危うさを感じることがありました。
これは意外に思われる方もいるかと思いますが、たとえば資金調達を実施した企業の中には、調達に成功しただけで舞い上がってしまい、一定期間大きく事業の推進スピードが落ち、それまでの状態に比べるといわば時間が止まってしまったかのような企業も少なくないと思います。

その点、正田さんの場合は、すでに複数回M&Aイグジットも経験されています。起業から事業を成長させ、バイアウトする、という一連の経験を経て、そこからさらに挑戦されているからこその強さがある。
そういった人と出会えるということはなかなかありません。

イメージとしては、USENの宇野さんに近いかもしれませんね。エスネットワークス社はUSENと近かったこともあり、宇野さんの話を聞くことはよくありましたが、そのバイタリティや諦めない姿勢には独自の力強さを感じます。

― 今後、湯瀬さんに期待していることは何でしょうか?

正田:現状、中期経営計画の練り直しを進めています。共に事業計画を練ることによって、CFOとしての新しい視点が入ってくることもあり、資金計画やその後の展開についても変わってくるのではないかと期待しています。

将来的にはIPOも視野に入れていますし、10カ年で1兆円企業までの道のりも描いています。もう少し短期的なことで言えば、ファンドの組成なども、計画を練り直した上で進めていますね。

― 湯瀬さんとしては、どのような活動をしたいと考えていますか?

湯瀬:正田さんは、「正しくリスクをとって行動できる人」だというイメージがあります。
すなわち、TIGALA自身もそういう会社になると思っています。
言うなれば等身大の会社です。その中で、一翼を担う人材になりたいですね。

市場規模は130兆円。M&Aのビジネスモデルを再構築したい

― 企業全体として、今後、どのような戦略によって事業を進めていきたいとお考えでしょうか?

正田:会社としては、M&Aのビジネスモデルを再構築することをミッションとして活動しています。いわゆるM&Aのミドルマーケットにおいて活躍できているプレイヤーが不在な中で、頭角を現していきたいと思います。

事実、仲介会社さんは小さな案件に流れています。一方、大手の投資銀行であれば数千億円レベルのレイヤーにいっている。そこで、空いているミドルマーケットを攻めていくつもりです。市場規模で言えば130兆円ほどでしょうか。

また、「AIによる金融業界の効率化」というのも大きなテーマとして事業に取り入れていきます。
堀江貴文さんが『多動力』という本で書いていますが、寿司職人というのはとても効率が悪いそうです。金融の世界も同じで、ディレクター職として活躍できるのは40歳ぐらいが一般的です。ほとんどの金融マンは長い下積み期間をそこでまで耐えて過ごさなくてはならない。

ただ、僕自身で言えば、高校生ぐらいからM&Aを経験している訳で、必ずしも40歳まで修業をしなければならないとは考えていません。その部分を、AIやビックデータでショートカットできれば、効率化は可能だと思います。

そもそもM&Aは会社の売買です。要するに八百屋で野菜を売るのとそう変わるものではありません。良い物はみんなが買いたいから高くなるし、あまり良くないものは値段を下げてなんとか買ってもらおうとする。それと同じです。

― 金融業界、およびM&Aマーケットという観点で、湯瀬さんはお考えのことはありますか?

湯瀬:私が社会に出たのは、ちょうど、ライブドアのフジテレビ買収問題が取り沙汰されていたときでした。あの事件での教訓は、良し悪しという単純な判断ではなく、社会全体としてM&Aについて議論するべきということだと思います。

たとえば上場している企業でも、いわゆる「コーポレート・ガバナンス」が徹底できているかどうかは未知数です。そのような部分も含めて、会社の発展および市場の発展、さらには社会の発展につながるべく、そもそもM&Aについて議論する機会の想像をしたいと考えています。

枠にとらわれることなく、柔軟な人材を

― 最後に、採用についてのお考えについても聞かせてください。

湯瀬:これまでに他社さんが目をつけていなかったマーケットを攻めるということもあり、採用については悩みどころです。金融の発想から会計に関する知見まで、幅広くもっている人であれば活躍できるかもしれません。

正田:職種としては会計士の人が近いかもしれませんね。ただ、どこの企業でどのような仕事をしていた、という枠をくくるのではなく、カジュアルな面談を通して、うちに合っているかどうかを見極めていくことが大事だと思います。

湯瀬:原体験から思うのは、以前仕事で私がアメリカに常駐していたとき、みんな若くて頭が良くて、各々好きなことをやって儲けていたということ。固定観念にとらわれず、無邪気に働いてくれる人が増えてくれればいいですね。

正田:資質で言えば、学習スピードが早い人でしょうか。自分で調べたり、人に聞いたりしてすぐに行動できる人が理想です。ことM&Aに関しては、常に知らないことが出てきます。だからこそ、学習スピードは重要です。

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ABOUTこの記事をかいた人

樋田 和正

樋田 和正(とよだ かずまさ) 長野県出身。大学卒業後、バーデンダーを経て、2014年BNGパートナーズに参画し、コンサルティング事業部にてマネージャーとしてIT系スタートアップを中心に多数のCxO採用に携わった後、2017年メディア戦略室長就任。執行役員 メディア戦略室長 / エグゼクティブキャリア総研編集長を経験。2018年同社退職。